君は僕の宝物
駅馬 如
その日、彼は夢を見た。懐かしい夢―――決して忘れはしないだろう、そんな夢。 忘れもしない遠い日々、自分は彼と共にあった。
彼は不意に、自分を呼ぶ声に気づいた。否、気づかない筈もない―――その声を聞き逃すことなどないだろう。漠然とそう思う。 「兄さん……っ」 振り返ると、予想を違(たが)わず、彼の思っていた通りの少年が小走りに駆けて来る。日本庭園をぐるりと囲う木造りの廊下を、白い靴下を履いた少年が駆ける。 その様子に、照弘は笑みを浮かべる。 「どうした、義明……?」 「こ・これを……」 僅かに息せき切った様子で、手の中の《もの》を彼に見せる。それは―――数珠。琥珀色をした綺麗な球体がいくつも連なり、一つの輪になっている。 常ならば照弘が持ち歩くことなど殆(ほとん)どないものだが、今日は少し勝手が違う。今日に限っては、彼が持っていなければならない物なのだ。 義明の手の中の物に目をやった照広は、少年が駆けて来た理由に気づき、笑みを深くした。ふ、と笑うと、目の前の少年は僅かに不思議そうな顔をした。 「―――わざわざ待ってきてくれたのか、これを……?」 「……机の…上に、置きっぱなしだった、から……」 途切れ途切れになりながらも、言葉を繋げる弟の姿。最近になって、漸(ようや)く見ることの出来るようになったものだ。 その姿をもっと見ていたくて―――照弘は口元を緩めたまま、義明の顔を眺めている。 「……兄さん……?」 自分を見遣る視線に、僅かに居心地に悪さを感じたのか、義明は軽く居ずまいを正す。特に不快だ、などということではない。ただ、深い何か――その感情をなんと言うのか彼は知らなかったが――をその視線の中に感じ取って、義明は照弘をそっと見上げた。 彼の兄は、時折、彼をそんな瞳で見つめることがある。最近になって、特に。 その訳は知らない。ただ―――兄が自分を酷く心配してくれているのが解かっているため、他の兄弟達よりもこの長男を頼りにしている自分がいることに、義明は気づいていた。 「―――いや、何でもない。悪かったな、わざわざ……」 そう言って、義明の頭を撫でる。少しだけ茶色がかった、それでいて艶のある義明の髪を、そっと掻き上げる。 その感触が気持ち良くて―――義明はくすぐったそうに首を竦めた。まるで猫のようなその仕草に、何かがふと頭を擡(もた)げ、照弘は時間も忘れて撫で続けていた。 「……に・兄さ、ん……っ」 決して不快ではない感触だが、こうも続け様に繰り返されては、撫でられる方としては堪らない。 果たしていつ迄続くのだろう―――その義明の思いを叶えたのは、先程彼に渡した数珠だった。 それまで片手で撫でていた照弘は、不意に、使っていなかった左手も持ち上げた。その手で義明の柔らかい髪に触れようとしたその途端―――。 しゃらん、と音を立てて数珠が落下した音が、僅かに廊下に響く。それに、照弘ははっとした。 「兄さん、時間が……」 「――あ、ああ、そうだったな……」 漸く当初の用事を思い出したのか、照弘は僅かに苦笑し、弟の髪から手を離した。 「もうそんな時間だったな……さてと、行くか」 呟くと、廊下に落ちた数珠を拾い上げる。前屈みになった途端、五条袈裟(ごじょうげさ)が床に触れ、さわり、と僅かな音を立てる。 「お前も、遅刻しないようにな……?」 言葉程には強制感を含めず、照弘は言う。別に遅刻しても良い―――そんな意味さえ漂わせて、彼は背を向ける。 何も言わずに見送る義明に、兄は歩きながら手を振った。その法衣姿が廊下の角を曲がり、義明の視界から消えるまで、彼はその背中を見つめていた。
橘兄弟の実家である光厳寺では、その日、法事が行われていた。この法事に参加するのは、当初、父親と次男の2人だけの予定だったが、前日になって次男が高熱を出し、どうしても出席が危うくなった。 そこでお声がかかったのが、長男の照弘である。彼は寺の長男でありながらも、寺の行事というものに全く関心がなく、『不向きだろう』ということで、父親もそんな照弘には期待はしていなかったようだ。だが、となると、出席が父親一人になってしまう。 ならば仕方がない―――良い経験にもなるだろう、ということで、初め、父親は三男の義明を出席させるつもりでいた。 これまでにも、義明を出させようと考えていたことはあったが、諸事情により、それは先延ばしにされていたのだが、今回はそうもいかないだろう。そう思い、父親は義明の出席を決めた。だが―――。 それをさせなかったのは―――初めは驚く程に出席を嫌がっていた照弘本人だった。 「―――仕方がない、義明に……」と父親が一言呟いた途端、顔色を変えて反対したのである。 『あいつにはまだ無理です! どうしても、とおっしゃるならば、俺が出ましょう……』 本堂の に座り、読経を口にしながら、照弘は本日早朝に交わされた親子の会話を思い出していた。 父親が末弟の義明を出席させようと考えていることを知った時の自分の行動を顧みて、知らずに苦笑する。我ながらやり過ぎただろうか……? これでまた、あの口煩い父親に、『お前は義明に甘い』とか『過保護だ』とか言われるに違いない。そう思うと、不意に苦笑してしまうのだ。 だが、例え誰に何と言われようとも、彼は今の義明を無理に寺の行事に参加させる気は毛頭なかった。 寺の行事に限らず、彼は弟に無理に何かをさせる、ということをしなかった。義明のしたいように―――したいと思うことを、思い切りさせてやりたい。それが彼の想い。 ―――彼の弟は、少し《一般的》とは異なった生い立ちを持っている。幼少の頃から口数が少なく、誰とも打ち解けず、心を開かない―――そんな子供だった。 両親は勿論心配し、どうにか普通の子供と同じように育てようとしていたが、照弘は常々、それではいけない―――そう思ってきた。 義明のさせたいようにした方が良い。無理矢理何かをさせようとするなど、逆効果なのだ。そう思うため、年の離れた兄である照弘は、何かにつけて義明のことを目にかけるようになっていた。 そんな義明も、今年で高校生になった。真新しい学生服も眩しく、彼は家からそう遠くはない高校に通っている。 以前よりは口数も増え、徐々に世慣れしてきているようにも見える。ずっと傍で彼を見続けている照弘には、その変化が手に取るように分かって、彼を嬉しくさせた。 もっともっと世間の喜びを知り、喜んで欲しい。それが、彼の純粋な願い。 ―――ふと、前を顧みた彼は、法事が終盤に差し掛かっていることに気づいた。自分の参加している法事の途中で、物思い――しかも、義明のこと――に耽ってしまっていたことに気づき、更に苦笑する。 これは、相当に重症かもしれない。 よくよく家族に言われることではあるが、何も、自分自身で自覚がない訳ではないのだ。だが、誰に何と言われようと、彼にとって義明はかけがいのない存在(おとうと)なのだ……。 今まで手にしていたものを、そっと畳む。手前のりん台にそれを乗せると、彼は静かに立ち上がる。 法事の祭主である照弘が立ち去るのを見届けて、参列者達が揃い揃いに立ち上がり、退席を始める。それを横目で見ながら、照弘は寺の境内に足を向けた。 そこで―――彼は不意に足を止めた。