内田春菊「南くんの恋人」

青林堂(87年7月、ガロ86年10月号〜87年6月号連載)
作者27歳の時の作品


 ある日突然、ちよみは南君の胸のポケットに
入るような小人になってしまった。
南くんが自分の部屋でちよみの世話をすることに
なったのだが、何かと気を使う。
トイレに食事
に風呂と男が女の世話をするという逆転の発想が面
白い。
 とはいっても、自分の掌で女を思い通りに扱うと
いう男なら誰でも持っている願望を叶えているよう
にも思われる。小人の姿になることで、すべてを男
の責任にして、男の生き様を試している女のしたた
かな生き方は、確かに肩肘はった女権拡張論の後の
世代の柔軟な女の発想とも言える。
 昔の一寸法師は、手柄をたてて元の姿に戻って、ハッピ−エンドであったが、
それでは面白くないと、ちよみは交通事故で死んでしまう。現代の寓話には、や
はり文明の影が射していると言うべきか。


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