1963年、深澤幸雄は、メキシコ政府に依頼され、メキシコシティで
銅版画の技法を教えました。そしてその合間にメキシコ各地を巡りました。
版画家は、メキシコの強烈な陽光に照らされたマヤ・アステカ文明などの
巨大遺跡に出会い、その桁違いの造形力に足元が揺らぐほどの衝撃を受けました。
ほの暗い内面世界や個人を吹き飛ばしてしまう「何か常識では計り知れない
凄まじいもの」に圧倒された版画家は「目が眩むような恍惚と酩酊」のなかで、
この根源的な感動を銅版画に表現しようと試みました。
三本の分厚い鋼板か粘土板が、強引にねじ曲げられて重なっているようです。
元に押し戻そうとする動態的な緊迫感と、三体がぴったりと接着している
安定感が、見事な均衡を保っています。また、題名から察せられるように
三体には、高温焼成によって堅く焼き締められた土特有の堅固な存在感が
みなぎっています。