kon.1 パブロ・デ・サラサーテ 「ツィゴイネルワイゼン」
                              Pablo de Sarasate 「Zigeunerweisen」op.20


スペインの作曲家、サラサーテが1878年に作曲したヴァイオリン曲。
ツィゴイネルワイゼンとは、「ジプシーの歌」と言う様な意味。「ツィゴイネル」が

英語のジプシーに当たる。今「ジプシー」は差別用語になるので使われないらしいが、ツィゴイネルだと問題ないのだろうか?普通そのまま表記されてる。

サラサーテは、世界の3大ヴァイオリニスト(他はパガニーニ、ヴィエニアフスキ)の一人らしい。誰が決めたのか知らないけれども、兎に角それくらい凄い

ヴァイオリニストだった為、自分の為に書いたヴァイオリン曲も当然高度なテクニックを必要とするものばかり。尤もわたしはヴァイオリンは弾けないので

どのくらい難しいのかを体感することは出来ないのだが。当然自分が作った曲を最初に弾くのはサラサーテ自身になる訳だから、自分のテクニックを

見せびらかせるような曲になるのも当然です。

曲は、ハンガリーのジプシー音楽や民謡を基にして、
チャールダーシュ(チャルダッシュとかチャールダッシュとかチャルダーシュとかとも言う)舞曲形式

(前半がゆっくりとしたテンポのラッサン、後半がテンポの速いフリスカ)で書かれている。曲としては3つのパートに分かれている。下記参照。

    *ツィゴイネルは、ツィゴイナー、チゴイナー、チゴイネルなどと表記されることもある。また、「ツィガーヌ」もツィゴイネルと同じ意味だって。


  1 モデラート moderato  この始まりの旋律は有名。志村けんもコントで使ってたからそれで
 覚えてる友人が何人かいた。みんな見てたんだね。
 そういう人にとっては、この曲はお笑いの曲という印象が強く、真面目
 に聞く曲ではないらしい。
 悲劇的な感じ。曲調においても、この志村けんの影響に於いても。
 ラッサン
  2 レント Lento  1のモデラートと2のレントで第1部。引き続き悲壮感漂う感じ。
  3 ウン ポコ・ピウ レント
     Un poco-piu lent
 第2部。ヴァイオリンに弱音機を付けて演奏する。ここまでがラッサン。
  4 アレグロ モルト ヴィヴァーチェ
      
Allegro molto vivace
 第3部。ここに出てくる単音のピチカート(バックの音が少し小さくなり、
 ヴァイオリンがたらららランタンタンタラララララ・・・とやるところ)は、
 全部左手(弦を押さえてるほうの手)で弾いてるので難しいんだって。
 弦を押さえながら空いてる指で弾くんだから凄い!
 急速、難技巧の連続で大盛り上がりして終了する。
 フリスカ


原曲はフルオーケストラをバックに、ヴァイオリンソロ1名で演奏されるが、リサイタルなどでヴァイオリン1名+ピアノ伴奏1名という組み合わせでやることの

ほうが多いそうだ。でもオケバージョンのほうが雰囲気が出て好きだな、わたしは。

基本的に何でも分かり易いものが好きなわたしは、単純に綺麗とか楽しいとか凄いとか恰好良いとか思えればなかなか満足なお手軽な女です。分かり易い

ということは、わたしの想像妄想を広げる大事な要素で、そういうものにはもの凄く想像の世界が展開されていく。ジプシー音楽を含む、世界の民族音楽って、

分かり易くて想像し易くて大好き。民俗音楽やツィゴイネルワイゼンのような通俗的、または音楽の教科書に載ってるような有名曲を「初心者向き」と言う様な

ことを言って馬鹿にする人もいるが、わたしは大好きだー!わたしは死ぬまで好きでいるから!わたしだけはずっと味方だから!と励ましたい。わたしが応援

するからもっとがんばって欲しい。実際、こういう曲って、聞いててワクワクしないですか?とっても楽しくて好きなんだけどな。それこそ踊りだしたくなるような。




  イヴリー・ギトリス (練木 繁夫:ピアノ)
     

ピアノ伴奏バージョン。この人は、他の曲もそうだが曲に酔うというより自分の演奏に酔うタイプの様に感じられる。テンポは遅め。

難技巧を楽々こなす、という感じでは無く、テンポを揺らしまくって弾いている。凄く好きな演奏な訳では無いのだけれど、ジプシーは

貴族では無いのだし、こういう演奏が正しいのかも、と思っている。見た目も含めて酔っ払いの様。

同じCDには、ヴァイオリンの小曲がたくさん入ってるんだけど、どれもテンポは好き勝手です。楽しそうだけどね!


