駅馬 如

 

 

 

「……何だって!?」

 千秋は、思わず声を荒げた。受話器を握る手が、心なしか震えているが、彼はそのことにすら気づかなかった―――否、彼は別のことに気をとらえていたため、そんなことはどうでも良かったのだ。

「どう云うことだ!? 説明しろ!!」

 彼らしくもなく大声で問いながら、彼は激しく鳴り響く自分の胸に気づいていた。何か――それが何であるかなど分からないが――が、驚愕する彼の脳裡(のうり)に、激しい警鐘(けいしょう)を打ち鳴らしている。

『だから、さっきから言ってる通りよ! 直江が―――直江がいないのよ!!』

―――……っ!!」

 先程、一度聞いた事だというのに、まるでたった今初めて聞いたかの様な激しい驚愕が、再び彼を襲う。

 その内容に――電話の向こうで紡がれたその《事実》に――、千秋は声も出ない。

『それでね、千秋……っ』

 彼が今 握り閉めている受話器の向こうで、綾子が未(いま)だ何かを叫んでいたが、彼は―――千秋の耳は、それを捉えてはいなかった。

 そんなことよりも重要な事実が、彼の思考を捉えているのだ。

 ……何てことだ。

 直江が行方不明だと!? そんな筈がない。ある訳がない―――

 信じられない、と―――何を馬鹿なことを、と笑おうとした彼の脳裡に、不意に、5日前の情景が蘇(よみがえ)る。

 ―――彼が最後に直江に会ったのは、たかが5日前のことだ。あの時……上杉の夜叉衆として集まった彼らは、今後のことについて話し合っていた。

 あの日、始終、自身を苛(さいな)んでいた表現の仕様のない感情。彼自身にすら名前のつけ様のなかった《それ》の正体(なまえ)が、今ならはっきりと解かる。あれが―――あの思いが、一体何であったのか。

 あの日、理由の解らない焦燥――否、或いは《不安》だったのだろうか――が彼の思考を捕らえて離さず、その訳の解らない感情のまま問い掛けた千秋に、《彼》は―――直江は、僅かに訝(いぶか)しげに首を傾けながらも答えたのだ。

 大丈夫だ、と……何を心配しているのだ? と……。

 ――その時のことを思い出し、千秋は知らず、身震いする。5日前に感じた《思い》が――《不安》が――、《恐怖》という感情に姿を変えて彼を襲う。

「直江―――

 ”直江がいなくなってしまう”と―――”二度と逢えなくなってしまう”、と……あの日、自分は確かに感じていたのではなかったか。それなのに、何故、簡単に彼の手を離してしまったのだろう。

『何を心配しているのか知らんが、馬鹿な奴だな……』

 ふ、と―――不意に、直江の言葉が脳裡に浮かぶ。

 あの日、苛(いら)つき、訳もなく絡んでしまった千秋に対して、苦笑しながらそう言った時の直江の表情(かお)……。

 まるで、当たり前のように千秋の前にいて、当たり前のように苦笑(わら)う直江―――。

「……直江…直江―――直江……っ!!」

 あの時―――俺があの時、もっと強く彼を止めていたら……。

 例え、理解し難(がた)い千秋のあの《感情》に、直江が不可解を示したとしても――実際にそうであったのだが――、あの時、もっと強く彼を引き止めていたのなら、或いはこんなことにはならなかったかのしれない。

 直江が行方不明にならずに済んだのかもしれない……!!

 がんっ! と―――千秋は目の前の壁に拳(こぶし)を叩きつける。丁度5日前と同じ行動―――だが、5日前とは篭(こも)る力の強さが違っていた。そう薄くもない筈の壁が、振動で激しく悲鳴を上げる。

 がんがんっ! と、連続で絶え間なく打ち付けられるそれが、確かな痛みを伴い、確実に千秋に伝えているのだが、彼は―――千秋は、そうすることを止めようとはしない。

 ……否、そんなことはどうでも良かったのだ。

 まるで、全身の血液が一気に頭部に集中しているのではと思う程の激情。

 叩きつけられた拳(こぶし)から、真っ赤な血液が滴(したた)り、目の前の壁とそして彼の袖とを確実に汚し初めていたが、千秋にはそんなことはどうでも良かった。

 わなわなと震えが走る。

 不甲斐ない自分への後悔。そして―――

 ……その時ふと、実に何気なく彼の思考を掠めたもの―――それは、たった5日前に実際に見た、苦笑しながらも普段と変わることなくドアの向こうへと消えていく直江の姿。そして―――その直後、交差した一つの視線。

「……アイツ……っ!」

 あの時には明確には解りえなかった不可解な感情が―――衝動が、今度は明確な意思を持って蘇(よみがえ)ってくる。

 何故あの時、こちらを見た《あの男》のその視線に違和感を感じたのか、その理由が、今ならはっきりと解(わか)る。

 あれは、決して上司を見る瞳ではない。そう、あれは―――

 あれは―――!!

