◆チャプター9・井戸に現れたアリ◆
| 時間 |
| 00:26:42〜00:36:43(約10分) |
| 撮影日時/場所 |
| 1961年6月9日〜13日/ロレンスとタファスのシーン (井戸の中から撮られたショット)は1961年6月22日にジュベル・テュベクで撮影 1961年7月5〜11日/上記以外のシーン |
| あらすじ |
| マスツラの井戸で一息つくロレンスとタファス。その井戸は、タファスの部族と対立する ハリス族の井戸だった。そこへ井戸の持ち主であるハリス族の若き族長アリが現れ、 禁を犯して井戸の水を飲んだタファスを銃で撃ち殺す。アリはロレンスにいくつかの質問を した後去ろうとするが、後ろからロレンスの罵声を浴び、その言葉を聞いて気が変わったの かロレンスの元に戻ってきて、死んだタファスの代わりにファイサル王子の元に案内する と申し出る。しかし怒り沸騰のロレンスはその申し出を断る。ロレンスは、持ち主のいなく なったラクダと自分のラクダ2匹を引きつれ、コンパスを頼りに砂漠の旅を再び開始する。 そしてロレンスはカレ谷へたどり着く。ロレンスはそこで歌を歌うが、その歌は谷中に反響 し、谷に待機していたブライトン大佐の耳に届く。そしてロレンスはブライトン大佐と出会う。 |
| 解説 |
| ■「映画史上(一人の人物の登場シーンとしては)最長の登場シーン」だと言われる、アリ が地平線の彼方から砂埃をあげて登場するシーン。蜃気楼現象で「アリの乗っている ラクダがまるで砂の上に浮いて見える」この幻想的なシーンは約1分30秒続く。リーン監督 は映画を撮影する前に、ロケ地を決めるためにあちこちの砂漠を旅したが、そのときに「遠く からやって来る人間の姿が熱波によって消えては現れる」という不気味な、幽霊のように 見える現象を発見した。そして監督はこの「蜃気楼」現象をアリの登場シーンに使うと決め た。そしてそれは脚本でも指定されている。このシーンを撮影するにあたり、より際立つよう に、アリのラクダが走る一筋の道以外の砂地を黒く色付けしている。 このシーンに撮影監督のフレディ・A・ヤングは「ミラージュ(蜃気楼)レンズ」と呼ばれている 482ミリの望遠レンズを使った。 この場面を家庭用のテレビで観ると長く感じるかもしれませんが、映画館で観るとそうでも ないように(個人的には)感じます。 ■当初アリ役にはドイツ人のホルスト・ブッフホルツやフランス人のアラン・ドロンが候補とし てあがっていたが、監督がアリ役に望んだのは黒い髪・瞳を持つ人物だった。金髪碧眼の ロレンスと好対照をなすと思ったからである。プロジューサーのサム・スピーゲルはフランス 人のモーリス・ロネとアリ役の契約を結んだが、リーン監督は納得していなかった。そして 監督は名案を思いついた。アラブ人役なのだから、アラブ人俳優の中から選べばいいと 思ったのである。そしてオマー・シャリフが選ばれた。 ■ロレンスが「貪欲で野蛮で残酷だ」とアリに叫ぶシーンはエル・ジャフレで7月8日に撮ら れたがその出来に監督が満足せず、クローズ・アップショットを8月14日にモロッコで撮り 直した。他のシーンと1年以上の間が空いたため、ロレンス役のピーター・オトゥールは このシーンを見て「顔が丸くなっていて1歳老けて見える」と笑った。 ■タファスが井戸の脇でラクダに水を飲ませている間、ロレンスは砂地の上でコンパスを 覗き込み、口笛を吹く。ここで吹いている口笛と、後でカレ谷でロレンスが歌う歌は同じで ある。その歌は古い英語の歌で、タイトルは「The Man Who Broke the Bank」。 |
| 気になるセリフ |
| 「モンテカルロの銀行強盗はこの俺さ」By ロレンス ロレンスがカレ谷で歌う歌「The Man Who Broke the Bank」の歌詞のワンフレーズです。 ここでこの歌を歌うことは特に脚本で指定されてはいませんが、口笛を吹くときに、この歌の メロディを吹くことは指定されています。どうしてこの場面にこの歌を指定したのか? 私はロレンスの未来を暗示しているのではないかと思うのです。この歌が。 歌の題名を訳すと「銀行破りをした男」です。ここで言いたいのはもちろんロレンスがこれか ら「銀行破りをする」ことではなく、「銀行破りのようなデカいことをしでかす」ということです。 (まあ、ある意味「銀行破り」のようなこともしてますけど。アカバのトルコの陣地で) |
| 脚本との違い |
| 映画では脚本に無いセリフや行動↓がいくつか付け加えられている。 ○アリが(カイロの学校へ行っていたので)読み書きができること ○ファイサルのもとに既にイギリス人(ブライトン大佐のことですね)がいること ○ロレンスが去り行くアリに向かって「欲張りで残忍で野蛮な人種だ、君のように」 と罵声を浴びせた後、アリが戻ってきて「ファイサル殿下の元へ案内しよう」と申し出る が、脚本では戻ってこない。当然、その後の「コンパス」の件もない。 |
| 脚本で強調して言うように指定されているセリフ(の中の単語) |
| なし。 |
| 私的感想 |
| 井戸の中から上を見上げて撮ったかのようなアングルのショットは印象的です。こういう撮り かたもあるんだな〜と思ったら、脚本でちゃんとそういう撮り方をするように指定されていま した。 殺されたタファスの「血糊」がいかにも作り物っぽいというか絵の具っぽいような気がするの は気のせいですか?ただ、砂漠では血の水分もすぐに乾燥してしまうと思うので、映画に あるような、水分の少なそうな血糊はある意味リアルなのかもしれません。 撮影中、あまりの暑さに汗もすぐに乾燥してしまい、メイクの人がわざわざ「汗」のメイクを (俳優に)施したという裏話もありますし、ね。 |
| 補足 |
| ■映画の原作でもある『知恵の七柱』にも「アリとは井戸で出会った」という記述があるが、 映画のようにタファスが殺されることはない。ベドウィンの約束事の中に「砂漠の旅人は厚く 歓待せよ(飲料水も含めて)」というのがある。たとえ相手が対立している部族であっても、 井戸で他部族の人間を殺すことは禁じられている。しかし、「アリが無慈悲な殺し屋」で、 ロレンスがそれらの紛争には踏み込まない「傍観者」であることを表現するため、こういった シーンとなった。そしてアリとロレンスのこの関係は、最後の戦闘シーンでは完全に入れか わっている。敗走するトルコ軍に追い討ちをかけるロレンスは「無慈悲な殺し屋」に、 アリは「手を出さない傍観者」となっているのである。 ■エジプト人のオマー・シャリフ(本名マイケル・シャルフーフ)は都会のカイロ育ちでラクダに 不慣れだったため、ピーター・オトゥールは彼に「カイロのださ男」というあだ名をつけた。 英語で「カイロのださ男」をどう言うのかが気になるところですね(笑) |
| 参考文献(一部) |
| 特になし。 |