生まれたときから一緒だった。別々に在るなんて、考えられなかった。私たち、二人は、いつだって一緒。それが、当たり前だって、思っていたの。



 二人向き合って、月光の差し込む窓の下で。両手をあわせて、私たちは額をあわせた。

「セリカ」「エリカ」

 同時に名前を呼んでしまって、私たちは少しだけ驚いて、目を開いた。ばっちり互いの目があって、それが妙に照れくさくて、おかしくて。二人して声を上げて、しばらくの間、笑いあった。

「私たち、きっと別々の人を好きになるわ」
「そうかしら」

 エリカが笑い過ぎて潤んだ瞳で、私の目を見つめて言った。どうしてそう思うのか、少しだけ不思議に思ってそう返すと。

「だって。私はあなたの心の半分。それくらいは分かるよ」
「案外、同じ人を好きになるかもしれないよ?」

 私の言葉に、エリカの目はすごく優し気に細められて、両手と額が私から離れていった。

「セリカには、もう、好きな人、いるでしょ」

 その人のことを考えてるときの、すごく暖かい気持ち、流れ込んでくるよ。言いながら、エリカは私の首に両腕を回して、私をぎゅうっと抱きしめた。

「エリカには全部、分かっちゃうんだね」
「セリカの心の動きだけ、ね」

 そういって笑うエリカに、私はたまらなく切なくなった。
 エリカの気持ち、私には分からないときがあるのは、どうして?

「私の半身……私の、大切な妹」

 優しく強く抱きしめてから、エリカは私を腕から解放した。そして額に静かに優しいキスをくれた。

「私の半身……私の心の、半分。エリカには隠し事、できないかなあ」
「私もセリカに隠し事、できないよ」

 そうして、私たちは一つのベッドに二人で潜り込んだ。

「ほら、もう寝よう。明日も朝は早いから」
「うん……おやすみ、エリカ」
「おやすみ、セリカ」

 優しく頭をなでる手の感触を楽しみながら、ふと両開きの窓に目を向けた。煌々と満月が夜空に輝いていたのをよく覚えてる。



 ねえ、あなたの心が分からないよ、エリカ。

 どうしてエリカを感じられなくなってしまったのかな。

「貴方は私の心の半分」


 嘘のない言葉だったはずなのに、もうエリカが見えないんだ。


「私はあなたの心の半分」


 そういって優しく微笑んだエリカの顔は思い出せるのに、どうして私たちはこんなに遠く離れているんだろう。
 ずっと一緒で当たり前だった。離れるなんて考えても見なかったのに。

「……待っててね、エリカ。私、エリカに会いにいく!」

 あなたの心が分からないなら、あなたの声を聞けばいい。
 理由も分からないまま、離ればなれになるのなんて耐えられない。
 あなたの口から、納得できる答えをもらうまでは。
 もう一度、あなたに会うために。
 私の心を、この言葉を伝えるために。
 エリカの心を、知るために。

「開門!」


 私は行くんだ。


 何かを傷つけると分かっていても。



 そう、誰かを傷つけると、識っていても。