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◆チャプター13・今や再興のとき◆

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時間
00:49:26〜00:52:18(約2分52秒)
撮影日時/場所
(最初)1962年3月初旬(撮り直し)3月21〜26日/
(最初)スペイン・セビリア(撮り直し)アルメリア
あらすじ
ファイサルのテントの中に立つ、ロレンスとファイサル。2人の会話から、ロレンスの心情と
ファイサルの心情、そして戦いの背景などがうかがえる。アラブの土地を狙うイギリスの人間
でありながらアラブにも忠実でありたいと言うロレンス、それに対し皮肉げな返答をしつつ、
しかし嫌悪するイギリスの力を借りたいというファイサル。アラブの再興は可能だという点に
おいて2人の意見は合致するが、それにはイギリスの力か、もしくは「奇跡」が必要だと言う。
解説
「But I fear to do it …upon my soul I do」(しかし不安だ…心配でならん)というファイサルの
セリフに合わせて、テントがきしむ音が聞こえる。この、少し不気味な感じのする音やテントの
揺れにより、ファイサルの不安な心情がより強く印象づけられる。ほか、このワンシーンのな
かでカメラの焦点が変わるなど、カメラワークにも注目してみるといろいろ見えてくるものが
あります。
気になるセリフ
■「I think you are another of these desert-loving English.Doughty, Stanhope
…Gordon of Khartoum」
(君も砂漠を愛するイギリス人の一人だな−ダウティ、スタンホープ、カーツームのゴードンと
並んで)Byファイサル
ここでとりあげられている3人の英国人ですが、普通の日本人なら、世界史を勉強した人でも
知らない人がほとんどでしょう。そのせいか、映画館で「アラビアのロレンス」を見たとき、
この3人の名前は字幕に出てきませんでした。(DVDの字幕にはきちんと表示されます)
この3人についてはこちらを参照→■砂漠を愛する3人のイギリス人■

■「Yes, you were great」(ええ、偉大な民族でした)By ロレンス
日本語字幕や吹替えでは「偉大な民族です」となっているこのセリフ、英語のセリフを見ると
過去形になっています。「偉大な民族でした」、つまり「過去は偉大だったが今はそうではな
い」ということをロレンスは暗に言いたかったのではないかと思います。このセリフが過去形
だからこそ、ロレンスの次のセリフ「Time to be great again, my load」(今や再興のときです)
が生きてくるので、ここは過去形で訳したほうが良かったのでは。

■「Or is it that you think we are something you can play with…
・…because we are a little people, a silly people…greedy, barbarous and cruel?」
 (それとも、アラブ人を笑いものにしようというのか?我々は愚かな、民族に過ぎず
 欲張りで、野蛮で残忍な人種だから)
これは、ロレンスが井戸でアリに言ったセリフに対する皮肉。
詳しくはこちら→■ファイサル王子は皮肉屋■
脚本との違い
■映画では「I think you are another of these desert-loving English」となっている
ファイサルのセリフですが、脚本ではこの「desert-loving English」の部分が
「desert loving Englishmen」となっています。どうして「Englishmen」が「English」となったの
か―。辞書を引くと、どちらの単語も「イギリス人」という意味で、大きく違うわけではないので
すが、「Englishmen」としてしまうと、「イギリス人男性」という意味に取られてしまうことがある
ので、単に「English」としたのではないかと思います。このセリフのあとに挙げられている3人
Doughty, Stanhope…Gordon of Khartoum のうち、一人は女性ですから。
脚本で強調して言うように指定されているセリフ(の中の単語)
■「We love water and green trees.There is nothing in the desert」
我々は水や緑を愛する。砂漠には何もないからな)Byファイサルl
ロレンスに対して、「君は砂漠を愛しているかもしれないが、私たちアラブ人はそうではない」
つまり、「私たちと君とは違う」という事をファイサルは言いたいのでしょうか。
私的感想
それほど長いシーンではありませんが、ファイサルの皮肉がこれでもか、というくらい炸裂して
います。対するロレンスは穏やかで慎重に、感情を見せないような表情で返答していますが
その心情はいかに?そしてこのシーンは、短いながらもそのセリフに多くの内容が凝縮されて
おり、歴史的背景等がわかっていないとそれらのセリフの半分も理解できないと思います。
日本語の字幕や吹替えも少し不親切ですしね。例えば、

「But you know, Lieutenant, in the Arab city of Cordova were
two miles of public lighting in the streets - when London was a village!」

を、(知っているかね、中尉、ロンドンがまだ村落だったころ、コルドバには3キロに渡って
街灯があった)と訳していますが、「コルドバ」が一体何なのかの説明がされていません。
英語のセリフにあるように、「アラブの都市だったコルドバ」といったような訳を、せめて吹替え
だけでも入れて欲しかったです。「コルドバ」だけでは、アラブやスペインの歴史に詳しい人
以外は分かりません。ちなみに、別項で詳しく説明しますが、コルドバというのはスペインの
地名で、イスラム国家の後ウマイヤ朝(756−1031)の都市があった場所。
補足
■コルドバ■
ファイサルのセリフに出てくる「コルドバ」というのは、イベリア半島における最大・最長のアラブ
王朝だった後ウマイヤ朝の首都(現在のスペイン南部のアンダルシア地方にあった)の名前。
ウマイヤ朝第10代カリフ、ヒシャームの孫のアブド・アッラフマーン1世がアッバース朝の
追っ手を逃れ、当時の総督ユースフを破ってコルドバでアミール(指導者、という意味)を宣した
756年から滅亡する1031年まで、当時のヨーロッパ最大の文化都市であり、またコンスタン
ティノープルおよびバグダードとならぶ、世界の3大文化中心地だった。
この都市は家屋13万軒、21の郊外地区、蔵書40万冊を誇る図書館、多数の書店、寺院、
宮殿を擁し、ファイサルのセリフにもあるように「舗装された街路と街灯が数マイルもつづいて
いた」。このイスラム教徒の都の名声は遠くドイツまで伝わり、ドイツのサクソン人のある尼僧
はコルドバを「世界の宝石」と呼んだという。
参考文献(一部)
『アラブの歴史・下』(フィリップ・K・ヒッティ著、岩永博・訳/講談社学術文庫)
上下巻で19世紀頃までのアラブの歴史をほぼ網羅しているので、アラブの歴史を知りたいの
ならこの本を読むことをお勧めします。ただし、かなり分厚い(各800ページくらいあります)の
で、読破するのは大変かと思いますが、ハードカバーの学術書を購入するよりはこの文庫を
購入した方がよろしいかと。1冊1800円しますが、それだけの価値はあると思います。
補足の項目で参照。