「『わたしのいもうと』より」

 小学四年の妹が、転校した学校でいじめに遭い、心を病んで亡くなった
という手紙を受け取った著者松谷みよ子が、その話を静かに語った
絵本からの一枚です。この絵は
 とうとう だれひとり
 口をきいてくれなくなりました(略)
 やがて いもうとは
 学校へ いかなくなりました
 という文章に添えられています。小学校低学年向けに書かれた
やさしい文章が、味戸ケイコの絵のもつ豊かなイメージ喚起力に
よって、立体的な深い陰影を生み出しています。そのため、
「いもうと」の痛ましい心が、わがことのように迫り、読後、
深い感動と内省を読者にもたらします。
 1987年の刊行以来、この本は版を重ね、十万部を超えるロングセラー
となっています。この本によっていじめられる側の深い傷を知ることで、
いじめがなくなればいいのですが。