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THANK GOD IT'S CHRISTMAS

12月24日の夜。
前田雪野は例年と同じように家族と...いや、例年とは違って母・知佐子と"義父"・久志と共に過ごした。
"(一応)お父さんとお母さんといっしょにテーブルでケンタッキーのクリスマスバーレルを囲む図"はまるでテレビのCMのようだと雪野が思っていると、ポケットの携帯から「オリーブの首飾り」が流れてきた。
雪野はポケットから携帯を取り出すと送られてきたばかりのメールをチェックした。

 『今ひま? 要』

雪野はポチポチと返信を打ち込んだ。

 『ひま 雪野』

雪野は送信すると、また携帯をポケットに戻し食事を続けた。
「雪野、どうかした?」
「ん、別に。」
知佐子の問いかけに雪野はそっけなく返した。

数分後、また携帯が鳴った。

 『今からH駅に来られる? 要』

雪野はまたポチポチと返信を打ち込んだ。

 『OK 電車乗るときにメールするね 雪野』

雪野はそのメールを送信すると立ち上がった。
「出かけてくる。」
「あ、要くんたちと?」
「うん。」
「遅くなる?」
「わかんない。そうかも。」
「そう。ちゃんと暖かい格好していくのよ。」
「うん。」
久志が「こんな時間に...」とか「女の子が男の子と遅くまで...」とか言っている横で母娘は淡々と会話していた。
「あ、雪ちゃん、送って行こうか?」
相手にされなくてさびしくなった久志は少しでも父親らしいところを見せようとしたが...。
「いらない。」
雪野はずばっとひとこと残して自分の部屋に準備をしに行った。

本人たちは"家族でクリスマス"の雰囲気を作っているつもりだったのだろうが、雪野にしてみたら自分が"ラブラブカップルにはさまれたお邪魔な娘"にしか思えなかったのだ。
要の申し出は雪野にとって"渡りに船"だった。

H駅へは雪野のマンションの目の前のD駅から電車で10分弱だった。
しかし、要と天の住むマンションはそのひとつ手前のT駅の方が近かった。
雪野は「なんでH駅なんだろう?」と首をかしげつつもD駅のホームから要にメールを送った。
メールには要の名前しかなかったがどうせ天も来るのだろう、と雪野は思っていた。

H駅で電車を降りた雪野は改札から少し離れた売店の前にいる要と天を発見した。おそらくふたりは歩いてここまで来たのだろう。
「お待たせ!!」
平日だが一応地元の"繁華街"に近い駅である上にクリスマスイブのせいかやけに多い利用客の間をすり抜けて、雪野はふたりのところへやってきた。
「こっちも今来たところだから。」
「さみ〜。」
にっこり笑う要にポケットに両手を入れて背中をまるめている天、それぞれらしい反応に雪野は思わず笑ってしまった。
「で、なんでこっちで待ち合わせだったの?」
電車の中でもずっと疑問に思っていたことを雪野はきいてみた。
「それはね...」
要と天は雪野を売店の前からH駅のすぐ横の踏切のところへ連れてきた。

「わぁ...」

雪野は思わず声をあげた。
その踏切からまっすぐに大通りが伸びているのだが、その両サイドには色とりどりなイルミネーションが飾られていた。
もちろん、それはテレビなどで紹介されるイルミネーションにくらべたらちっぽけなものだったが、小さいなりに雪野の心をときめかせるものだった。
「せっかくクリスマスだからこの通りを散歩しようかな、と思って雪野ちゃんも誘ってみました♪」
要のその言葉を聞いた雪野は「またもやお邪魔虫では!?」と思ったが、要はそんな雪野の思いを察したかのように笑いながら雪野の頭をぽんとした。"気にしなくていいよ"というように。

「年末だったら歩行者天国になってるんだけどねぇ。」
大通りの真ん中大部分は車道で今日も車がそれなりに走っている。
三人は同じようにイルミネーションの中を歩きに来た人々でひしめきあっている歩道を歩いて行った。
雪野はいままでにもこの通りを歩いたことはあったが、大体、友達とおしゃべりをしながらだったので、この通りにどんなお店があるのかしっかり見たことはなかった。
そのため、今日の雪野は自分のいる歩道や向かいの歩道に目をやっては、「あのイルミネーションきれい!!」とか「あ、あんなところにあんなお店あったんだ。」ときょろきょろしながら歩いていた。
その結果すれ違う人とぶつかりまくり、気がつけば要や天はどんどん先を歩いていた。

