Christmas in Triangle
if〜世界にMerry X'mas


どんなもしもが 君の未来に わりこんでも…


たまたま居酒屋で流れていた曲からとある"もしも話"が思い浮かんだ。
そして、たまたま"その話にのってくれそうな人"が目の前にいたのでおれは"ぶつけて"みることにした。

「ねぇ、雪野ちゃん。」
「ん?」
「もし、おれが"とんでもないこと"をしたとして警察に追われたり世間の皆さまに後ろ指刺されるようになったとしたら雪野ちゃんはどうする?」
「…え?」
ちょうど居酒屋の店員のおねえさんに注文を終えたばかりの"その人物"はまさに不意打ちのおれの言葉にまずきょとんとした顔になり、それからちょっと首を傾げた。
「"とんでもないこと"って…例えば、殺人とか銀行強盗とか?」
「うん、そんな感じ。」
「で、"どうする?"って?」
「雪野ちゃんもみんなと同じようにおれを非難したりするかどうか、っていうこと。」
そう言っておれはにっこり笑った。
そして、彼女がさらに首を大きく傾げて考え込んでいるのをにこにことながめていた。
「あのね…」
「ん?」
「実際にどうするかはその状況になってみないとわからないけれど…でも、まわりの人たちがなんて言おうと、わたしは要くんの味方でいたいと、思う。」
「え?」
彼女の言葉に今度はおれの方が動きが止まった。
「要くんは支えてくれたり励ましてくれたりわたしにいろいろしてくれるけれど、わたしにはそういうことできないから…せめて、何があっても要くんのことを信じていけたらいいなぁ、って…」
顔を赤くしながらだんだんと声が小さくなっていく彼女におれはまたにっこりと笑った。
「じゃあ、おれは雪野ちゃんの信用を失わないようにがんばらないとね♪」
冗談めかしたおれの口調に彼女はさらに顔を赤くした。
「も〜突然変なこときかないでねっ!!」
そう言って、彼女は照れかくしのように目の前にあったグラスの水をぐいっと飲み干した。

"そんなことないよ、今だってきみはおれの心を軽くしてくれたんだから。"

ほんとはそう言いたかったけれど、なぜか彼女は自分への評価を素直に認めない人なので"これ"もたんなる社交辞令だと思ってしまうだろう。
だから、この言葉はおれの胸の中にこっそりしまっておこう。
そんなことを考えながらくすくす笑っていると、真っ赤な顔の彼女にぎろっとにらまれた。
と、その時…。

「何の話?」
突然現れた天がそう言いながらどさっとおれの隣に座り込んだ。
「あのね、"要くんが警察に追われたらどうするか"って。」
…って、雪野ちゃん、いくらなんでもそれは省略しすぎでは…(汗)
「なに、要、なんか悪いことでもしたのか?」
「してないって!!」

途中、天の飲み物や料理を注文して、おれは改めてさっきの"もしも話"を天にもきかせた。
「そういえば、ドラマとかでさぁ"仲間の無実を信じていっしょに警察から逃げまくる"っていうのあるけど、ああいうのもいいかものなぁ。」
にやりと笑う天におれはくすっと笑ってしまった。
「ふ〜ん。じゃあ、ふたりでがんばって逃げ延びてね♪」
そう言ってひらひらと手を振る雪野ちゃんに天はショックな顔になった。
「なんだよ!? 雪野はいっしょに行かねぇの!?」
「だって、みんなで逃げたら誰が要くんの無実を主張するの?」
ふたりのやりとりにおれは思わず吹き出してしまった。
やっぱりこのふたりに話して"正解"だったな(笑)

「それにしても、なんで"クリスマスイブに居酒屋"なんだよ。」
…ってそう言いながら生ジョッキぐいっと飲むなよ、天…。
「しょうがないだろ、"誰かさん"がクリスマスイブなのに残業で遅くなってこういうとこしか開いてなかったんだから。」
おれの"皮肉たっぷり攻撃"に天は"うっ"となり、雪野ちゃんは困った顔で笑っていた。
「そういえば、高校生の時、商店街のイルミネーション見に行ったよね。」
「あれって今年もやってんのかな?」
「やってんじゃない?」
「じゃあ、今から見に行かない?」
雪野ちゃんの言葉におれと天はにっこり笑った。

居酒屋を出る時に、やはりクリスマスだからか『世界にX'mas』と歌っている曲が流れていた。
「要くん、どうかした?」
思わずその歌に聞き入って出口で立ち止まっていたおれはあわてて店を後にした。

"世界中の人たちがみんな幸せになりますように"なんてとても大それて言えないけれど…
"あのふたりがずっとおれの味方でいてくれますように"ぐらいだったらサンタも叶えてくれるかな?
あともうひとつ。


"ずっとあのふたりが笑顔でいられますように"


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ブログで不定期(!!)連載中「Andante SSS」に掲載した「if」を"クリスマス風味完全版"(!?)にしてみました♪
(と言っても"クリスマス"は最後になかば強引にくっつけただけのような…^^;)
タイトルは両方ともCHAGE&ASKAさんの曲です♪
そして、このお話は"要&天・21歳 雪野・20歳"という設定になっております。(要と雪野が大学三年生、天が社会人一年生)
(なぜか舞台が居酒屋以外に考えられなくなってしまったので^_^;)
さて、この頃には三人の関係、どうなっているのでしょうか…? ̄m ̄ ふふ
[綾部海 2005.12.16]

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Photo by ひまわりの小部屋