「……直江……」

 ―――許さない。

 直江失踪と言う事実の引き金となったであろう、あの男を。

 俺は許さない―――

 ……その時、静かに上げられた彼の表情と、そしてその《想い》を、誰一人として知る由もなかった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぱたん、と。僅かな音を立てて閉められる扉を、見るとはなしに眺めていた直江は、そっと自分に歩み寄ってくる男に視線を合わせる。

「何だ、浮かない顔をしているな。どうかしたのか、八海……?」

 自分に向けられた瞳が、常とはどこか異なり、何かが――勿論それが《何》であるかなど、直江には明確には解り得なかったのだが――含まれているように思えたのだ。

 そのため、彼は問うた―――どうかしたのか、と。

 だが、問われた方の八海は、常と変わらない笑顔を向ける。

「直江様の方こそ、お顔の色があまり優れないご様子。どうかなさったのですか?」

 常と同様、柔らかい表情で反対に問い返されて、直江は微(かす)かに瞳(め)を逸らす。

 こうして、直江の身体(からだ)のことを気遣う言葉を口にする時の八海の表情には、彼の主(あるじ)への、隠すことのない心配が―――気遣いが、過剰に含まれているように思えて、時折、直江を苦笑させる。

「……いや……特に、どこが悪いとかではないんだ。ただ―――

―――ただ?」

 珍しく言葉を濁す直江の様子に、おや、と、八海は不思議そうに問い返す。その直江らしくもない様子に、ただならぬものを感じ、彼は直江の表情(かお)を見つめる。

 一体、どうしたというのだろうか……?

「……眠れないんだ」

 静かに、そっとそう告げる直江の顔を、八海は言葉もなく見つける。彼は、彼自身の命よりも――否、他の何ものよりも大切な主(あるじ)の憂いの理由を、知りたいと―――そう思った。

「いや、違うな……《眠れない》のではない。《眠りたくない》のだ。夢を見るから―――

「夢、ですか……?」

「ああ……夢、だ……」

 そう、連夜の様に直江を苛(さいな)んでいるのは、夢。ただ、それがあまりにもリアルで―――そして同時に、あまりにも不可解なため、彼にはそれがただの夢だとは思えないのだ。

 真っ黒な―――ただの闇。だが直江はそこに一人でいる。誰もいないただの闇の様でいて、何ものとも解からない《もの》が、彼をそこに縛り付ける。

 まるで……《何か》に囚(とら)われているかのような―――

 ……ぽつり、と。直江は、ゆっくりと語りだす。自身の見る夢の話を、側で自身を気遣う八海に向けて。

 自分でも明確には理解できない、不可解な内容を、他人にどう説明すればうまく伝わるのかなど、直江には解らない。だからこそ、普段の彼らしからず、紡ぐ言葉がゆっくりとしたものになってしまう。

 ……今夜もまたあの夢にうなされるのではないか、という不安――本人は認めたくはないのだが、それは否定しようのない事実でもあった――に苛(さいな)まれつつ、いつもの自分らしからぬ不甲斐なさを歯痒く感じていた直江に、だが八海は、決して急(せ)かすことなく――そもそも彼が主(あるじ)に対してその様なことをしたことなど、これまでに一度としてないのではあるが――、言葉少なく直江の言葉を待っていた。それが―――直江には嬉しい。

 こんな彼だから―――こうして、何よりも直江を一番に考えて行動してくれる八海だからこそ、自分はこんなにも彼に頼ってしまうのかもしれない。

 普段であったならば、他人(ひと)に甘えるかの様な行為を自分に許しはしない直江も、こんな時だけは、それを自分に許してやっても良い様な気がしていた。

 それが何故なのかなど解らない。ただ、こうして何よりも自分を気遣ってくれる八海の瞳が―――優しげなこの瞳が、そう思わせるのだ……。

 ……自身の見る夢の内容を、完全ではないが話し終わった直江を、暫しの間、言葉もなく見つめていた八海が、自身を見返す直江に対し、静かに口を開いた。

「それでしたら、良いものがございます」

 何だ? と視線で問う主(あるじ)に、彼は静かに立ち上がると、足音もなく隣の部屋へと消える。

 数瞬後、部屋を後にした時と変わらず静かに戻ってきた八海の手には、ひとつの瓶があった。

「……?」

 それはなんだ? と、視線だけで問いかける直江に、彼はそっと笑みを向ける。

「……本来でしたら、このような物を直江様にお勧めするのは気が進まないですし、最善の策とも言い難いのですが……」

 僅かに苦笑を浮かべながらそう言うと、手の中のものを直江の目の前へと差し出す。

 それは―――小さな瓶。白いラベルが張ってはあるものの、印刷されているであろう文字は、直江のいる位置からは見ることはできない。

「直江様が少しでも長く、よくお休みになられることの手助けになれば宜しいのですが……」

―――それを、俺に……?」

 中身を確認するまでもない。恐らくは睡眠導入剤であろうそれを見遣り、そして問う。

「熟睡できない状況では、直江様のお身体(からだ)に負担がかかりましょう。これ以上その状況が続けば、お身体を壊してしまいます」

 これで少しでもお休みになれれば良いのですが、と繰り返す八海。

 ……八海としても、薬などというものを彼の大切な主(あるじ)に勧めるのは、彼の本意ではない。だがそれでも―――不眠という事実が直江の身体(からだ)を害しているのであれば、話はまた別であった。

 例え、薬に齎(もたら)されるという紛(まが)いものの睡眠であっても、そのことで直江が―――彼の大切な主(あるじ)が、不安などない、安らかな眠りの中で休むことができれば良い……。

 何よりも、それが彼の願い。

 誰よりも強い、彼の想い―――

「八海……」

 ……守られている―――訳もなく、そう感じる一瞬……。

 目の前にいる八海から―――彼を一心に気遣う八海から、違(たが)えようのない優しさと気遣いが流れ込んでくる。薬に頼るなど、本来の彼らしからぬ行為に至ってまで、彼は直江を守ろうというのだ。

