この絵は佐々木丸美の小説『罪・万華鏡』の表紙に使われました。
この絵には三つの異なる時間・空間が描かれています。一つ目は
少女の時空です。二つ目は少女の後景の銀河星雲と、そこからはるばる
飛来したように描かれている紙風船の物体の時空です。三つ目は
少女の足元の闇から背景の宇宙へと広がっている無限の時空です。
この三つの異なった時空がダイナミックに組み合わされて、
一つの画面が構成されていますが、三者はバラバラの存在として
描かれている訳ではありません。この三つの時空は、
少女の心の世界の表象として、深く結び付けられています。
絵の中心に位置するうつむく少女の隠れた瞳は、彼女の心の世界へ
向けられています。その眼差しは、足元の深い闇に吸い込まれ、
背景の宇宙を漂流し、銀河を通り抜け、紙風船のように少女の上を
通り過ぎ、そして遠ざかって行きます。
何ものにも届かない眼差しの航跡が、見る人の心に深い思いを刻みます。