否、そこに見つけた姿に、先に進もうとしていた足を止められた。 その後ろ姿を、見間違える筈はない。あれは―――ちょうど照弘の視線の先をゆっくりと歩む、あの後姿は……。 「……義明……?」 もう帰宅したのか? 学生服に身を包んだ弟の姿。今朝、彼が持っていくのを忘れた数珠を届けてくれた後、登校した筈である。今はまだ、正午を僅かばかり過ぎた頃である。もう帰宅とは、幾分―――否、かなり早いのではないだろうか? 立ち止まった照弘の見ている先で、義明は本堂の裏にある離れに向かっているようだった。決して狭くはないこの敷地内で、あの先には離れしかない。 ふと。彼は、あることに気がついた。 確か今日は土曜日である。半日の授業を終えて、この時間に高校生が帰宅してもそうおかしくはない―――かもしれない。 それでも―――彼は何か引っかかるものを感じ、半ば無意識的に足を進めていた。弟の―――義明のいるだろう離れへと……。 ―――果たして、予想通り、義明は離れにいた。離れの軒下に腰掛け、じっと前を見据えている。 照弘は声をかけようとして―――それができなかった。 彼は前方を見ていたが、その視線の先には何があるのだろうか。少なくとも、実際にここに―――この自分達を取り巻く世界にはない《何か》に向けられているかのように感じられる。 彼の弟は、時折、こんな表情をすることがあった。それが―――彼の視線の先にあるものが何なのかなど、照弘には皆目見当もつかない。 義明の見せるその表情が、あまりに普段の彼とは違い、この目の前の少年が本当に自分の弟なのか―――そんな漠然とした思いさえ感じる時もある。 それでも―――それでも、不器用にも世の中に向かっていくこの少年は、間違いもなく、自分の大切な存在(おとうと)なのだ。 そう……愛しい、誰よりも愛しい存在(もの)。 腰掛け、じっと前を見据える少年に向かう自分のこの感情が何であるのか、照弘は気づいていた。そう、もうずっと以前から、この感情の名に彼は気づいていたが、それを誰かに告げることなどしなかった。当り前のことではあるが、そんな現実的な範疇(はんちゅう)ではなく、彼にとってこの感情は、何よりも大切で、そして――……。 時折見せる表情を、今日もまた浮かべる少年―――その、実際の年齢以上に大人びて見える表情(かお)に、照弘は彼が何を思っているのか、それを知りたいと思った。まるで、ここにない《何か》を―――照弘の知らない何かを見ているようで……その纏(まと)う雰囲気に、照弘は瞬間、声をかけるのを躊躇(ためら)ってしまった。 彼の世界を―――少なくとも、今、彼自身のいる世界を壊してしまうことに、照弘は戸惑わずにはいられない。 だが、義明のいるべき世界は、自分の―――照弘と共にある《ここ》の筈なのだ。愛しい義明を、自分の知らない《何か》に奪われるなど―――耐えられない。彼は不意にそう思った。 徐(おもむろ)に、一歩、前に出る。玉砂利が敷き詰めてあるためか、彼の足元で、しゃり、という音が鳴った。 決して大きくはない、それ。だが、少年の耳には届いたようだ。 照弘の立てたその小さな音がした途端、義明はゆっくりと振り返った。そして―――。 「……兄さん……?」 微笑んだ。それは、この少年が最近になって漸(ようや)く自分に見せ始めた笑顔。他の人間の前ではいまだそうそう見せることはなかったが、自分の―――照弘の前ではよく見せてくれるようになったのだ。それは即(すなわ)ち自分への信頼故だと感じ、嬉しく思う。それと同時に、その嬉しさはこの少年への《愛しさ》へと変化する。 振り返り仄(ほの)かに微笑んだ義明からは、先程までの、僅かに近寄り難い―――違う世界に見入るような雰囲気は感じられない。振り返った途端、愛しい弟が自分の元に帰って来たような感じすら覚えて、照弘は僅かにほっとした。 それでも、そんな彼の思いをおくびにも出さず、彼は、未だ幼さの残る顔で自分を見上げる義明に笑顔を向けると、暫(しば)し止めていた足を前に進める。 ……何メートル進んだだろうか。僅かにあった距離は、しゃりしゃりと音を立てる照弘によって縮められ、彼は義明のすぐ横まで来た。 「―――ここで何を、義明……?」 義明のちょうどすぐ横に自分も腰掛け、照弘は尋ねる。 「何を見ていた……?」 「………………」 問うてはいけない―――問うべきではない質問を、だが敢えて彼は口にする。そして、答えない義明。 僅かに俯き、困ったような表情を浮かべる少年の横顔を見遣り、照弘は何とも表現し難い想いに駆られた。 やはり義明は――……。 そっと手を伸ばす。その右手が少年に触れる、正にその時――― 一陣の風が、微(かす)かに彼らの間を駆け抜けた。何の変哲もないそよ風。だが、照弘は何者かに止められたかのように、上げたその手を動かすことはできなかった。 彼は僅かに眼を伏せると、右手を元に戻す。苦笑し、ふと横を見遣る。 彼の弟は、未だ僅かに俯き、苦笑とも微笑ともとれる表情をしている。その横顔に、彼はふ、と笑みを向けた。 「今日は天気が良いな……」 照弘は正面に向き直し、空を見上げる形で僅かに後ろに反った。後方に伸ばした両腕で上体を支え、広く澄み渡る空を仰ぎ見る。 何気なく掛けられた声――否、殆(ほとん)ど独り言に近かったかもしれない――を聞きとめたのか、義明が不意に顔を上げた。そして、まるで初めて見たかのように、驚きの表情を見せる。 「何だお前、天気が良いこと、気づかなかったのか?」 掛けられた声に、少年は僅かに頬を染めた。その様が妙に可愛らしくて―――思わず手を伸ばしていた。 くしゃり、と、柔らかい髪を撫でる。耳元を掠めるその感触に、義明はくすぐったいのか、僅かに目を細めた。 2人を囲う雰囲気は、いつの間にか常と変わらないものになっている。そのことにほっとしながらも、照弘は声を掛ける。 「いいか義明、たまには空を見上げてみろ……。特に、こんな天気の良い日にはな……」 言われて、少年は微(かす)かに頷く。それを見て、照弘は笑みを浮かべた。そして、今度は多少乱暴に、わしゃわしゃと少年の髪を掻き上げる。 「に・兄さん……っ」 困ったような声を上げて彼の手を止めようとする義明に、彼は一際大きくなる感情に気づき、僅かに苦笑した。 俺は、お前さえ幸せになってくれればそれで良い。 誰よりも、何よりも幸せを望む―――それが、この少年。 義明が、誰よりも幸せに、そして苦しむことのないように生きて欲しい、そうなれば良い―――それが照弘の願い。 お前が幸せに……。 ……未だに髪を撫で続ける照弘と、それに困ったように首を竦める義明。そんな兄弟の横を、僅かに秋の匂いをのせた風が、そっと通り過ぎて行った……。
