木版口絵について

木版口絵は、明治後期(1890年頃〜1912年)から大正初期にかけての約20年間小説や文芸雑誌「文芸倶楽部」の口絵として人気を呼びました。その多色摺木版画は、明治前半の西洋化の激しい波の反動として日本的なるものを求めた一般大衆に歓迎されました。また、 日清戦争に勝利し、続いて日露戦争にも勝利し近代国家に大きく踏み出した近代日本の国家 隆盛期と重なり、出版部数も飛躍的に伸びた時期でも有ります。

木版口絵は錦絵(多色摺木版)の技術を受け継ぐ一方、伝統的な表現技法に西洋の画法をうまく取り入れた作風に特徴があります。当時、口絵画家の職業地位は、洋画家日本画家に比べてかなり低かったため 、また、小説本や文芸雑誌のオマケ、付録という先入観が付いてまわったため 、木版口絵は最近に至るまで、美術界では忘れられた存在でした。、雑誌に挿入されていたため、浮世絵と違って海外に大量に流出することも有りませんでした。けれども、それが流通していた頃から約百年を経て、ようやく、その作品の持つ深い味わいが、再発見されるようになりました。
シカゴ在住の口絵研究者、山田奈々子氏の英文紹介により、近年米国において 美術品としての評価が高まり、愛好者が増えて来ました。
再評価が始まったばかりの木版口絵をご高覧賜りますよう、ご案内いたします。