 常にも感じられてはいたが、尚一層強く感じるその事実に、直江は微笑を浮かべる。

「お前は……」

 何故彼は、こうまでしてこんな自分に尽くしてくれるのだろうか。その理由など、彼には解かる由もなかったのだが、だがそれでも、彼は八海のその思いが嬉しかった。

 彼はそっと手を伸ばすと、八海から瓶を受け取る。蓋を開け、掌(てのひら)へと出されたそれは―――白い錠剤であった。どこにでもあるかの様な、何の変哲もない、白い錠剤。

 ふと、顔を上げた直江は、自身を見遣る八海の瞳と出会った。一心に向けられたそれには、直江に対する心配と杞憂―――そして優しさが、惜しげもなく含まれていた。

 自身に向けられる八海の心配を、少しでも安心させるよう、ふ、と笑みを浮かべると、直江は、差し出された水の入ったグラスを傾け、錠剤を一つ、口にした。その様子を、言葉もなく八海が見つめる。

「……悪いな……お前にここまでさせてしまって……」

 どこまでも自分を気遣う八海に対し、言い様のない思いが込み上げてくる。

 静かに瞳を閉じ、そっと労(ねぎら)う直江に、八海は、どんでもございません、と微笑すら浮かべる。

「先日も申し上げた筈です。こうして私が直江様を心配申し上げるのは、あくまでも私の意志でしていることであって、貴方が何ら気になさることはございません」

 だから気にするな、と―――そう言いたいのだろうか。先日、ここで―――同じこの直江の部屋で交わされた会話と同様のことを口にする八海に、喩(たと)え様のない思いが胸中を駆け巡る。

 そして、何かを口にしようとして―――直江は不意にあることに気づき、口を閉ざした。

 それは、時折感じていたこと。八海に対し、感じた《不安》にも似た思い―――。《それ》が一体何であるのかなど、直江には解からない。だが、事ある毎(ごと)に彼の胸中に生まれ来るそれは、確実な意思を以って、直江に語りかけてくるのだ……。

 直江は、開きかけた唇を閉じ、僅かな瞬間、瞳を伏せたが、やがて意を決したかのように目の前の八海へと向き直った。

 彼の真摯(しんし)な瞳が―――穏やかな瞳が、八海の心を射止める。

「八海……俺は、こうして色々とお前が俺の為にしてくれるのは、嬉しい。感謝している」

 嬉しいという言葉通り、仄(ほの)かに笑みを浮かべながら静かに話す直江に、その姿に、見つめ遣る八海は、何らかの温かい感情(もの)が自分の中に込み上げるのを感じた。

 だが―――言い終わるや、直江の顔から僅かに笑みが姿を隠す。その変化に、八海は僅かに慌てた。

 彼は何を思うのだろう―――或いは、何を憂いているのだろうか……。

「……直江様?」

「だがな、八海」

 問いかけようとした彼の言葉を遮り、視線を逸らした直江が言う。直江は前を向いたまま、こちらを見ようとはしない。

 彼が抱える《思い》――或いは《憂い》なのだろうか――それを少しでも知ることができれば……と、横顔を見つめるが、その彼の端正な横顔からは、何の感情もみえはしなかった。

 自分を一心に見つめる視線に気づいているからか否か――その真意を、八海には量り知ることはできなかったが――、直江は不意に、ふ、と笑むと、逸らしたままであった視線を八海のいる横へと戻す。

「……俺は、お前が俺のために自分を抑えてしまうのが心配なんだ」

「…………?」

 突然の言葉。八海は初め、何を言われているのか理解できなかった。僅かに眼を瞠(みは)ると、直江の顔を更に凝視する。

「解らない、か―――?」

 言われた言葉に対して、理解できないという風体の彼に、直江は苦笑する。穏やかな、だがどこか寂しげな笑みに、静かな言葉が重なる。

「さっきも言った通り、俺は、お前が俺のために何かをしてくれるのは、とても嬉しい」

 そう、八海はいつだって、直江のことを最優先にしてきた。いつ、どんな時でも、直江のために彼は動く。どんな命令であったとしても、彼は成し遂げるだろう―――それが直江に関するものであれば。

 八海の、そんな献身的な姿勢は、一体どんな感情(もの)から齎(もたら)されるのか―――何が八海をそこまでさせるのか、直江は知らない。

 だが……だが、それでも―――

「お前は―――いつも、自分を押し殺しているのだろう……?」

……な」

「俺は、お前が自分を押し殺してまで、俺に仕える必要はないと思っている」

 驚きに言葉をなくしている八海に、そっと苦笑すると、再びすっと視線を逸らし、今度は再び前を向いたまま、彼は続けた。

 例えば―――と、静かに続けられる直江の言葉。だが、八海には―――彼には、それがすんなりと頭に入っては来ない。思ってもいない内容に、彼の思考は奪われてしまっていた。

「お前が俺をこうして迎えに来た今日、もしも、何か大切な用事があったとしたら―――お前はどうする……?」

「……直江様、それは」

「お前は、きっと―――それでも、お前は……」

 例えあの時、八海にとって重大で、どうしても外せない用件があったとしても、直江が自分の迎えを請うたのなら―――彼は来るだろう。その、彼にとって重大な用件(こと)を差し置いても、彼は来る。それがどんなに重いものであっても―――八海ならばそうするだろう……。