「……さん、……いさんっ……兄さんっ!!」 何故か身体が揺れている。照弘はふと、はっきりとしない頭でそう思った。確かに揺れているのだ。気のせいか、僅かな痛みすら感じる。 「兄さんっ!!」 先程から続いている声が、一際大きくなった。まさか耳元で言われている訳でもあるまいに、やけに大きく聞こえる。 「いい加減にして下さい、兄さん!」 不意に目が開く。眼前に広がるのは茶色の世界。 ―――漸く視界がはっきりとしてきて、重い頭を持ち上げると、目の前には心底呆れたような表情を浮かべる弟の姿。 それも―――今さっきまで接していた高校生の義明ではなく……。 「全く、そんなとこで居眠りしていては、風邪をひいても知りませんよ!?」 どうやら自分は、居間のテーブルの上で突っ伏して眠ってしまっていたらしい。義明の言葉と、目の前に広がる光景を目にして、照弘は漸く事態を把握した。 何故こんな所で―――そう思い、記憶を探ってみる。 確か今日は、照弘の仕事が一段落し、多少浮かれ気分で実家の敷地内にある自宅に帰宅した。そして、何気なく―――本当に何気なく足を運んだのが、あの離れの庭だった。 そこで……その軒下で足を止めた彼は、そのまま実家のリビングに入り、酒を口にした。 そこまでは確かなのだ。そこまでの記憶は、思い出そうとすればすんなりと出て来る。 解からないのは、何故、遠い昔の―――それでいて決して忘れることのないあの記憶を夢として見ていたのか、である。 それはきっと、最近は滅多に足を向けることのない離れ――離れ自体にはあまり用事はないのだ――に久し振りに足を踏み入れてしまったことで、暫し静かに眠っていた思いが不意に目覚めたのだろう。 そんなことを考えている彼の前で、義明は呆れた表情で彼を見ている。 「全く……一体何杯飲まれたんですか? もう若くないんですし、そろそろ酒は控えた方がいいのでは?」 テーブルの上に所狭しと並ぶビンやカンを、彼は言いながら片付けている。その姿を見ながら、照弘はふと、先程まで《見ていた》彼と今の目の前の彼を比べ、苦笑する。 “あの”義明(おとうと)が、今では皮肉すら口にするようになった。 「よく言う。お前だってかなり飲むだろうに」 「私の場合、兄さんとは違って、自分の酒量というものをしっかり弁(わきま)えてますからね」 瞬時に即答した弟の真顔と、そしてその内容に、苦笑は深いものへと変わっていく。 「ふ……はははっ……」 「―――笑い事ですか……?」 急に笑い出した照弘に、義明は僅かに怪訝そうな視線を向ける。だが、兄が面白がっていることに気づいている彼は、呆れたように苦笑した。 「……何かあったのですか……?」 彼がこうも度を過ぎて酒を飲むには、それなりの理由があるのだろう。彼にとって嫌なことか、はたまた嬉しいことが……。だが、兄の楽しそうな様子を見ていれば、後者であることは疑う余地もない。 義明はそう思い、片付けていた手を止め、照弘に目を向けた。そして、自分をじっと見つめる彼の瞳に気づく。 兄は、テーブルに置いた左手で頬杖をつき、弟を見つめている。その瞳は優しくて―――いつになってもこの人には適わない、と義明は思う。同時に、守られている―――そうとも思う。 「…………?」 何か? と。言葉ではなく視線で問うと、照弘は微かに視線を逸らし口を開いた。 「いや、何にもないさ―――ただ」 語尾は、あまりに小さかったため、義明の耳にはっきりとは届かなかった。そのため、彼は訊き返そうとしたが、それよりも早く、照弘はのそり、と立ち上がった。 今度は何を始めたのだろうか。義明は不思議になりながらも、言葉を挟むことなく彼のすることを見遣る。 すると、照弘は何を思ったのか、義明の隣まで来て徐(おもむろ)に座った。 「それにしても、今日は一体どうしたんだ? あんまりここへ来たがらないお前が……」 どうやら、自分の突然の来訪の理由を聞きたいらしい。そう理解した義明は、僅かに苦笑しながらも、その理由(わけ)を語ろうと、胸元に手を差し入れる。照弘の見ている前で、義明はコトの原因を差し出した。 「これを、取りに来たんですよ」 取り出したのは―――。 「……それを、か……? 何でそんなもん……」 義明の手の中の《それ》を見た途端、照弘の声が、僅かに揺れた―――ような気がしたが、義明にはよく分からなかった。 確かに、見ただけでは理由は解からないだろう。苦笑して、義明は少しだけ内容を話すことにする。 あくまでも僅かな部分に限り、である。《闇戦国》に全く関係のない兄には話すことができないこともある―――だがそれより、そもそも彼は、兄を巻き込みたくはないのだ。 「―――《仕事》に使うんですよ。こんなものでも、人の心――まぁ、気持ち程度ですが――には、効果が……うわぁっ!?」 彼が全てを言い終わる前に、横から伸びた腕が彼の身体(からだ)を包み込んだ。その腕が誰のものなのかなど、考えるまでもない。 「……いい年して、弟に懐かないで下さい。みっともないですよ?」 背後から抱きつかれた形で、義明は溜息をつく。呆れた、という感じで言う彼に、背後の兄は笑いながら答える。 「そう言うな。兄が可愛い弟に懐いて何が悪い?」 その声色には完全に揶揄(からかい)が含まれていて――少なくとも義明にはそう感じられて――、彼は仕方無さ気にもうひとつ溜息をつく。 「良いですけどね、別に……」 『良い』と言いながらも、どこかしら不満気に感じられたその一言に、照弘はふと、顔を上げる。 「……どうかしたか?」 「どうもしませんよ。ただ……兄さんは、まだ私を子供扱いしてるんだな、と思っただけです」 「――子供扱い?」 そう言ってまじまじと顔を眺めてみると―――彼の弟は、視線をあらぬ方向に向け、僅かに拗ねているようだった。その表情が―――彼を幼く見せるその表情(かお)が、真実幼かった頃の弟のそれに重なり、照弘は不意に込み上げてくるものを感じた。 「……してないぞ、全然」 そんな声で言っても真実味がないですよ―――義明がそう思う程の軽い声で、兄は言う。肩を少しだけ揺すりながら、照弘は義明の肩に顔を埋める。 「―――まぁ、良いですよ、ホントに……」 それとなく溜息を一つつき、義明は言う。 子供扱いされるのは不本意だが、それがこの兄ならば、多少は仕方がないという気分になる。 何よりも自分を大切にしてくれる兄。そして、本当の自分を解かってくれる、大切な兄―――。 その《敬愛する兄》は、未だ彼の肩で忍び笑いを噛み殺しているが、気にしないことにする。例えここで何かを言ったとしても、いいように揶揄(からかわ)れるだけのような気もするのだ。 ―――僅かに拗ねている義明と、未だ静かに肩を揺らす照弘。そんな2人の間に、いつの間にか沈黙が降りていた。 義明の視線の先に、古い杉の樹木がある。それは樹齢何百年という、かなり古い木だ。昔はあれが相当大きく見えたものだが、今は何てことのない、それなりの大きさに見える―――そんなことを思った彼は、ふと手の中の《それ》に視線を向ける。 そう言えば、これは―――。 「……これって、確か、兄さんが以前法事に使うのを忘れて……」 「―――憶えてるのか?」 背後で照弘が僅かに身じろぐのが分かった。 「憶えてるも何も―――忘れませんよ」 そう言った途端、自分を抱きしめる力が急に強くなった。それに不思議を覚え、義明は僅かに後ろを顧みる。 「どうかしましたか……?」 「―――いや、どうもせんよ……」 そう言いながら、照弘はそっと瞳を閉じる。 ……弟は憶えていた。あのことを。―――否、それはある意味、不思議なことではなく、予想でき得ることでもある。何故ならこの弟は、今も昔も、自分に信頼を寄せてくれている。他の身内の誰よりも、だ。 