「条件?」 すんなりやめてくれると思っていた天は光希の言葉に顔をしかめた。 「だって、こっちだって一応いろいろガマンしているのに天が『いやだ』っていうだけで解散するのものねぇ...。」 確かに天派・要派の女の子たちはガマンしていた。 本当だったら校内だけではなく外でもプライベートでもふたりを追いかけたいと思っていたがそれは"規則"に反することなのでぐっと耐えていたのだ。 (過去に規則破りをしてふたりの自宅までついていった子たちもいたが要に"きつ〜いおしおき"(詳細は不明)をされたため、それ以後違反者は出なかったという) 「でも、さすがにあんたたちに彼女ができてからもこういうのやってるのは悪いだろうなぁ、って思ってたの、つねづね。」 言葉の内容とは裏腹にいかにも"今思いつきました"という感じの光希の口調に要はあきれてため息をついた。 「で、この状況でどうやって彼女を作れっていうんですか?」 要の言葉に光希は"待ってました"とばかりにくいついてきた。 「だから〜♪ もしあんたたちに彼女にしたいような子ができたら解散、っていうのでどう? あ、ちなみに自己申告制ね。 たとえば、端から見ても"天はあの子が好きなんだ"ということがわかっても自分から言わなければ適用されません!!」 にっこりと笑う光希の前にはぽかんと口を開けた天となにか考えている様子の要。 「いかが?」 光希がわざと天に顔を寄せると、さすがに天も我に返り、真っ赤な顔をしてあわてて光希から離れた。 「なんだよそれ!?」 「いい条件だと思うけど? ね、要?」 光希にふられた要はなんだか納得いかない顔をしていた。 「つまり...おれらに"特別な女の子"ができたらあの"困った"集団を解散してくれる、ということですね?」 要はわざと"困った"を強調していたが光希は平気な顔をしていた。(やっぱり要も迷惑がっていたわけですな。) 「ま、そういうわけ。」 「ちなみにどなたに"申告"すればいいんですか?」 「ん〜、だれでもいいけど...私に言ってくれればほかの子たちへの対応も速いと思うよ。」 要は「ふむ」とまた少し考え込んだ。 「もうひとつ。 "特別な女の子"ができたのがどちらかひとりだけだったら...」 「両方解散だよな!?」 要が「どうなるんですか?」と続ける前に天が勢いよく割り込んできた。 「いいえ。もちろんその人だけ。」 にこっと笑う光希に天はがっくりと落ち込んだ。 要は「そうだと思った」と言いそうになったが、天がさらに落ち込みそうだったのでやめておいた。 頭の中で考えをまとめた要を口を開いた。 「わかりました。おれたちに"特別な女の子"ができたら天派、あるいは要派は解散する、ということでいいですね? これ、ちゃんとほかの人たちにも徹底しておいてくださいね。 あとで『知らない』って言わないでくださいね!!」 「了解、了解。」 強気で押してくる要に光希は"わかった"という感じで両手を軽くあげた。 「天もそれでいいな?」 「あ、うん。」 要の"演説"をぽかんとした顔で見ていた天ははっと気がついたように答えた。 「それでは"契約成立"ですね。」 にっと笑う要に光希は"やれやれ"という顔をした。 「あ、付けたしとくと、タイムリミットはきみたちが卒業するまでね。 私たちが卒業したら自然消滅する、なんていう甘い考えは捨てるように♪」 にかっと笑う光希には今度は要が"やれやれ"と苦笑いした。 天は「げっ」という顔でかたまっていた。 「そんな"決まり"があったんだ〜!!」 要の話を聞いていた雪野はため息をついた。 「"例の集団"に関係している人ならたぶん知っていると思うけどね。 前田ちゃんはどっちにも属していないから、残念ながら。」 にこっと笑いながら言った要の言葉の最後の部分に雪野はドキドキが止まらなかった。 ("残念ながら"って...深い意味はないよね、たぶん...) 「あ、で、でも、ということは、は、早く彼女ができれば、い、いい訳だよね...。」 雪野は胸のドキドキと赤くなった顔をごまかしつつ話を続けた。 「う〜ん、でも、"そのため"だけに彼女になってもらう、っていうのも相手に失礼だし...。 まぁ、天の場合は、ある意味そんな"器用な"こと、絶対にできないんだけどね。」 「そうなんだ。」 たしかに雪野が知る限りでも、天はおせじにも人付き合いがうまい、とは言えなかった。 おまけに、要以外には非常に無愛想な天に"彼女"ができた、という図を雪野はとても想像できなかった。 「...やられたかな...」 強引に"天&彼女"の姿を想像しようとしていた雪野は要のつぶやきを聞き逃してしまった。 「え?なに?」 あわててたずねる雪野に要はにっこりと笑った。 「なんでもないよ。早くこれまとめちゃわないと会議始まっちゃうよ。」 「あ、そうか!!」 雪野はあわててプリントに向かった。 その横で要は雪野に気づかれないように軽くため息をついた。 まるで雪野にさっきのつぶやきを聞かれなくてよかった、というように。 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ あぁ、今回も"あのシーン"まで行けなかった...(無念) おそるべし"光希magic"!!^_^; ちなみに、最後のあたりの要のつぶやきは... ̄m ̄ ふふ(あやしい?) [綾部海 2003.12.01] |