ふわっと敷かれた紫の薄布が一際印象的です。作品は、室内楽のように、
薄布のやわらかな感触を基調音として、多彩な色と多様なかたちが、
それぞれに高く低く深深と調和して、軽やかにして厚みのある安定した
美を構成しています。
安藤信哉は、西洋アカデミズムによる確固としたデッサン力を基礎に、
画家と対象が主体・客体に分離される西洋的思考とは別の、互いが
ひとつの世界の構成要素として不可分かつ対等という、日本的な自他
一如の視点からこの絵を描いています。そのため、描かれたものはポット
や栗、手袋という個別の名称・役割から解放され、自在な表情を見せています。