囲 碁 雑 感

 

碁 石 交 友 記

 

静岡市の西部公民館に囲碁同好会が誕生して今年で十年になる。生みの親は原光男氏(静岡市役所)、四十九年に初めて囲碁の初心者講座を開設された、当時の館長である。これを機に翌年には南部公民館、五十六年には東部公民館に相次いで囲碁講座が開設された。西部、南部、東部公民館の囲碁同好会はこの講座の卒業生を中心に発足したものである。その後南部公民館は後藤勝六段(静岡大)にご指導頂いている。西部公民館も築地克彦六段(製材業)においで願っている。

同好会は今では地域のコミニュケーションの場としての役割を立派に果たせるまでになった。三公民館を合わせた会員数は百六十人、有段者も二十人を超えた。ここでは西部公民館囲碁同好会に焦点を絞って紹介してみる。

 

囲碁講座の卒業生といっても碁石を握ったこともない初心者が半年の講座を終了したときの棋力は、強い人で六・七級、中にはまだ満足に打てない人もいる。指導は技術よりもマナーに重点をおいた。気持ちよく打ち、根気よく上達してほしいと願ったからである。

 

初の対外試合は丸子の鉄工団地の囲碁クラブとの団体戦。他に日本棋院の見学、横山孝一先生(プロ六段)をお招きしての一泊旅行などが印象に残っている。公民館相互の合同囲碁大会にも毎年参加している。今夏の公民館祭囲碁大会には八木幹夫県アマ名人(県庁)においで頂き、青島弘吉二段(工務店)との記念指導後も打って頂いた。この碁は築地六段と二人で開発したオリジナルな囲碁ソフトを使い、パソコンで記録した。

 

同好会の運営は五人の幹事が毎年交代で選ばれて行われている。今年の会長は石上明仁四級(塗装業)。打碁の速さでは他を寄せ付けない。例会は棋聖戦、名人戦、本因坊戦の星取りの形で進められている。棋戦の名前だけはプロ並みであるが、だれが見ていようが平気でひどい手を打つ伝統は今も大切に受け継がれている。毎週、和やかである。

 

村越省三三段は同好会きっての実力者。実戦タイプで力が強い。最高齢者は七十六歳の青井東太郎三級。石を追いかける迫力には年齢を感じさせない。池ヶ谷正博二段(静岡金属工業)、桜井光雄初段(県警)、木野泰志一級(中部電力)、興津吉郎七級(市川土木)は講座の代一期生。同好会の基礎を築いた功労者である。

 

碁はちょっとしたヒントやきっかけで石立ちが変わる。このときが棋力向上のチャンスである。山本敏行初段(県庁)、梶山浩祠一級は今がその時機で上達が著しい。本間康一六級(木箱製造)も今春の市民囲碁大会で全勝し、自信をつけてきた。

 

数少ない女性の一番手は栗田文江四級(県立東高)。打ち終わった碁を検討する姿勢には見習うべきものがある。長倉芳郎初段、さかえ九級ご夫妻は唯一のおしどり会員。みんなを羨ましがらせている。小林正雄一級(食品卸業)は碁の内容から初段が近い。低級者の面倒見の良さには頭が下がる。

 

西部、南部、東部公民館のほかに中央公民館、長田公民館にも独自の同好会がある。五公民館の同好会による初の合同囲碁大会も近く予定されている。新設成った北部公民館でも今秋から囲碁講座が開設される。

 

近年の囲碁の普及ぶりは著しい。囲碁というゲームの中に日本人が忘れかけている何かがあるのだろうか。囲碁の社会的地位が向上し、囲碁人口が増えるということは、碁打ちにとって嬉しい限りである.

 

(昭和59年9月23日 静岡新聞 掲載)

 

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