 今日のことにしても同様だ。本来ならば、八海は睡眠薬になど手を出す男ではない。だが、敢えてそれをしたのは―――直江の為だからだ。

 それが解るからこそ、直江は躊躇せざるを得ないのだ。

「俺は―――俺のことで、お前の手を……」

 そういい掛け、そっと顔を上げた直江は、その続きを口にするころはできなかった。自身に向けられた八海の瞳が―――それをさせなかったのだ。

「直江様、私は決して自分を押し殺してなどおりません。寧(むし)ろ……その逆です」

「逆……?」

 僅かに瞳を瞠(には)り、小首を傾(かし)げる直江に、八海は笑みを口に乗せ、続ける。

「私は、こうして貴方のお側にいるだけで幸せなのです。こうして―――

 言いながら、彼はそっと手を伸ばす。ゆっくりと直江の柔らかな髪に触れ、そして―――かき上げる。

 向けられる柔らかな瞳。向けられる―――優しい瞳。

 自身に対する八海の優しさを感じ、直江はそっと瞳を閉じる。

「……それなら―――お前の望みは何だ……?」

「……直江様?」

 突然の問いに、僅かな一瞬、八海は反応が遅れた。何を問われたのか、瞬時には解かりかねたのだ。

「俺は、いつかお前に……いつ、か……」

 常に、いつでも直江のことを最優先に尽くしてくれる彼に、いつか、その思いに酬(むく)いたい。彼の最も望むもの――それが何であるのかなど、直江には解からないが――を手に入れてあげたい。

 それが――直江に手に入れることのでき得る範囲の《それ》が――八海の真実に望むものであるかは定かではないが、少しでも彼の労力に酬いることができるのであれば、努力を惜しむつもりはない。

 直江はそう思った。それが、常に直江に従ってくれる八海に対する、彼にできる唯一の報いなのだと―――そう思うのだ。

「八海……いつか……」

 すう、と、小さな吐息を漏らして眠りへと誘(いざな)われていく直江は、そのため見ることはなかった。先程と同様、彼の顔を見つめ遣(や)る八海の瞳に、それまでとは僅かに異なる光が浮かんでいたことを―――

「……直江様……」

 そして、小さく、恐らく発した本人の耳にすら届いていないであろう程小さく落とされた呟きに、普段とは異なる《何か》が含まれていたことを―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ふ、と。顔を上げた八海は、たった今見ていたものを思い浮かべ、ふ、と自嘲ぎみの笑みを浮かべる。

 たった今見たものは、5日前のことだ。この部屋で交わされた、愛しいひととの会話―――

 何故か、一点の曇りもなく非常に鮮明に思い出すことができる。

『お前の望みは何だ……?』

 直江はそう問うた。彼は―――八海の何よりも大切な主(あるじ)は、己の望むものを与えてくれようとでもしていたのだろうか。

 八海の―――自身の部下の、真に望むものが《何》であるかなど、直江は知らないのだ。

 彼が望んでいるもの、それは―――他でもない、それは……。

……よぉ、見つけたぜ」

 突然かけられた声に、八海ははっと顔を上げる。いつの間に開けられていたのであろうか、八海のいる部屋のドアの前には、見知った男の顔があった。

「何でここが解かったのか、って顔だな」

 僅かな瞬間、訝(いぶか)しげな表情が面(おもて)に出てしまったのだろうか、く、と咽喉(のど)の奥で笑いを押し殺すと、千秋は足を進める。

「……探したぜ? ああ、探したさ」

 静かな笑みを―――感情の断片すら垣間見えない笑みを浮かべて、彼は歩みを続ける。向かう先は―――考えるまでもない。

 ……こんなくらい笑みを浮かべる男だっただろうか。

 勢い良く自身の胸倉を掴み上げ、睨みつける千秋を見遣り、この場で思うに些(いささ)か相応しくないことを、ふと、八海は思った。

「まさか、こんなところにいるとはな……」

 見つかる訳がない筈だぜ。そう一人ごちると、突然の来訪者は目を細める。

 ……綾子から《直江失踪》の報を受けてから、千秋は、ただただ直江を探していたのだ。昼夜無く駆け回る自身を、らしくないと―――常の己らしくないと、顧(かえり)みる余裕すらなかった。

 直江がいない。唯それだけのことが、千秋の胸中に喩(たと)え様のない想いを抱かせた。

 直江が忽然と姿をけした事実を、彼と、彼にそれを告げた綾子以外に知り得る者―――夜叉衆という存在からみて、格段、それは限られてくる。だが、彼ら二人が知ることになる以前に、それを知り得る人物―――目の前のこの男ただ一人が蚊帳の外だなどと、誰が信じられるだろうか。

 誰よりも直江の側にいたこの男を、誰が疑わずにいられるだろうか!?

