今では専ら、ピアノ伴奏のヴァイオリン曲として演奏されることが多いが、本来は、「タイス」というアナトール・フランスの小説が原作の、
全3幕のオペラの中の1曲。正確には、「タイスの瞑想曲」というタイトルではなく「間奏曲」なのだが、この曲は単独で有名なため、専ら「タイスの瞑想曲と呼ばれる。
「タイス」とは・・・
舞台はアフリカのナイル河畔。贅沢三昧で、享楽的な生活を送っていたアレクサンドリアの舞姫タイスは、次第に今の生活に飽き始める。
より刺激を求めて堕落して行くタイスを、聖僧パフナチウスは、何とか救おうと説得する。そんなパフナチウスに次第に心惹かれていっているにも関わらず、
ついつい僧を誘惑してみたりしてしまうタイス。
しかし、僧の熱心な説得に、ついに改心したタイスは、家を捨て修道院に入る。ところが、説得しているうちに、魅力的なタイスに夢中になってしまった
パフナチウスは、タイスのことが忘れられずにいた。とうとう修道院に押しかけて行ってみるのだが、そこでタイスは瀕死の状態にあった。
そんなタイスに愛を誓うパフナチウスを見ながら、タイスは昇天する。
というストーリー。
エンディングに関しては、「僧はタイスへの情欲にかられて地獄に堕ちる」という記述もあるらしい。
また、僧の名前に関しても、「アタナエル」という表記もある。オペラと原作の違いか?ちょっと未確認。すみません。
「タイスの瞑想曲」は、オペラ「タイス」の第2幕第1場と第2場の間に演奏される間奏曲。
アンダンテ・レリジオーソ ニ長調 4/4拍子 レリジオーソは敬虔なという意味。
改心を迫るパフナチウスが、タイスの決心が付くまで外で待っている、と告げた後に幕が降り、その間に演奏されるのが「タイスの瞑想曲」なのだ。
間奏曲で、幕はしまっているものの、ストーリー的には、「タイスが瞑想して、今までの人生を振り返る」というシーンの曲になる。パフナチウスに惹かれて
行く自分にまだ迷いがあり、その心の揺れをあらわしている。
オリジナルでは、ヴァイオリン独奏にオケ伴奏、それに合唱も入り、宗教色が濃い感じらしい。
マスネの作品は、この「タイスの瞑想曲」しか知られていないが(オペラ「タイス」の他の曲も埋もれている)、この曲は大変な人気で、色んな楽器によって、
演奏会やCDなどで頻繁に演奏される。
NHKの朝ドラ「風のハルカ」に、ヴァイオリニスト・グレース芝崎として出演していた高嶋ちさ子さんが、ドラマの中でこの曲を弾いていました。
確か、昔、何かの薬のCMにも使われていたと思います。
もし、自分がヴァイオリンが弾けるのなら、「タイスの瞑想曲」のように、思いっきり曲に酔えるような曲を弾いてみたい。どれだけ気持ち良いだろうかと
想像するだけで気分が良い。ただ、人の演奏を聞く時には、余り本人に酔われると、聞いてるこっちが冷めてしまう。という現象も起こるので、そのバランスは
難しいものである。
|