例えそれが、《兄》に対する《弟》の信頼でありそれ以外の何物でもなくとも、彼が自分を必要としてくれていることに変わりはない。 今は、ただ、それだけで良い―――。そう思う。 「兄さん……?」 いつまでも顔を上げない兄に、義明は不思議そうに声を掛ける。それに答えようとはせず、彼はそのままの体勢で、義明の肩に置いた手を引き寄せた。 その動きにより、僅かだが2人の身体の距離が縮まる。元々、照弘が義明の背後から抱きつく体勢でいるため、本当に僅かの変化でしかない。―――少なくとも、義明にとっては。 何も言おうとしない兄に、弟は何か声を掛けようと口を開くが、それより先に不意に顔を上げた照弘の表情に、その言葉は行き先を無くした。 「ところでお前、今日はいつまでいられるんだ?」 冗談めかしく掛けられる言葉。それは、決して持ち主の感情を見破らせない―――そんな声。まるで、仲の良い兄弟がじゃれ合う時にかけ合うような、僅かに笑いを含んだ言葉。 「……そう、ですね、今日は確か―――」 未だ背中から胸にかけて照弘の腕が回されたままで、彼は自分の予定を思い出す。僅かな邂逅だけで、彼は自分の今日一日のスケジュールを頭の中に描いた。 「―――何、まさかお前、これからすぐに帰る――な〜んてこと言わないだろうなぁ!?」 ぐい、っと。後方に倒れ込むかのように照弘がその腕を引き締めたため、2人の身体はそのまま後ろに倒れ込みそうになる。だが、間一髪、胡座をかいていた照弘の膝のお陰で、背中と畳が仲良くなることはなかった。 言葉程には本気でないことは、照弘の顔を見ていれば解かる。彼は口元に笑みを浮かべ、腕の中の弟を見ているのだ。 「……その《まさか》、みたいですよ、兄さん……」 見上げて見た兄の表情に、義明は心底困ったかのように苦笑する。例えどんな理由があろうとも、この兄が自分を心配してくれているのが解かり、何故だか義明は温かいものが自分の内(なか)を駆け巡るのを感じた。 「何だとぉ!? こいつめ、さては初めっからそのつもりだったな〜!?」 言いつつ、背後から回していた腕の片方だけを、今度は義明の首に回す。必然的に、2人は顔を寄せ合う形になる。 にやり―――と、照弘は頬に悪い笑みを浮かべる。 「さぁ吐け。一体お前はいつまでここにいるんだ〜?」 言葉と共に首を引き寄せる力が強くなり、彼の声は義明の耳元に直接的に響く。 それがくすぐったいのか、彼は僅かに身を捻(ひね)る。僅かにでもその刺激から逃れようとするかのように、義明は少しだけ、照弘から身体(からだ)を離した。 決して《意図的に》ではない、それ。義明にとっては、恐らく何気ない無意識の行動―――だがしかし、それを目にした照弘は、不意に自分の内を過(よぎ)った何かに咄嗟に気づかないふりをした。 寂寥感とも言うべきそれを、だが彼は無視をする。 「……苦しいですよ、兄さん」 くすくすと笑いながら、義明は言う。その声と内容に、照弘は知らずの内に腕に力を込めすぎていたことに気がつく。僅かに苦笑すると、腕にかかる力を心持ち弱める。 だが、前を向いている義明からは、自分の身体(からだ)の後方に位置する照弘のその表情を知ることはできない。 ―――その照弘は、何も言わない。直前まで、揶揄(からか)うような、それでいて面白がっているような声で義明に話し掛けていた彼が、今は何も口にしない。 義明はふと、そんな兄の様子に何かが気にかかり、後ろを振り返ろうとした。先程までの経験から、少しばかり力を込めて身体を捻る。 だが―――。本気で離そうとしていた訳ではないにしろ、僅かばかりの力では離せないであろう強い力で自分を抱き締めていた腕が、すんなりと自分を離したことに、義明は少なからず驚いた。 そして、完全に振り返った彼は、瞬間、その理由に気がついた。 彼を抱きしめていた腕の主は、胡座の両端に位置する膝に左右それぞれの腕をのせ、右手の上には顔を乗せて俯いている。 照弘の表情が見えない上に、下を向いたままの彼から何やら小さく声が聞こえるような気がして、義明はそっと顔を近づける。 すると―――義明の寄せた耳には、「ふぅ〜む……」と言う兄の声が届いた。 「………?………」 その一言のみでは、現状を把握することなどできない。 もっと近づけばはっきり分かるだろうか、と、更に近づいた義明の顔の目の前で、さっ、っと照弘が顔を上げた。 「よぉ〜っし!」 「…………っ!?」 目の前で、がばぁっ、と勢い良く顔を上げた兄に、義明は僅かに眼を見開く。それでも驚いたのは僅かな瞬間で、次の瞬間には、この兄は今度は何を始めたのか……と、苦笑に形づくられた笑みを浮かべて成り行きを見つめる。 「ならば、この心優しい兄さんが、可愛い弟のために玄関まで見送ってやろう!」 言われた言葉の内容に、義明は一瞬きょとん、としてしまうが、すぐに苦笑すると、溜息をつきながらそんな兄に言う。 「……いいですよ、そんなこと。子供じゃあるまいし……」 「何を言う。可愛い弟のためだ、俺は何だってしてやるぞ? ……そうだな、玄関と言わず、お前のマンションまででも良いぞ?」 「――それはそれは、痛み入ります。ですが、玄関までで遠慮させて頂きます」 幾分おちゃらけて照弘は言っているが、この兄は、『やる』と言うからには何事もやり通すことろがある。このままでは、本当にマンションまででも送り届けかねない。 義明にとって、年の離れたこの兄といる時間は心地良くもあるくらいであるため、それはそれで構わないことでもあるのだが、『幾分』どころではなく酒の入った照弘に車を運転させる訳にもいかない。 それに―――その台詞が彼が自分を心配するが故に発せられたものであると解かっている義明は、「遠慮しておきます」と言葉を濁した。兄と同じように、幾分か軽い言葉遣い。 これ以上、この兄に心配をかけたくはない。 今の自分の生活を《闇戦国》から切り離すことは最早不可能で、そのため、この不安定な生活――少なくとも自分を心配してくれる存在(もの)から見ればそれ以外の何物でもないだろう――は変えられるものではない。 ならば。そうであるのならば、せめて、余計な心配をかけないようにしたい―――それが義明の願い。 「そうか……? ならば、早速玄関まで見送ってやろう。―――どうせ、もう行くんだろう……?」 よっこらしょ、と。幾分か年寄りくさい掛け声をかけて照弘が立ち上がる。完全に義明を見下ろす形になった時点でかけられた語尾に、義明ははっと顔を上げた。 「―――兄さん」 気づいていたのか……。 余程表情(かお)に出ていたのだろうか、自分を見上げる弟の顔を、兄は僅かに苦笑しながら眺める。 「お前の顔見てりゃ、解かるさ……」 ―――守れらている。そう感じる瞬間。 以前と同じように、照弘との時間を心地良いと感じる自分に、義明も同じように苦笑する。 さぁ……と、腰を屈めた照弘が手を差し伸べる。その腕に重みが加わった途端、彼は勢いよく引き上げた。 「じゃぁ、行くとするか!」 自分より遅れて立ち上がった弟のその肩を、心持ち強めの力で、ぽんぽんと叩く。そんな彼に、義明は苦笑しながら言った。 「痛いですよ、兄さん……」