「俺はなぁ、てめぇを見つけたらこうしてやろうと思ってだぜ……?」

 がんっ! と―――途端に響いた激しい音と共に、八海の身体が宙を飛ぶ。重力に従い床へと叩き付けられた途端、胸を圧迫する息苦しさが彼を襲う。

 ぎりり、と締め付けられる首へと、冷たい感触が伝わる。

「八海―――てめぇ、どういうつもりだ? ……いや、そんなこた、どうでも良い。ただ俺は―――

「くは……っ」

 言いながら、先程と同様に八海の身体を叩きつけた千秋は、その反動で開かれたドアの奥に、何気なく視線を移し―――そして一瞬、息を呑んだ。

 そこには―――今居る部屋から届く微かな光に照らされている、薄暗い、その部屋の中には……。

 直江がいた。何の変哲もないベッドの上で、瞳を閉じている。

 眠っているのだろうか――― 一瞬駆け巡ったその考えを、彼は瞬時に消し去った。何故なら、先程から立てている酷く大きな物音にすら目覚める様子もなく、ぴくりともしないのだ。ただ《寝ている》のだと、その姿を見て、誰がそう思うだろうか。

 ましてや、千秋の張った捜索網にも、全く効果がなかったのだ。

 ……千秋の持つ、夜叉衆としての能力。それを駆使した、直江探索。夜叉衆だけが持つ特殊な気を探るために張り巡らされたそれにすら、反応を示さなかったという事実が―――今この部屋に起こっている特殊性を物語っている。

 直江が、ただ《眠っている》だけであったのならば、千秋は、もっと早期に直江の居場所を掴んでいた筈なのだ。それが、今日この日まで、5日間という時間がかかってしまった理由が、この部屋にはあった。

 直江は眠っているのではない。直江は―――

 ……己の肩が、身体が、小刻みに震えていることにすら気づかず、千秋が言葉もなく見つめ遣るその先に―――その視線の先に《何》があるのかなど、八海には確かめるまでもない。そこに何が―――否、《誰》がいるのか解かっている彼は、そっと瞳を閉じる。

 己の視界を静かに閉ざした八海は、そのため気づくことはなかった。開けられた扉のその向こうに、千秋の視線とは異なるもうひとつのそれが向けられていたことを―――

――――――

 ……言葉もなく、ただそこに立ち尽くしているかの様にも見える千秋と、視界を閉ざした八海。互いに言葉を発することなく、ただ、沈黙だけが流れていく。

「……八海、てめぇ……」

 ぽつり、と―――独語ともとれるそれが、不意に、千秋の口から紡がれる。

 八海―――直江に最も信用されていながら、それを裏切った男。何より、直江を想っていた筈が、その想いを裏切った男―――千秋に許せる筈もなかった。

 あの日―――夜叉衆として集まり、言い様のない感情に苛(さいな)まれながらも、どうすることもできなかったあの日、それでも直江の手を離したのは、こんな結末を見るためではなかった筈だ。決して、こんな……こんな直江を見るためではなかったのだ!

 吹き荒れる感情のまま、彼は振り返り、手を伸ばす。掴み上げた胸倉を、更にきつく締め上げる。

 負の感情にぎらつく視線と、交差する八海のそれ。対照的な感情が浮かぶ互いのそれに―――八海が静かに口を開いた。

「手を……離して頂けませんか?」

「……何だと!?」

 掛けられたそのあまりに冷静な声に、瞬間、かっと頭に血が上った。激高するままに振り上げられた千秋の拳(こぶし)が、八海へと届こうとしていた正にその時―――張り詰めていたその場の空気を破ったのは、突如として飛び込んで来た一つの声であった。

「やめなさい!!」

 普段であったならば、むしろ柔らかい類(たぐい)のものであったその声は、今この瞬間、寧(むし)ろ誰よりも強張ったものに聞こえる。

「邪魔をするな!」

 掛けられた声にも振り返りもせず、千秋は言い放つ。確認するまでもなく、その声が誰のものであるのか彼には解かっていたのだが、そんなことは彼にはどうでも良かったのだ。

 八海の首にかかる指の力が、尚も強くなる。

「そんなことをして、直江が喜ぶとでも思うの!?」

「うるせぇ!」

「千秋!」

 再度、自身の背中へとかけられた声に――先程よりも強張ったそれに――千秋は僅かに振り返り、口を閉ざす。

―――……」

 数瞬の沈黙の後、ち、と、小さく、だがその場にいた全ての耳に届き得る舌打ちを残し、千秋は、数瞬の逡巡の後、苛立ちげに手を離す。と、どさり、と音を立てて八海の身体が地につく。

 ……いつの間に部屋に入っていたのだろうか、声の主(ぬし)は二人の数メートル離れた場所にいた。

「……ねぇ、八海」

 未だ不穏な雰囲気を微塵も隠そうとしない千秋に、ちらり、と視線を移し、だが彼に対しては何も口にせず、綾子は視線を八海へと戻す。

「貴方はそれで良いの?」

 ―――問われた八海は、一瞬、僅かに瞳(め)を瞠(みは)る。何を言われたのか、咄嗟には判断できなかったのだ。

「…………」

 無言のままの彼に、彼女は尚も続ける。

「貴方はそれで満足なの……?」

 問いながら、足を進める。ゆっくりと、だが確実に八海へと近づいて行く綾子は、その場に立ち尽くしているかの様(よう)にも見える八海の姿を瞳に捉えたまま、彼の数メートル手前でその歩みを止めた。