 ヤッシャ・ハイフェッツ (ウィリアム・スタインバーグ指揮、RCAビクター交響楽団)

この人の演奏について、「技術だけでなく、この節回しも、聴き手に与えるスポーツ的会館も、誰も真似が出来なかった。『ツィゴイネル

ワイゼン』は作曲者の自作自演よりも巧い、と言われた」と、解説にも書かれているのだが、本当にそうだと思う。特に、スポーツ的快感

というのはまさにその通りで、第3部は思わず息が止まってしまう。この、「スポーツ的快感」ということに関しては、ハイフェッツの演奏が

ダントツ。曲が終わってから、なんてカッコいいんだ!わたしもヴァイオリンが弾ければよかったのにー。と毎回思う。

テンポも速いし、例のピチカート(*1)の部分も凄く自然で、熱狂度、踊り狂う度は高い。

ギトリスの演奏は、聴いててイメージするのはギトリスが演奏している姿。実際には見たこと無いけどさ。ハイフェッツの場合は、イメージ

するのはジプシー達の様子。こっちも実際は見たこと無いけども。ダンス心を刺激するのは断然ハイフェッツ版。



 姜 建華・二胡  遠藤郁子・ピアノ

ツィゴイネルワイゼンは、やはり演奏家にとっても魅力的な曲なようだ。なにしろ凄いところを見せられるのだからね。

その為かオリジナルはヴァイオリン曲だけれども、そのヴァイオリン部分を他の楽器で演奏しようと試みる人たちも出てくる。

わたしが持っているのは二胡ヴァージョン。二胡でツィゴイネルワイゼンを弾いてる人はこの人だけではなかったと思う。

みんなチャレンジャーだ。

二胡というのは当然弦は2本だから、ヴァイオリンで弾くよりも難しいのではないかと思うのだがどうだろうか。そのせいかどうか

分からないけど、かなりテンポが遅めで、スポーツ的快感からは程遠い感じ。ジプシー感は無い。

けれども、胡弓で演奏することによって、なんか儚い脆い感じがする。




わたしはツィゴイネルワイゼンを生で聞いたことは無いのですが、以前「徹子の部屋」に日本人の男性ヴァイオリニスト(名前忘れた)がゲストで来た時に

その人が徹子の前でツィゴイネルワイゼンを演奏しました(ピアノ伴奏で)。ツィゴイネルワイゼンは、演奏する姿も興味深い。ここでこんな動きをしてたのか〜

という驚きの発見がいくつもあった記憶がある。その人の演奏も凄く良かったと思う。





*1 ピチカート ・・・ピチカートというのは、弦楽器の演奏方法の一つで、弦を弾(はじ)くことです。主には、右手(弓を持っているほうの手)で弦を

              摘まんで弾く。その場合、ピチカート部分が長く続く時は弓を膝の上なりに置いて右手を空にして摘まみますが、1音、2音だったり
     
              その前後にピチカートの無い演奏をしている時などで膝に置く時間が無い時には、弓を持ったまま弾きます。いそがしい!

              ツィゴイネルワイゼンの場合、右手は普通にメロディーを(弓で)弾いているところに、左手で合間にピチカートを入れている。

              と字で見るとそんなに難しくなさそうだけれども、左手はヴァイオリンの首をつかんでいる訳だし、右手のメロディーの為に弦も

              押さえなきゃいけないし、その隙を見て弦を弾くんだからやっぱり難しいのだろう。右手のピチカートは普通親指と人差し指でつまむ

              のだが、左手の場合は開いてる指で掌側から指先側に引っかくようにして弾く。手が攣りそう!胡弓バージョンの演奏も見てみたい。
    
              どうやってるんだろうか。


 *2 ヴィルトゥオーソ・・・  ラテン語のVirtus(ヴィルトゥス)から来たイタリア語。本来は芸や道徳に、優れた人を指す言葉だったが、今では、
                
                    特に音楽の世界で、技巧の優れた演奏家に対して使う。

                    本来は、品性もあって、真面目で、技術もあって、正確で、という音楽家をヴィルトゥオーソと言うのだそうだが、
 
                    なんかの本にも書いてあったが(何だか忘れちゃった)、真面目で品性もあって、というよりも、練習なんてしない(ように見える)

                    のに難しい曲を弾きこなし、悪い噂もちらほらあったり、時には楽譜等も無視してみたり、性格的に何か問題があったり、なのに
 
                    技術はもの凄い!というような人のほうがヴィルトゥオーソのイメージに合う気がする。悪魔と契約して技術を買っているようなね。

                    パガニーニやリストなどは、そういうイメージとも合うが、世間的にもヴィルトゥオーソと認知されている感じで良いですね。





  サラサーテについて


1844年 3月10日 パンプロナ 〜 1908年 9月20日 ビアリツ

スペインの作曲家、ヴァイオリン奏者。

サラサーテの父親は軍楽隊員だった。

5歳からヴァイオリンを弾き、10歳演奏会を行う。12歳でスペイン王妃に招かれ演奏し、下賜金を与えられてパリ国立音楽院に留学する。

音楽院でヴァイオリンや作曲を学び、1861年にスペインに帰国。

後にはパリを本拠地に移し、世界的ヴィルトゥオーソ(*2)として、半世紀近く演奏活動をおこなった。


サラサーテの演奏技術は相当のものだったということで、サン=サーンス、ブルック、ラロなどがサラサーテにヴァイオリン協奏曲を献呈している。

作曲家としては、スペインの民族色を生かし、その上旋律美・技巧的効果に富んだ商品を多く残した。