何気ない会話。例えばそれは、最近食べた珍しいものの話であったり、最近行った場所についてだったり……そんな、何の変哲もない会話が続く。 決して狭くはないこの橘邸でも、玄関までの道のりが永遠に続く訳ではない。例え2人の歩調がゆっくりとしたものであっても、この時間には必ず終わりが来る。 ……リビングを後にして、程なくして目的地に到着する。これで義明との時間が終わってしまうのか、と、不意に照弘の心に寂しさが過(よ)ぎる。 一段下がった土間に降り、二人は靴を履く。とんとん、と義明が爪先を鳴らす音が、2人だけの玄関に響いた。 がらり、と―――先に立ち上がった照弘がドアを開ける。古い家特有の、鈍い音。 「そろそろ、ここも立て直さんとなぁ……」 そんなことを言う照弘の横を、さわり、と一陣の風が通り過ぎていった。 まだ夏が始まったばかりだというのに、秋を感じさせる、それ。仄(ほの)かに秋の匂いさえ漂わせる風が、開けられたドアの横から流れ入る。 「義明……?」 不意に横を顧みると、義明はいつの間にか立ち上がり、彼の横にいた。何も言わずに佇む彼……。 ―――先に動いたのは義明だった。静かに、そのまま歩き出す。そんな彼の後を、一瞬だけ遅れて照弘が歩く。 10メートル程行ったところだろうか。前触れもなく義明の足が止まった。後ろを行く照弘の足も、つられて動きを止める。 そして―――義明は振り返った。 「それでは、兄さん……」 厳(おごそ)かに別れを告げる弟。そんな彼に、兄は一瞬掛けるべき言葉を探したが、最も適切だと思えるそれが思い当らず、照弘は別のことを口にした。 「お前、たまにはここにも帰って来い。そう、ふらふらしてないで、ゆっくりと、な……。そう慌しくては―――母さんも心配するだろう」 本当は自分が―――何よりも自分が心配しているのだと、彼はそう思ったが、照弘は敢えて口にしない。 言われて、義明ははっとした。そう、彼らの母―――心配性で、兄弟のなかで誰よりもひとつどころに落ち着かない自分を心配する、そんな母の姿を思い出したのだ。 今日は家にいなかったようだが、こんな自分が帰宅していると知ったら、また口煩くも優しく、自分を心配するのだろう。そう思い、義明は苦笑した。 「……ええ、そうですね……」 「お前が普段、どこで何をしてるのかは知らんが……」 不意に口をついた、それ。照弘にすれば、さほど深い意味はなかった言葉―――だから彼は、ふと見た弟の様子に驚いた。 義明は俯いていた。僅かに延びた前髪に隠れて、彼の表情はよく見えない。 「………………」 《普段の生活》―――照弘が何気なく口にした言葉。だがそれは、義明に思いもしない感傷を齎(もたら)していた。 何故ならば、彼のその《普段の生活》には多分に《闇戦国》に関係がするのだ。そして、《闇戦国》のことはこの兄に話すことはできない―――。 何よりも……誰よりも大切な兄。自分を大切にしてくれる、心配してくれるこの兄に、話せないことがあること――秘密にしなければばらばいこと――それが、義明の心を痛める。 義明にとっては、何よりそれが―――辛い。 「―――兄さん」 「………………」 一言だけを呟き、彼は顔を上げた。 心持ち神妙な弟の表情(かお)。照弘はふ、と笑った。 「何て顔してるんだ、義明」 優しい声色。言われて、義明は兄の顔を見遣った。 尊敬する兄にすら決して言うことのできない《闇戦国》のことについて、辛く思う義明。その気持ちを、兄は知らない。そして同時に、照弘の抱(いだ)く想いの存在を―――そのことすらも、義明もまた、知らない―――。 「お前は何も心配しなくて良い。ここはお前の帰るべき家だ。そして、皆、お前を待っている―――皆、な……」 そして―――彼はすっと手を伸ばした。触れる先は義明の髪。 「ったく、お前は前からそうだよなぁ……!」 わしゃわしゃと掻き上げながら、彼は先程の声色より幾分砕けた口調で言う。「ええ!?」と笑う兄に、暫(しば)し驚いた表情を見せた義明だが、すぐに同じように笑うと、またも顔を下げて俯いた。 自然、義明は頭を照弘に預けているような体勢になる。どこから見ても、弟が安心して兄に撫でられているかのような――……。 そんな義明に、照弘は撫でながら、愛しさと言う名の感情が沸き起こるのを感じ、髪を掻き上げる手に僅かに力がこもる。 ……ふと。照弘は『確か前にもこんなことが……』と思い、笑みを深くした。実のところ、『前にも』どころの話ではなく、自分は昔からことある毎(ごと)に、こうして義明の髪を撫でていたのである。 一方、大人しく頭を預けている義明も、何を思ったのか、口元に笑みを刻んでいる。 ――― 一体、どれくらいそうしていたのだろうか。照弘は不意に、自分に向けられる何かに気づいた。《何か》―――だが、それが何であるのか、彼には全く解からない。ただ、こうして弟の髪を撫でている彼の周りに―――正確には自分だけに向けられている、強い《何か》を感じるのだ。 それは―――視線……? ふとそう思い、それまで見つめていた義明の髪から目を離し、前方を見た。そして―――彼は僅かに息を詰めた。 今、照弘と義明のいる庭先からちょうど30メートル程離れている所に、門扉と塀がある。そこに―――正確にはちょうどその門扉の横に、一台の車が停められており、その傍らに一人の男が立っている。 見知らぬ男。だが、照弘は一目で、先程から自分に向けられている《何か》の正体が―――視線の持ち主が、その男であることに気づいた。 男は、照弘が自分の存在に気づいた後も、変わらずに視線を逸らさない。それどころか、より強く向けられるその視線に、照弘は不意に手を止める。 「兄さん……?」 声もなくずっと自分の髪を撫でていた兄の手が止まり、義明は不思議そうに顔を上げた。そっと兄を伺い見ると、彼は義明の肩越しにある《何か》に目を奪われているようだった。 「…………?」 一体、どうしたというのか―――。 照弘の視線を追ってそっと振り返った彼は、そこの見知った顔を見つけ、「ああ……」と笑う。 驚いたのは照弘である。その時―――義明が振り返ったその途端、それまで照弘に注がれていた強い視線が、ふ、と途切れ、柔らかい視線(もの)へと変化したのだ。 男は、まるで照弘の存在を無視したかのような―――そこにいることすら知らないような、そんなことすら感じさせる程に、まるきり異なる視線を義明に向けると、軽く会釈した。 「―――お前の知り合いか……?」 背後で問われるその言葉に、義明はそっと体の向きを変える。もう一度照弘に向き直すと、僅かに笑いながら言った。 「ええ、私の部下、ですよ……仕事上の……」 「……まさか、わざわざ、ここまでお前を迎えに……?」 「一応、来なくて良い、とは言っておいたんですが……」 困ったように、はにかんで答える。 「最近、私が仕事に遅れることが多いので、今回もそうなると困るとでも思ったのでしょう。どうやら、私はあまり信用がないみたいです……」 苦笑しながら言う義明に、照弘は何かを言おうと口を開くが、何故か言葉にならなかった。 「―――そうか、それはいかんな。だが、相当仕事熱心な部下なんだな」 「ええ、彼は優秀な部下です。彼のお陰で、私の仕事はかなり捗(はかど)っていますよ」 彼が言う『仕事熱心』には、わざわざ休日に上司の実家まで迎えに来ることも含まれているようで、それに照弘は苦笑した。