「これが……この結末が―――貴方の望んだものなの?」

―――!」

 これが、と口にしながら、視線は、開かれた扉の奥で静かに眠る直江の顔へと向けられている。

 一瞬、僅(わず)かな瞬間、八海は息を呑んだ。綾子の―――彼女の静かな面(おもて)が語っているその事実(ないよう)に、気づかない筈はなかったのだ。

 この部屋に駆け込み、激しい程の激情で八海の首を締め付け、彼への憎悪の念をぶつける千秋とは異なり、穏やかな雰囲気のまま、ただそこのいる綾子。

 ……静かな面(おもて)。静かな―――言葉。

 それらが、だが却(かえ)って誰よりも強い意志を伝えていることを、綾子本人は解かっているのであろうか。

 何より、紡がれた彼女の台詞が、八海の胸を抉(えぐ)る。

「2度は言わない。八海、貴方は……」

 その後は続けられなかった。言う必要もなかったのだろうが、その是非は、八海には判断しようがなかった。

 ただ、今日出会った時から一度も変わることのなかったその視線が、変わらず、彼に問いかけているのだ。

 これで良いのか? と―――答えなさい、と……。

「………………」

 静かに流れる沈黙。正確には数十秒にも満たない短い時間であったが、八海には―――彼には、それが数分にも数時間にも感じられた。

 ……ふ、と。それまで逸らすことなく八海へと向けられていた綾子の視線が、前触れもなく外される。そして、向けられた先は―――強く握り締められた拳(こぶし)であった。

「……千秋」

 掛けられた声に、それまで綾子の方を見ようとしなかった千秋の視線が、静かに向けられる。彼女に対し、彼の口は僅(わず)かに開きかけ―――だが何かを紡ぐことはなかった。

 ただ、酷く強く握りしめられていた彼の拳が、不意にその力を抜き―――そして、一方へと伸ばされる。

 ぐい、と、数分前と同様に胸倉を掴まれ、八海の身体が僅かに浮き上がる。強く引き上げられながら、八海は何も口にしようとはしなかった。それが―――その態度が、激しい感情に揺さぶられている千秋のそれを、余計に刺激していることなど、今の八海に気づき得る筈もなかった。 

 言葉もなく自身を見遣る八海に対し、千秋の内(なか)で、喩(たと)え様(よう)のない感情が吹き荒れる。それは、《憎悪》というには生易しく、だが《殺意》というには何かが多すぎた。

「いいか、俺はてめぇを許さねぇ。いつか必ず―――殺してやる」

 八海に対し、再び吐き出される憎悪。そして、それに含まれる確かな《想い》を感じ取り、八海は瞳を伏せる。

 何も言わない――否、何も言えないのかもしれないが、そんなことは千秋にとってはどうでも良かった――八海を一瞥し、彼は手を離す。どん、と突き放す様にその身体を放り出すと、それ以上は何も言わず、踵(きびす)を返す。

「…………」

 振り向きもせずその場を離れる千秋に続き、綾子が足を進める。ただ、彼とは違い、彼女は何かを――それが何であるのかなど、八海には解かり得なかったが――口にしかけ、そして止めた。

 ……ぱたん、と音を立てて締められる扉。その、決して厚くもない筈のそれが閉まったことで、それまで確かにあった喧騒が、まるで何もなかったかのように静寂が訪れる。

 ――否、元より、ここには誰もいなかったのだ。彼自身と―――そして、

愛しいひと以外には。

 彼は静かに歩き出すと、千秋によって開かれた部屋へと足を進める。寸分違わない姿のまま、彼の大切な主(あるじ)がそこにいた。

「ふ……」

 とん、と背後の壁へと背を預け、八海は溜息をつく。知らず額へと向けていた手は、彼の前髪をかき上げる。そっと瞳を閉じた途端、ぎらつく視線が八海を捉えた。

『いつか必ず―――殺してやる』

 途端に蘇(よみがえ)る、憎悪のこもった男の言葉(それ)。

 ……ああして自分に向けられる彼の悪意は、寧(むし)ろ当然のこと過ぎて、その是非を疑う余地もない。だが、こうして改めて考えていると、そんな彼の態度にさえ、ささやかならざる感情が自身の心に立ち込めるのを、どこか冷静な自身が感じていた。

 普段であったならば、移り気で何事に関しても執着というものを表すことのないあの男の、恐らくは唯一の感情の起伏―――それが何を表しているのかなど、考える余地もない。

 それは―――違(たが)え様のない、直江への《想い》。直江への―――八海にとって至上の存在(ひと)である、直江への、熱い《想い》……。

 ……不意に、先程の綾子の言葉が脳裏を掠める。

 貴方はこれで良いの? ―――直江を傷つけて。

 これで満足なの? ―――直江を傷つけてまで。

 恐らく、短かった言葉の裏に隠れていたであろう、別の言葉。それを問われ、先程は答えられなかった《もの》が、今はすんなりと彼の内(なか)で形を成す。そうして、彼は微笑(わら)った。

 ―――満足に決まっている。

 これこそが、自身の望み。

 漸(ようや)く手に入れた、誰よりも愛しい存在(ひと)。

 これで、貴方はどこへも行かない。これで―――貴方は私だけのもの……。

「直江様……」

 ……ふ、と。

 微笑すら浮かべて、静かに眠る直江を眺める彼の脳裡(のうり)に、突如、鮮やかな情景が甦(よみがえ)る。幾重にも重ねられたそれは、何かの残像の様であった。

 偶像とも言えるそれは、徐々に形を変え、そして―――八海の愛しいひとの姿へと変化していく。それが……静かに言葉を紡ぐ。

「八海」

 彼は微笑む。優しく―――慈愛に満ちた笑みをその頬に浮かべて、八海の名を呼ぶ。

「八海」

 お前は心配性だな、と微笑む彼は、そっと伸ばした掌(てのひら)で八海の頬に触れる。確かな暖かさが、八海の頬に伝わる。

「八海」

 お前は―――……。

「……っ!!」

 突如、開(ひら)けた視界と思考に、八海は自身の状況を知った。らしくもない動揺からか、額を冷たいものが伝っている。それを、ぐい、と拭うと、彼は自嘲的な笑みを浮かべた。

