「なんで、エリカがセリカを追放するなんて考えられない!」 少女は驚愕に身を戦慄かせた。どうしてこの理不尽な怒りを鎮めることができようか。少女にとって、二人はそれほど大切な友人であり、愛すべきものたちだったのである。 「ダルマ! ダルマー!!」 「うっせぇな! 一回呼べば分かるって何度言やあ理解すんだよ!」 喚くように怒鳴り散らせば、呆れたように怒鳴りながらダルマと呼ばれた少年が扉を開けて入ってきた。 その様子を振り返りもせずに、少女は口を開く。 「セリカのところへ行って頂戴」 「また偉い唐突だな」 その台詞に少女はようやく振り返り、ダルマを睨め付けた。それに怯むことなくダルマは少女の視線を受け止める。 この二人は立場的な上下はあろうと、どこまでも対当であるのだ。 「あんたの元・上司が護衛に当たってるから入り込めるでしょ。それに本職は諜報部員なんだから役に立ちなさい」 「こういう時ばっか、扱き使うのな」 「当たり前でしょ。それに、」 そういって、少女は一旦区切ってからにやりと人を食ったような笑みを浮かべていったのだ。 「こういうときだからこそ扱き使うのよ」 そして、少し考えてからダルマに向けて言い放った。 「ほかに役に立つのかしら」 「おい」 「冗談よ」 冗談に聞こえなかったといわんばかりに、ダルマは少女に訝しげな視線を投げる。だが彼女はそれを平然と受け止めている。 「冗談なんか真に受けてないで、さっさと行って。ダルマのこと、ホントに信頼してなきゃ、こんなこと、頼めやしないんだから」 そういって少女は微笑んだ。 少女の名前はツガル。その歳にして、稀代の魔術師(マーガ)の名を欲しいままにした少女である。 |