だが、弟の言うように『信用されていない』とはどうにも思えなくて、実際には上司として慕われているのだろうと思う。だからこそ、こうして迎えにも来るのだろう。誰だって、信用できない、見捨てた上司の迎えなどしたくはないものだ。 そのことに―――自分の自慢の弟が、良き上司であり良き部下に恵まれていることに、照弘は喜ばしく思う。嬉しい。 どこか、僅かに引っかかるものに気づいてはいたが、彼は敢えてそれに触れようとはしなかった。 「―――ああ、もうこんな時間ですね」 腕時計の示す時間にふと気づいた義明は、言いながら苦笑する。照弘との―――大切な兄との時間が楽しくて、つい長居をしてしまったようだ。そろそろ行かなくてはならない。 「それじゃぁ、これで……」 「ああ―――」 軽く頭を下げ、兄を見た弟は、そっと笑いながら手を上げる照弘に背を向ける。 笑顔で見送った照弘は、義明が数メートル離れた途端、表現し難い感情(もの)が沸き起こったのを感じた。 離れていく背中―――それは、遥か以前、一人遠い何処かを眺める弟を見る度に感じた、近寄り難い雰囲気を彷彿させた。何より―――弟が……義明が、自分の手の届かない何処かに行ってしまいそうな感じすらして、照弘は思わず声を出してしまった。 「……っ……義明……っ!」 その声に、義明はそっと肩越しに振り返る。 静かな面(おもて)―――それが、どうかしたのですか、と問い掛ける。なにぶん、掛けようと思った言葉があって呼び止めた訳ではないため、照弘はどうしたものかと、僅かに戸惑う。 少しだけ肩を落とし、義明に気づかれないよう、そっと溜息を一つついた。そして―――静かに口を開く。 今まで、ずっと彼の心を捉えていたがなかなか口にすることのできなかった、義明への問い―――それが、何故か口をついた。 「―――お前は今……幸せか……?」 その問いに。それとも、彼のその表情に。―――義明は僅かに瞳(め)を瞠(みは)る。 彼はすぐには答えなかった。 ……ふわり、と。秋の匂いさえ感じさせる風が、2人の間を駆け抜けて行く。その風が義明の髪を―――先程まで照弘が撫でていたその柔らかい髪を、そっと撫でて行く。 一際(ひときわ)柔らかい風が彼の頬をも撫でた後、義明は静かに口を開いた。 「―――そうですね……少なくとも、不幸ではないようですよ……」 そうして微(かす)かに微笑むと、再び背を向け、ゆっくりと歩き出す。 再び離れていく背中。だが、今度は照弘は、先程感じた表現し難い感情(もの)に捕らわれることなく、その背中を見送った。 照弘が見送るその目の前で、義明は、門扉の脇に止められた車に乗り込んだ。その前に、車の側にいる男と2〜3何か言葉を交わしていたが、勿論ここまで聞こえることはなく、彼の姿はすぐに車内に消える。 「そう、か―――幸せ…なのか……」 ぽつり、と発せられたその呟きは、彼自身以外の誰にも聞かれることはなかった―――。 お前が幸せに―――それが、照弘の願い。遠い昔、幼い弟を前に願ったそれは、今も尚、ずっと生き続けている。 義明が何より……誰より幸せになれること。それが、照弘の何よりの願い……。 お前は幸せなんだな……? 彼が……照弘の大切な義明が、自分を幸せだと言う理由。何をもって―― 一体、誰の存在をもってして、義明がそう判断しているのか――それを知りたいと思わないでもなかったが、そんなことは大したことではないのかもしれない。 重要なのは、義明が《幸せ》であるということ……。 先程まで見ていた弟の表情を思い出す。楽しそうに話す彼からは、不幸だと感じさせるようなものはなかった。そのことに、ほっと安堵しながら玄関に戻りドアを締めた彼は、ふと、引っかかっていたものに気がついた。 それは―――先程見た、見知らぬ男。確かに照弘にとっては見知らぬ筈の男であるのに、彼はまるで何か強い感情(もの)でも含まれているかのような視線を向けてきたのだ。 そして、義明に向けた視線―――。 『優秀な部下です』―――と、義明は言った。ならば、あの時、男が義明に向けたのは親愛のこもった視線だったのだろう。それは理解できる。だが―――だがそれならば、自分に向けられた《あの視線》の意味は何なのか―――。 そこまで思い至って、彼は最も気にかかったものに気づいた。それは、不意に見た男の表情。そして視線。 義明が車に乗り込む直前に見せた、あの男のそれら―――照弘には、それが《部下》が《上司》に向けるものとは思えなかった。 だが、「ならば何だと言うのか」と問われたならば、明確に答えられる自信はなく、彼自身にもよく解からない状態なのだ。 ふと足を止め、そんなことを考えていた彼は、苦笑しつつ玄関から廊下へと向かう。 義明は幸せだと言った。例え「不幸ではない」という表現だとしても、彼が不幸ではないのならそれで良い。それが、何よりだ―――そう思い、気づきかけた義明の周囲のことには敢えて触れず、苦笑を深くしながら、リビングへと足を向けた―――。
「お帰りまさいませ、直江様……」 静かに掛けられた声に、直江はそっとそちらを見る。見慣れた自分の車の横で、彼の部下が笑顔で迎えていた。 「……まったく、今日は自分で帰るから迎えはいいと言っただろうに―――八海……」 苦笑しながら言う直江に、八海と呼ばれた男は、それでも笑顔で首を振った。 「いいえ、これも私の勤めですから。それに……」 「―――それに?」 珍しく語尾を濁した八海に、直江はおや、という顔で聞き返す。自分の前で、こんな風に言い淀むなんて、八海らしくない。何かあったのだろうか……? 一方、聞き返された八海は、自分の言葉に僅かに驚いていた。そもそも、そう大した理由があって出てしまった言葉ではない。―――少なくとも、直江からすればその筈だ。 そのため、まさか直江に聞き返されるとは思わなかったのだ。 「……いえ、何でもありません……」 僅かに眼を伏せて答える彼に、直江は何故かじっと彼の表情を眺めていたが、「そうか……」と一言だけ言うと、ふ、と視線を外した。 そして、直江のためだけに開けられた助手席のドアの中に、その身を滑らせる。 本来なら、直江は自分自身で運転したかったし、そのつもりであったのだが、八海が一緒ではそうはいかない。いくら直江が「自分で」と言っても、彼がそれを聞き入れたことなど、今だ嘗(かつ)て数える程にしかない。その度に直江は思う―――八海は本当に仕事熱心なのだ、と。 そのため彼は、この勤勉な部下と共にどこかへ行く時は、必ず八海に運転を任せることにしている。それで八海が満足するのなら、それで良い―――そう思うのだ。 ぱたん、と音を立ててドアを閉めると、八海は車の反対側に移動し、運転席に乗り込む。 そっと、横を見遣ると、直江は仄(ほの)かに微笑んでいるようだった。 何か良いことでも―――そう口にしようとして、八海はやめた。そんなことは、考えなくとも想像がつくというものだ。恐らくそれは―――。 「―――あの方はどなたなんですか……?」 つい、口を出てしまった疑問(それ)。八海は自分の失言――少なくとも彼自身にとっては――に気づいて思わずはっとするが、前を向いたままの直江はそんな彼の様子に気づかない。 「ああ……あれは俺の―――いや、この宿体の兄、だ。