 自分は何を見ていたのだろう。

 ……ふと、目の前で眠る主(あるじ)へと手を伸ばす。確認するまでもない―――優しい眠りに身を任せている彼こそが、現実。立った今見た――否、感じた(視た)――直江の姿は、真実ではない。

 そう―――こうして目の前にいる直江こそが、彼にとって《真実》なのだ。

 ……何を動揺していたのだろうか。直江は―――彼の愛しいひとは、こうして目の前にいるではないか。

 八海は、伸ばした掌(てのひら)で、そっと直江の頬に触れる。ゆっくりと伝わってくる確かな温もりが、直江がここにいるという実感を与えてくれる。

「直江様……」

 誰よりも欲したひと。誰よりも愛しくて―――手に入れたかった存在(ひと)。

 ―――そして、今は自分ひとりのもの。

「………………」

 穏やかな笑みを浮かべた彼は、だが次の瞬間、極僅かに眉を寄せた。

 大切なひとを手に入れたというのに……誰よりも大切で愛しい直江が、今こうして自身の目の前にいるというのに―――

 何故、貴方は私を見ない。

 何故、貴方は私を呼んでくれない。

 何故―――

 そんなことを思いながら、静かな吐息を漏らして眠る直江のその表情(かお)を見遣る。

 愛する貴方はここにいるというのに―――こうして、確かに触れることができるというのに―――

 ……何故こうも涙が出るのだろう。

 静かに、だが確実に彼の頬を濡らしていく雫の正体を、八海は知っていた。愛しい人を手に入れ、歓喜に震える今の八海に、出る筈のないもの―――だが、それは確実に彼の頬を伝い、そして……静かに眠る直江の頬へと、その身を移す。

 八海の頬を伝ったそれは、直江のそれをも濡らしていく。

 繰り返し……二重三重と絶え間なく続くそれは、まるで、八海の想いを―――他の誰よりも強く向けられる熱い想いを、直江自身に知らしめるかのように、静かに、確実に直江の頬を濡らしていく。

 何がこんなにも悲しいのだろうか。

 貴方を……手に入れたというのに―――

「……直江様……」

 本人にすら意識し得ない程に小さな声(それ)。確実に形成(かたちづく)られたそれは、だが応(いら)える声もなく、ただこの部屋を覆う薄闇の中へと静かに飲み込まれていった―――

 

 

 

to be continued …… ⇒《想いの果て》

 

 

 

 

 

 ● コメントという名の言い訳 ●

 

 

 ぐへぇっ!(吐血) ……のっけから失礼しました、駅馬、思わず吐血ってしまいましたです(寒)。

 ―――改めまして。

 お久しぶりです、久々の小説の更新です。《前篇》アップ時に、一部の読者さまの間で物議(大袈裟な)を醸し出した(らしい)、《闇を照らす瞳》、後篇です。「散々お待たせした挙句、これか〜〜〜!?(怒)」という感じですね……くはっ(吐)。す・すみません〜〜〜〜〜!!!(平謝り)

 

 ええと。このお話は、上記にある通り、《想いの果て》というお話に続きます。ええ、また続くんです……(死)。まだ続くんかい!(←ぷちツッコミ)

 で・でもですね??(焦) あのですね??(あたふた) 実は、駅馬の中で、この《闇を〜》が《想いの〜》へ続くというのは、結構前から決まってたんですよ。はい。ええ、ホントに。ええと、前編辺りから、既に決まってましたです。

 ……まぁ、テーマがテーマだけに、そうそう短く終わるとは思ってなかったですが、まさか、こうも長々と続くとは、駅馬も思ってなかったですよ……(呆)。そうそう、《前篇》で、既に最長記録だったって言うのに、その《後篇》で、更に記録更新だなんて……(もしかして、アホ?)。容量的には、この後篇が最長です……あああ(遠い目)。

 ……と、思ったら、よくよく見てみたら、《君は僕の宝物》というリク小説の方が、微妙にですが長かったらしいです〜(笑)。

 

 ――なぁ〜んて、悠長に(?)お話してる場合ではなかとよ!(どこの人間だ)

 この小説、八×直と銘打っている(一応)くせに、何なのですかね、……直江、ただ寝てるだけ(死)。八海の回想シーンでは一応会話してますが、それ以外では一言すらしゃべってないですよ!(爆死) うっわ〜……(遠い目)。

 ホント、何なんでしょうねぇ、これ……(汗)。八×直なのに……駅馬の大好きな八×直なのに―――ラブってない……(驚)。いやまぁ、途中(回想シーン)、ラブってないこともないような気もしないでもないんですが(どっちだ)、普段の八×直からすると、正に「何なのこれ」状態で(汗)。

 皆様! 特に八×直好きの皆様、すみませんん〜〜〜〜〜〜!(焦)

 ……どうしちゃったの、八海さんは……(汗)。って感じですか?(人に聞くな) ぅえ〜ん、駅馬にも解かりませんですー!(逃げ……たいです/オイ)

 でもでも、八海は直江を愛してるんですよ! 愛して愛して、愛し過ぎて、とうとう……壊れちゃった、の、かな……? え、違うの?(だから人に聞くなっつの)

