「あいつからは逃げられない・・・
あいつはどこにでもいるんだ・・・
「ないのに・・・
「世界のはじめにあいつはいた
人間もまだいない 大昔から・・・」(P71)
説得力不足ながら、深い思考を秘めた秀作。「存在の深淵」というと、フランス
の哲学者、サルトル「嘔吐」を思い出すのだが、どうやら作者の脳裏にはそれが
あったのではないか。ただ、哲学的な存在論をマンガで表現することは極めて困難
であると思われる。このマンガもSFと銘打っているが、SFとしてはあまりにも
中途半端であり、リアリテイがありすぎる。作者の深い思想性の片鱗は、このマンガ
からも十分に窺い知ることができる。