橘義明の……」 一度横の八海に顔を向けて直江は話すが、すぐに前に向き直って続ける。 「橘照弘。あくまでもこの宿体の兄だが―――俺の大切なひとだ。何より……俺を大切にしてくれる」 そして、微笑む。直(じか)に前から見た訳ではないというのに、八海には予想できてしまうほど晴れやかな笑み。恐らく、たった今まで交わされていた兄弟の会話ややり取りを思い出しているのだろう、直江は口元に笑みを刻んだまま、それ以上は何も口にしない。 ちらり、と。そんな直江の姿を見遣った八海は、視線を前に戻す。 《大切なひと》だ―――と、彼は言った。その照弘(あに)の存在(こと)を、八海は知っていた。 八海の主(あるじ)は、いつか、何かの拍子に――それが何であったのかは定かではないが――その宿体の兄のことを八海に話したことがあった。だが、その時には《ただの兄弟―――しかも、宿体の》としか八海は認識していなかった。何故ならば、その時には直江は―――彼の大切な存在(ひと)は、あまり詳しくは話そうとはしなかったのだ。 彼の主(あるじ)は、元々自分のことを―――例えそれが《家族》と呼ばれる存在(もの)のことであっても、話すことを好まない。そんな彼が、僅かだけとは言え自分のことを話してくれたことに、八海は喜びすら感じてしまった。そのため、その時にはさほど気にはならなかったのだ。 だが、今は―――今、目の前の直江は……。 助手席にいる直江は、尚も話をしている。さほど詳しい話ではないのだろうが、前を向いたまま仄(ほの)かに微笑んでいる彼を見て、八海は以前の彼との違いを、ふと思ってしまう。 彼は、自分の横で八海がそんなことを思っているなど、想像もしていないのだろう。八海自身がそうしているためでもあるが、僅かに胸を過(よ)ぎる何かに、八海は不意に苦笑した。 《何より俺を大切にしてくれる》―――直江はそう言い、微笑んだ。 何より―――? 私の方が、何よりも―――誰よりも、貴方を大切に想っている……。貴方のことだけを、私は……。 それでも、貴方はそれを知らない―――。 ……告げてしまっても良いのだろうか。この想いを……この、焦がれるような感情(おもい)を……。 そんなことを思いながら、彼はもう一度横に目を向ける。直江は未(いま)だに何か話し続けていたが、八海の耳には届かなかった。彼は自分の想いに捕らわれ、聞こうにも直江の声が頭に入らない。 今まで、こんなことはなかった。彼にとって、直江の―――主(あるじ)の声は、何よりも重要で、そして無意識の内にも八海の耳に届いていた。 彼は貴方に――……。 ふ、と。直江がこちらを見遣る。今まで前を見ていた彼が、前触れもなく八海に声を掛けた。 「―――どうかしたのか……?」 自分が話していることに対して、何の反応も返さない八海――少なくとも彼はそう思った――に、何かあったのかとでも思ったのだろう、幾らか不思議そうな表情で八海を見ている。 この時になって、彼は自分が何も返答していないことに気づいた。心の中では―――心情では、直江の言葉に掻き乱されて想いが募(つの)っているのだが、なにぶん、それは直江には告げていないのだ。 「……いいえ、何でもありません」 そっと、そう答えると、彼は僅かに納得のいかないという表情を見せたが、それでも何も言わず、ただ静かに八海の顔を見つめる。 直江には何の意図もないだろう、その視線―――だが、八海には何故か胸を苦しくさせるものだった。常ならば、何を差し置いてでも向けて欲しいと願う彼の視線が、自分に向いているというのに、八海は表現し難い感情に苛(さいな)まれていた。 ……理由は解かっている。 先程垣間見た、兄弟の逢瀬―――そして、直江の視線の先にいた存在(もの)……。 今彼自身に向いている視線(もの)と大して変わらないものが、彼の言う《大切な存在》に向けられていた。そして―――直江もまた、意味のある視線を受けていた。 直江に―――八海の大切な存在(ひと)に向けられる照弘の視線の持つ意味に、八海は気づいていた。彼らの、じゃれあいともととれる一連の逢瀬を垣間見た途端、それは理解できた。 照弘の視線(それ)は、決して《兄》が《弟》に向けるそれではない。兄弟の間に存在する親愛の情―――それ以上の感情(もの)の名を、八海は知っている。 気づいてしまった―――気づきたくはなかったそれに、八海は言い様のない想いに揺さ振られる。 兄の、弟へ向けられた感情―――八海は、一目で、それが自分と同じ感情(もの)であることを理解したのだ。 実の弟である義明(なおえ)に対して親愛以上の感情(おもい)を向けるあの照弘(あに)と、想ってはいけない存在(ひと)である直江に対して愛情以外の何物でもない感情(おもい)を抱く自分―――果たして、どちらがより《禁忌》に近いのか……。 ふと、そんなことを思った彼は、自嘲気味に笑みを浮かべる。 直江の、《彼》に向けられる感情は、決して兄のそれとは同じものではない。そのことを、恐らくあの兄も解かっているのだろう。漠然と八海はそう思った。或いはそれは、今の自分とて同じ立場であるが故にそう思うのかもしれない。 そして―――。 ただ、直江が幸せであればいい、と。彼の幸せを第一に願う……そんな照弘の想いが、見ているだけで理解できた。何故ならば彼も―――八海も、直江の幸せを願わずにはいられないのだ。 直江が幸せであるのか否か、それは誰にも分からない。彼本人にしか解からないことではあるが、少なくとも今は、直江はこうして微笑んでいる。こうして微笑を向けてくれる―――それだけで良い。 八海はふと、目の前で自分を見つめる直江を見て、そう思った。 貴方の幸せ―――それが私の願い。 どうか、いつまでもそうして微笑んでいて欲しい……それが八海の想い。 例え、心情のどこかで――心の一片(かたすみ)で、別の何かを願う自分がいたとしても――否、そんな自分の存在に八海自身が気づいていようとも、直江の幸せが八海にとっての願いだった。 そう、例え今、直江がこうして向けてくれている視線が、その意味が、兄へと向けられていたそれと同じものであったとしても、八海はそれでも良い、と思う。 今はただ、こうして貴方が―――。 「―――どちらから向かわれますか?」 「……ん? そうだ、な……では、先日見た3件を見なおすとするか」 突然言葉をかけた八海に、直江は僅かに驚いたようだったが、すぐに今回の目的を思い出したのか、苦笑しながら言う。キーを指し込み、準備をする八海に向かって、彼は静かに最初の目的地を告げた。 「承知致しました」 八海が応えるのを確認し、彼はゆっくりとリアシートにその身を沈める。静かに、もしかしたら彼自身も気づいていないのかもしれない程小さな溜息を一つついて、直江はそっと瞳(め)を閉じる。 ……ゆるやかな振動。そして、僅かなエンジン音が続き、直江の車が動き出す。静かではあるが、確かに速度を増す車内で、開けられた窓から流れ込む風に、直江は気持ち良さげに眼(め)を細めた。 まだ夏だというのに、やけに涼しげだな……。 徐々に強くなっていくその風に揺れる前髪を、どこか楽しげに抑えながら、直江はふと、そんなことを思った――……。 |
The End ...