 最早、前篇を書き始めてた頃の駅馬が何を考えていたのか、よく解からなくなってる始末……(←オイ)。だって、よく考えたら(よく考えんでも)、前篇から後篇まで、実に●●ヶ月も経ってるんですよ!?(驚愕) う〜ん、その●●ってのが、既に二桁になってるっていうのが、嬉し過ぎて涙がちょちょ切れますわ……(遠い目)。正確には、▲年……? ぎゃぁ〜〜〜〜っ!!(錯乱)

 

 ……内容について、もうひとつ。(←ちょっと冷静さを取り戻したらしい)

 話の中で、八海が睡眠薬もどきを使ってますが、ここで訂正をさせて下さい。

 はっきり言って、駅馬が訂正するまでもないことかもしれませんが、睡眠薬等は、飲んであんなに早くは効きません(きっぱり)。あんなにすぐに効く訳がないんです〜(苦笑)。内服ではね。注射や点滴とかで血管内に注入したら、即効で効くものも勿論ありますが……八海が使ったあれは、内服薬なので、あの効き方は嘘っぱちです(笑)。

 でも。あそこで、薬が効くまで長々と直江に起きていられては話が進まないので、直江には早々に眠ってもらった訳です(酷っ)。ごめん、直江……(合掌)。

 でもでも、まさか、八海に注射させる訳にもいかないじゃないですか。勿論、注射なんて、ある程度の知識と道具があれば誰にでもできますけど、注射ってそれなりに痛いし、直江が可愛そうだから〜★(←そういう問題じゃないっつの)

 

 あとね、この話の背景の模様ですが。この背景を選んだのには、ちゃんと理由があるんですよ〜。ええと、この模様って、見ようによっては、鎖が連なっているようにも見えませんですか? あ、見えませんか……(しゅん)←早。 一応、駅馬、《連鎖》をイメージして選んだんですが……その理由は、詳しくは語らないでおきますね(なら言うな)。きっと、いずれ解かります(弱気)。

 

 話は変わって(無理やり)。

 余談かもしれませんが、この話を書いてた時、実は、他の小説も同時進行で書いてたりしたんですよ。この激!多忙な駅馬が(苦笑)。アホですな(ホントにな)。

 だって、ですね? 駅馬自身、この後篇のあまりの暗さ(と言うか甘くなさ)に、書いてて目眩がしてきまして(マジに)。「ぎゃ〜〜〜っ! 駅馬の書きたいのは、こんなんじゃなくて〜〜〜〜っ!(叫)」みたいな感じになりまして(←落ち着けよ)。

 だって、駅馬は本来(?)、《甘々八×直書き》なんですもの。こんな暗〜い話、嫌なんです〜!(泣)

 ……あ。今、「なら書くなよ」っていう読者様の台詞が聞こえてきました(苦笑)。いや、あのですねぇ、駅馬は別に、嫌なものを無理やり書いてる、って訳じゃないですよ? 多分……(←多分!?/オイ)  何て言うか……《こういった過程を経て、いきついた末での、甘々八×直》が書きたいだけなのかも……しれませんです(やけに自信なさげ)。

 という訳でして。続編の《想いの果て》は、予定では、上記の様な、《行き着いた末での八×直》になる予定、です。そう、ハッピーエンド

 ……なので。皆様、この《闇を〜》が、いつもの駅馬らしくなく、暗くってどろどろしてて(?)甘々じゃない(?)八×直でも、許して下さい〜〜〜!(結局それが言いたかったらしい)  ……って、ダメ?(泣)

 今はこんな流れでも、結末はハッピーエンドなんですよーー!(焦) ……って、いつかどこかで、同じようなこと言い続けてたような気がしないでもないんですが……(既視感)。

 ええと……思い出しました。そうそう、某シリーズでも、「最後はハッピーエンドなんですぅ!(泣)」って言ってたような……えへ★(死)(←成長ゼロかい)

 

 ああ、思わず話が逸れちゃいましたが(←いや、最早「逸れた」って程度ではない)。

 先程言ってた、同時進行で書いてたっていう小説は―――どれのこととか、まだ小説をアップできないので詳細は伏せておきますが(オイ)、これだけは言えます。

 ―――かなりの甘々です! ええ、そりゃもう、「いい加減にしなさいよ、貴方たち……(疲)」って言いたくなる位に(苦笑)。(でも駅馬のトコの八×直って、いつもそんな感じですよね/笑)。どんな甘々かは、ご想像にお任せします★(何故) でも、何せ書くのは駅馬だから、一般的な「甘々」とは、ちょっと違う……かも?(苦笑)

 それでも、甘いのは確かですよ。だって、この《闇を〜》の暗さの反動で駅馬、「きーーー! 甘いのが書きたい〜〜〜〜!」って狂ってましたから(怖)。

 

 

 ああああ、そんなことはどうでも良いです!(←なら書くな)

 この、正に久しぶりの更新ですが、ご意見ご感想等、是非是非、駅馬に聞かせて下さいませ!(切実) もうもう、あまりの多忙さに常に廃れている駅馬にとっては、皆様のお言葉が、何よりの滋養強壮なので★ 生きる糧ですv TOPのメルフォかBBSでお待ちしておりま〜す!

 ……と言う訳で。《闇を見つける瞳/後篇》、如何でしたでしょうか? では、また次の直江受小説でお逢いしましょう♪

(何か今回のコメント、すっきりした終わり方ですね……(←そうか?)。良いんだろか、これで……(不安)。いつもはワタワタしながら終わってるのに(苦笑)。……ま、いっか♪(←短絡的))

 

 

 

 

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