kon.9  ヨハネス・ブラームス「子守唄」   Johannes Brahms「Lullaby」



子守唄とは・・・

  本来の子守唄は、子供を眠らせるために、母親などの子守役が歌う、民謡としての歌。大半は、伴奏の無い独唱歌である。子供を眠らせるのに、わざわざ

  ピアノ伴奏しながら歌ったりはしないもんね。西洋の子守唄は、歌うのが母親ではなく、乳母等であったりもするけれど、基本的にこの、本来の目的のために

  作られたものが圧倒的に多い。詞の内容は、単純に「眠れ眠れ」と言う感じだ。

  しかし、日本を含め、その他の地域では、違った内容・目的の子守唄も存在する。

  日本以外のその他の地域を見てみると、詞の内容が、
恋歌、労働歌、叙情詩、叙事詩などが多いらしい。自国や、地域の歴史をうたった子守唄も存在する。

  なんか壮大な歌になりそうだ。一度は聞いてみたい。

  日本では、子守は、貧しい家のお姉さんが、下の子を見たり、貧しい家の女の子が、裕福な家に方向に行って、その家の子を見る、など、貧しい家庭の

  少女の仕事だった。その子たちが歌う子守唄は、自分の辛い心境、大変な仕事を押し付ける奉公先の主人たちに対する恨み、早く家に帰りたいという思い、

  などが込められた歌詞になっている。主人に直接言えない文句や恨み言を、まだ言葉も話せない背中の子供に聞かせて、鬱憤を晴らしているのだ。うまいこと

  考えたな、と思う。つまり、背景には10歳前後の少女たちの体験した、つらい労働や身分差別があるのだ。

  だから、
日本の子守唄には短調の曲が多く、なんとなく暗い雰囲気だ。でも、つらいつらいと言うばかりでなく、諦めも半分あるのだろうが、少々ひょうきんな

  感じにも取れる。子供に対して鬱憤を晴らすことによって、それを活力にしていたのかもしれない。

  日本では、労働歌としての子守唄を、「
守子唄」と呼んで区別することが多い。欧米の人に、日本の守子唄を聞かせると、「こんな悲しい旋律を子供に聞かせたら

  子供が眠れないのでは・・」と驚くそうである。確かに。でも、少女たちは、別に子供がすやすや気持ちよく眠れるように、なんて思っていないのだから仕方ない。

  泣き喚いたりせずに、大人しくしててくれさえすればそれでよいのだから。わたしが10歳の時に、子守を頼まれたら、とってもめんどくさい!と思うもん。

 

  それはともかく、このブラームスによる「子守唄」は、西洋人が作ってるだけあって、純粋に母が子に歌う子守唄である。

  子守唄である、といったけれど、この「ブラームスの子守唄(他にも「子守唄」という作品がたくさんあるので、作曲家の名前をつけて呼ぶ)」や、「
シューベルトの
 
  子守唄
」など、クラシックの作曲家が書いた子守唄は、性格に言えば「子守唄風」といったところだ。勿論、子供を寝かせるのに唄って聞かせたって良いけれど、

  子守唄のような雰囲気で書いた曲、といった感じでしょう。民謡としての子守唄の旋律を元に書いたりもします。ピアノ伴奏で歌ったり、ピアノソロだったり、ピアノ伴奏

  にソロ楽器が旋律を演奏したり、形態は様々。後にオケ版に書き直されたりもします。ブラームスの子守唄も、オーケストラ版もあります。これらの曲は、メロディが

  とてもきれいで優しいので、よくオルゴールや、ベビーベッドの上に吊るす、回転するおもちゃの音楽なんかに使われてます。

  同じ系統で、「
モーツアルトの子守唄」というのもあるのだが、これは実はモーツアルトが書いた作品ではないのだ。ある時までは、モーツアルトの作品だと信じ

  られていたのだが、実はフリースという人の作品だったことが判明したのだ。でも、「モーツアルトの子守唄」として定着してしまっていたので、名前は変えずに

  いるのだ。今では正確に「
フリースの子守唄」と表記してあるものもあるが、曲は同じものである。




日本語で歌おう!    わたしが知ってる限りの歌詞です。


◎ 作詞:中山知子

     
薔薇の花は風に揺れて 夢の歌を歌います 眠れ ぼうや 静かな夜 花の中で朝を待つの

       空の星は光青く 夢の国へ誘います  眠れ ぼうや 遥かな空 星の中を駆けて行くの



◎ 作詞:武内俊子

       ねんねんころり 母のひざは 夢を誘う揺りかごよ ゆらり ゆらり ゆらり 揺れて 夢の園へ乳を飲みに

       ねんねんころり 母の歌に 月ものぼる 夢の小道  ひらり ひらり ひらり ちょうちょう 花の影へ宿をかりに



◎ 訳詞:堀内敬三

       眠れよ吾子(あこ)  汝(な)をめぐりて 美しの花咲けば  眠れ 今は いと安けく あした窓に訪(と)いくるまで

       眠れよ吾子 汝が夢路を 天つ使い 護りたれば  眠れ 今は いと楽しく 夢の園に 微笑みつつ




◎ 作詞:旗野十一郎

       よい子 よい子 おお ねんねしな おお ねんねする愛子(いと)さまへ 何をあげよ 五色のまり たまの笛か あずまの琴

       よい子 よい子 おお ねんねしな おお ねんねする若さま 何をあげよ 錦の旗 軍人(いくさびと)の黄金の太刀




まさに夢のような歌詞。 

旗野十一郎さんの歌詞が、妙に日本チックなのが素敵です。まさかブラームスも「あずまの琴」とか「いくさびとの黄金の太刀」

とかいう歌詞をつけられるとは思ってなかったでしょう。若さまって。でも、わたしはこれが一番好きです。

みなさんも、自分の一番気に入った歌詞で歌ってみてください。そのうち、曲が聞けるようにする予定ですので。



ブラームスについてはこちら!
眠れよ吾子 汝が夢路を天(あま)つ使い 護(まも)りたれば眠れ、今はいと楽しく夢の園に ほほえみつ