■ コメントという名の言い訳 ■ |
いや〜、長い! なんなんでしょうね、この長さは……(苦笑)。全くもって、予想外。 このキリリク小説、どこまでも駅馬の予想外なことが一杯です(汗)。何がどうなのか、は、順に説明します〜(苦笑)。
さて。如何なもんでしたでしょうか、このキリリク小説★ 一応、キリリクってことで、橘兄×直江です―――が、どんなもんでしょう……(どきどき)。 駅馬、最初っから、「駅馬に書けるの……?(遠い目)」って感じだったんですが、書いてみたら、これがまた、びっくり! どんどんどんどん、話ができてっちゃったんですよぉ!(苦笑) 時間は、相変わらず全くないんですが、話が膨らんじゃって、書ける時には凄い勢いで進んでました……(笑)。こんなこと、滅多にないですよ(苦笑)。 照弘がね〜、すっごい、直江(義明だけど/笑)にラヴラヴなんですぅ〜〜っ(照)。駅馬、「あんたは一体……(呆)」って思いましたもん(←ダメじゃん!)。こんなん、予想外です! 駅馬、当初は、絶対にそう長くはない話になるだろうと思ってたですよ。……つ〜か、長くは書けないかな〜、って。だって、照弘×義明って初めてだもん(苦笑)。 ところがどっこい。何なんでしょうね、この長さは……(苦笑)。スクロール見て下さいよぉ(苦笑)。今まで、小説アップする度に駅馬、「未だかつてない長さに」とか何とか言ってましたが、今回こそは、マジです!こんな長さ、駅馬、初めてです!(焦) 読むのはそう時間かからないですが、書くとなると、これまた大変で……(苦笑)。 だって、これまでの中で最長なのは《君は光、僕は影/完結篇》なんですが、この《君は僕の宝物》は、実にそれの2倍以上なんですよ、これがまた!! 一行の字数も全然多いですし……(苦笑)。容量そのものも、2倍以上……。 あまりの長さに、いっそ前後篇に分けようか!、とも思ったんですが、キリリク小説で分けるのってどうかと思い直したり……(苦笑)。 ――いや、いつか別のでは分けるかもしれませんけど……(ぼそっ)。それに、もう分けてるのもあるし……(死)。
あああ、駅馬、遂に書いちゃったですよぉ、高校生・直江♪(笑) ゲッターであるまえださんから、橘兄×直江って聞いた時、「それじゃぁ、直江は高校生だな♪」って思ってはいたんですが、きっと駅馬には無理だろうと。……思ってたんですがぁ(苦笑)。 書いちゃった……。 ―――どないですか?(どきどき) こんなんで、まえださん、ご満足頂けますかしら……?(はらはら) ホントはきっと、えっちをご所望だったんでしょうが、駅馬には無理でした……あははは〜(渇いた笑い)。だってほら、駅馬って純情乙女だから〜♪(死になさい) って言うか、ですね?(上目使い) ウチの照弘には無理――かも、しれませんです(苦笑)。……多分ですけどね。かなりの義明ラヴだから〜★ ……いや、「だから何?」って言われちゃ困っちゃいますが……(汗)。
あと、あと。離れの軒下で、じゃれつく(?)シーン、あるじゃないですか〜。 駅馬、実はそこをメインにする予定だったんです。マジに。な〜の〜に〜! 普通の義明(? つまり成人してる義明/笑)とのふれあい(?)で、照弘があんまりにもラヴするもんで、そこの方が長くなっちゃったんですよぉ(苦笑)。んで、あえなくそっちをメインに(苦笑)。……まぁ、どっちでも良いんですが(←なら言うな)。
この話、橘兄×直江って言うより、どっちかって言うと橘兄→直江って感じですか??(汗) ウチの照弘には、こ以上はやっぱ無理でした……(残念)。ホント、橘兄→直江って感じ。 でも。駅馬は、書いてて「照弘×義明(←これじゃ橘兄→直江だけど)も良いかも……v」って思っちゃいました〜♪(笑) この2人でえっち――ってのも、何かイイかも……な〜んて思っちゃったなんて、口が裂けても言えませんよ〜ん♪(←言うてるがな)
そしてそして〜!! 最大のでっかい「これは予想外だ!」は―――。 この話を最後まで読んでくれた方は、もうご承知でしょうが、彼の出演です。そう、彼。 駅馬、当初は照弘と直江だけが出て来る話のつもりだったんですよぉ? マジで!(焦) んで、ラストは、予定では、義明が去っていくのを見ながら照弘が感傷(?)にひたって、弟への想いが募って、そんで終わり―――となるハズだったんですぅ〜〜〜!(そんな単純な終わりもどうかと思うが/汗) ところが。ところがですね? 「さぁ、あとちょっとで終わる〜♪」って駅馬がラストシーン書いてたら、突然、予告もなく背後からキーボードを打つ手手を掴まれまして。「何!?」って驚いて振り返ってみると―――凄い形相で駅馬を睨みつける、男が一人……。 そうして、駅馬は背後から脅されながら、ラストを変更したという…恐ろしい話です……(ほろり)。 ―――ホント〜に、駅馬は、この話は純粋な照弘×義明(←ってどんなじゃ)の予定だったんンですよぉ! ホントに!(焦) なのになのに、直江と一緒にいたいという一心でしゃしゃり出てきた輩がいるもんで、何ともワケ解からんものに……(泣)。
こんな、へんちくりん(?)な小説ですが、少しでも楽しんで頂けたら、駅馬は幸せですv そしてそして! 感想下さい! 感想、感想〜〜〜〜〜っ♪(←駅馬は感想魔かい/死)。TOPのメルフォやBBSで送れますんでっ。 ホント、死ぬ程忙しい中で頑張って書いたものなので、感想を知りたいんです〜!(切実) それでなくとも、駅馬のとこの彼らは異色なので、皆様の反応が気になるんですよ〜!(あせあせ) だってほら、駅馬って究極の小心者だし……★(苦笑)
ってなワケで―――次の小説でお逢いしましょ〜〜〜♪
2000,9,某日 駅馬 如v |