岡崎京子「セカンド・バ−ジン」

双葉社・ACTION COMICS(1986年11月)


吉野樹美子は、カリナ(17)とセリナ(11)の二人
の娘の母親、お花の先生をして生活している34歳の未亡人。
母子家庭におけるほのぼのとした母娘の愛情を、日常の多愛
のない出来事の中に描いている。フェリ−おじさんという、以
前は大企業のエリート社員だったらしいが、今はなぜか土木作
業員をしている謎めいた好人物の男を登場させ、未亡人たる母
親がほのかな恋心を抱くのを娘が知って、何かと気を使うとい
う荒筋で、母子家庭での母親の子供たちに対する愛情や、若き
未亡人たる母親に対する娘たちの微妙な感情がうまく描かれて
いる。
 作者の二作目の作品らしいが、若くして才能を感じさせる絵
と内容である。



岡崎京子「テイク・イット・イージー」

スコラ:コミックバーガー(86年11月ー87年3月連載)


 沢村弥七郎は母と祖父と妹の四人暮らしで、目下浪人中。
幼友達の同級生たち、千代子やすでに大学に通っている真吾に、
同じ浪人中のトモジなどとの交流の中に、不安定な青春の一時期
の若者たちの揺れ動く心の葛藤をユーモラスに描く。
主人公弥七郎の家は、祖父が永年、ソバ屋をやっているが、浪
人中の弥七郎は店の手伝いをするわけでもなく、後を継ぐ意志も
なく、祖父を「ジジー」などと呼び、祖父も孫のことを乱暴な言
葉で叱りつけたりする。そんな一見世代の対立に見えるやり取り
の中に、実は暖かい人間関係が築かれていく。最後は、主人公が
ソバ屋を継ぐ決心をするという、今流の若者が描かれる。

岡崎京子の絵は、細部よりも全体のイメージを大切にする典型的なイメージ画で
ある。女性マンガ家の殆どがイメージ画を描くのは、何とも不思議である。
これは、恐らく現在活躍している女性マンガ家たちの模範となった女流マンガ家
の草分けたち、例えば池田理代子とか山岸涼子といった人たちが、イメージ画を描
いていたからではないかと考えられる。
しかしそれにしても、女性マンガ家で「劇画」の細密描法の人が殆どいないのは、
どうしたわけなのか。



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