野中英次「魁!!クロマティ高校」
―マンガで漫才を読むー
短編であるギャグマンガには、ストーリーマンガとはまた違った面白さがあり、その面白さ
の大半はアイデアにある。ギャグマンガはそのつど起承転結をもち、読者を笑わせるいわゆる
「オチ」をつけることに作者は苦心する。「ギャグマンガにはパワーが必要だ」と言ったのは、
ギャグマンガの名作「がきデカ」を描いた山上たつひこだったが、それは永年にわたって面白
いギャクマンガを描き続けることの大変さを言ったものであった。
ここに紹介する野中英次の「魁!!クロマティ高校」も、中・高校生から大学生に至るまで
隠れた人気をもつ、連載足掛け四年になるギャグマンガである。テレビアニメにもなっている
し、最近ゲームにもなっているようなのでもはや「隠れた人気」ではないのかも知れないが・
・。このマンガの主な面白さは、その一見どぎついが意外に「まともな」会話と「不良」を標
榜するキャラクターとのアンバランスからくるものである。「日本一ワルの巣窟」を舞台にど
うしようもない不良グループという触れ込みながら、暴力シーンは皆無に近く、漫才のような
会話のやり取りで読者を惹きつける構成には感心する。漫才にボケと突っ込みの役回りがある
ように、この漫才ギャグマンガでも主人公一人がまじめな突っ込み役で、あとの不良たちや意
味不明のゴリラやレスラーはボケ役であり、ご愛嬌である。主人公を除いて多くの登場人物た
ちがいかにも粗暴で恐ろしい形相の顔に描かれるが、それは顔だけのことで、話題になること
は意外に小市民的な出来事である。時には親子の情愛やささやかな幸せの見つけ方であったり、
乗り物に滅法弱い番長やラジオ番組のお笑い小話の投書マニア、あるいは散々吟味してパソコ
ンを買った直後にそのパソコンが半額に値下げされてしまった話などであったりと様々である。
それにしても、最近マンガの世界でも、活字の多いマンガが敬遠されがちであるのに、これ
は活字の多いマンガである。これが若者たちに面白く読まれるとすれば、それは作者の感性と
力量のなせる業である。しかしこのギャグマンガを今後も継続させるためには、さらに作者に
批判精神と反骨精神が求められるのではないかと思う。
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