「あれ、雪野ちゃんは?」
話に夢中になっていたのか雪野の不在に気づかなかった要と天が後ろを振り返ると、雪野は後ろから来た人に突き飛ばされて転びそうになっていた。
「おまえ、何してんの?」
ある意味、学校での雪野からは考えられないような"ぼけぼけ"ぶりに天は笑いがこぼれた。
「だって〜」
自分でもあまりの情けなさに涙が出そうになっていた雪野はなんとかふたりのところにたどり着いた。
すると...。

「はい。」

雪野の目の前にふたつの手が差し出された。
「...」
要と天は一瞬顔を見合わせるとおたがいにくすっと笑った。
「???」
雪野は自分の身に起こったことがよく理解できず「?」を飛ばしていると、要と天がそれぞれ雪野の右手と左手を取り歩き始めた。
ふたりの行動に雪野は最初「え〜〜〜!?」とパニック状態になったが、ふたりがいつもと同じように笑っているのを見て、「まぁいいか。」と気にしないことにした。
「それにしてもさぁ、普段見慣れた通りのはずなのになんか違う感じがするのはオレだけ?」
天の言葉に雪野は「うんうん」とうなづいた。
「そうそう!! あと、周りの人もなんかみょ〜にうれしそうというか...。」
「ん〜、やっぱクリスマスだからじゃない?」
要の言葉に天と雪野は「納得!!」という顔。
そして、さらに天も加わって"観察"は続けられた。
要はきゃーきゃー騒いでるふたりを見て「仔犬がじゃれあってるみたい...」と思わず笑ってしまった。

「あ〜、ケンタのチキン食べたかったなぁ。」
「駅前のケンタつぶれたの知らなかったもんねぇ。」
「...ごめん、今日、ケンタのチキン食べた...。」
「え〜、いいな〜!!」
「でも、食べてる途中でメール来たからあんま食べられなかったけど...」
「ん、じゃあ"不問に処す"ということで。」

たわいのない話をしながら歩いていった三人は...。
「なんでクリスマスに大社なの〜?」
大通りの終着点の大社にいた...。
「やっぱあの通り歩いたら最後に大社に寄らないとねぇ。」
そう言って赤い大鳥居をくぐる要と天に雪野は従わざるをえなかった。(というより、まだ手をつないでいたので無理矢理連行^^;)
大社の中も一応ライトアップされているせいかちらほらと人がいたが、「ひとりだったら絶対に歩きたくない!!」という雰囲気がなぜかそこにはあった。(なんか出そうで...)

大社の池のまわりをぐるっとひとまわりして再び大鳥居から外にでると、雪野はほっとため息をついた。
「さて...」
"これからどうしようか?"という様子の要に雪野ははっとした。
どうやらふたりが計画していた"散歩"はこれで終わった様子。
ということは、この大社からふたりの住んでいるマンションはわりと近いので(そういう地形)、あとはふたりは歩いて帰るのみ。
しかし、雪野としてはあの"ラブラブカップル"が待つ家にまだ帰りたくなかったのだった。
でも、女の子から男の子ふたりの家に泊めてほしいというも...、と雪野が考え込んでいると...。

「チキンとケーキでも買って帰ろうか。」

要は大社の目の前のコンビニへ入ろうとしていた。
雪野が「え?」という顔をしていた。
「雪野ちゃん、今日はうちに泊まってっても平気だよね? お母さんに連絡しといた方がいい?」
「たぶん、大丈夫だと思う...。」
雪野があっけにとられながらそう答えると、要はまた雪野の右手を取った。そして、左手は天が。
雪野がとてもうれしそうに笑うのを見て、ふたりもにこっと笑った。
そうして三人はコンビニの自動ドアをくぐった。

「おでんも食べたいかも...。」
「あ〜、なんでもいいよ。」
「ケーキどれにする?」
「オレ、チョコがいい!!」
「え〜、イチゴがいいよ〜!!」

三人は両手にいっぱいいろいろ買い込むと要と天のマンションへと向かった。
そして、チキンとケーキとシャンメリーで乾杯した後、朝までゲーム大会が行われていた、とか(笑)。

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本編は今は一学期あたりなのですがクリスマスイブあたりの三人はこんな(の予定^^;)です
(さて三人の関係はどうなってるのでしょうか?  ̄m ̄ ふふ)
タイトルはQUEENのクリスマスソングから。
意味は「神様、ありがとう!!今日はクリスマスだよ!!」という感じです(大雑把な訳^^;)
テーマは"ラブのかけらもないクリスマス(イブ)"でした(爆)
[綾部海 2003.12.15]

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