この絵本『あのこがみえる』は、ボローニャ国際児童図書展で
グラフィック賞に推薦されました。この絵は、
「ゆうがたになると なぜ
かえらなくちゃ いけないんだろう」
という詩句に付けられたものです。
絵は黒鉛筆一色で描かれているため、この単色の暮れなずむ空に、
見る人それぞれが、思い思いの異なった色を感じます。多くの人は、
この少女に自分の思いを重ね、心にしみいる夕焼け空を見るでしょう。
その夕焼けの情景に、大人になってしまった人は、とうに過ぎ去った
子供時代の、なぜか切ない情感が不意にわきたってくるのを感じるでしょう。
味戸さんの絵は、その奥に息を呑むような深いドラマ性をそっと秘めています。