昨年十月から十一月にかけてヨーロッパ六カ国を廻って、日本のマンガとアニメがどの程度
普及しているかを調査してきた。国によっていくらか違いはあるものの、予想以上に日本のマ
ンガ・アニメ文化がヨーロッパに浸透していることがわかった。オランダ、スイスではそれほ
どでもないが、ドイツ、フランス、スペイン、イギリスではすでに相当程度社会に認知されて
いる。
大都市から地方都市に至るまで、大きな書店には必ずマンガのコーナーがあり、翻訳された
日本マンガを若者たちが熱心に立ち読みをしたり、あるいは座り込んでマンガ本を読みふけって
いる姿を目にする。因みにジェトロの統計によると、ドイツでは毎年300近いタイトルのマン
ガが翻訳出版されているという。ベルリンの日独センターでは、ヨーロッパ中の日本文化研究者
たちが集まって、「CoolJapan」と銘打ってシンポジュウムを開催していたし、ミュン
ヘン大学の日本語学科の40人の大学生に直接私がアンケート調査をした結果でも、80パーセ
ントの学生たちが多くのマンガを読み、宮崎アニメの人気が高いことが立証された。日本語学科
の学生だから、という点を差し引いても、彼らの多くが幼い頃から体験してきたことであるから、
他の一般学生の間でもかなりのパーセントの学生たちが同じような体験を持っていると推察でき
る。
またパリのユーラジアムという専門学校ではマンガ家になりたいというフランス人が多く学ん
でいた。スペインのマドリードには、マンガ専門の書店があちこちにあり、マンガの描き方とい
った本まで並んでいる。ロンドンには、大英博物館の近くにカーツーン博物館まである。アニメ
に関しては、世界的に評価の高い劇場用、またはビデオ用アニメ作品としての宮崎アニメ作品を
除けば、主に子供向けの時間帯にテレビで多くの日本アニメが放送されている。ヨーロッパでは
テレビ放送のチャンネルが多い(20から30チャンネルある)ので、日本関連の番組を頻繁に
放送するチャンネルがあっても不思議ではない。
こうしたマンガ・アニメ文化の普及に伴って、マンガ・アニメファンの集まりやコスプレ大会
などの各種イベントも各地で催されているし、それぞれの国で日本マンガを学び、すでにプロの
マンガ家として活躍する者も出ている。パリのルーブル美術館近くにヨーロッパ初のマンガ喫茶
が出来てすでに七年が経つ。(余談ながら、このマンガ喫茶の経営者は偶然ながら、沼津市出身
の野村さんという人である。)こうした現状をみると、日本人はマンガ・アニメを日本が世界に
誇る文化・文芸としてもっともっと高く評価すべきだということを痛感する。
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