045.年中無休
24hr Supermarket

今日もいつもの時間にいつものコンビニに行った。
買うものもいつもと同じ。
コンビニ弁当にサラダにヨーグルトにマルボロ2箱。
たまに雑誌や文房具が追加されたりするけど。

「いらっしゃいませ!!」
少し前に入ったバイトの彼女はだいぶ慣れてきた様子。
応対がだいぶスムーズになってきた。
あ、でも"いらっしゃいませ"とか"ありがとうございました"の声は最初からでかかった気がする。
元々接客業の経験があるのかな?
はっ!!
ついつい"人間観察"するクセが勝手に...。

俺の職業は一応"小説家"。
しかし、実際は小説は全然売れないのでそれ以外の文章をいろいろ書いている、いわゆる"フリーライター"だ。
大学時代に投稿していた小さな文芸誌の小さな賞に入選し、それ以来一応"担当編集者"がついている。
大学を卒業する頃に俺は就職しようかどうしようかと迷ったが結局"書く"ことを選んだ。
幸い、少しずつだが小説の仕事も来ていたし、大学の同期のヤツが地元のタウン誌の編集をやっていていろいろ仕事をまわしてくれたりしていた。
そして、いつのまにか気分転換にコンビニに行くようになったのだ。

始めの頃は行く時間帯はまちまちだった。
気が向いたときや原稿が進まないときの気分転換に、と言う感じで、弁当も朝飯だったり夕飯だったりした。
しかし、"彼女"が夜のバイトに入ってからは決まった時間に行くようになった。 彼女がいる時間に。

名前は名札でチェック済。
年は...たぶん俺と同じくらい...外見からすると。
きれいに染まった茶色い長い髪をいつも後ろで束ねている。

あと...どうやら彼女には子供がいるらしい。
(雑誌の立ち読みをしていた時に偶然(!?)店員たちの話が耳に入ったのだ)
最初は「人妻だったのか...」とひそかにがっかりしていたが、さらに耳をダンボにしてみた結果、彼女はひとりで子供を育てていることがわかった。
シングルマザーなのかバツイチなのか、そこまではわからなかったが、俺は心の底でほっとした。
って別に俺は彼女のことを「ちょっといいなぁ」と思ってるだけなんだけど...。

そんなことを考えながら"お弁当コーナー"の前からちらっとレジの方を見た。
彼女は相変わらず笑顔で大学生らしき男の応対をしていた。
...そうだよな。
彼女にとって俺はあくまでも"客のひとり"なんだ。
俺が"客"だから笑顔を向けてくれるんだ。

そう思ったらなんだかだんだんムカムカしてきた...。
こういう時はタバコの量が増えるのだ。
今日は3箱にするか。

俺はいつものように彼女のいるレジに買い物カゴを置いた。
「それから、マルボロ...」
「2箱ですね?」
俺が"3箱"と言う前に彼女は赤と白のパッケージを2箱、手にしていた。
「あ、はい。」
思わず俺がそう答えると、彼女はにっこりと笑いながらカゴの中のものを取り出してしていった。

「ありがとうございました!!」
彼女の声を背中で聞きながら俺は店を出た。
なんだか笑顔が勝手にこぼれてきて、俺はひとりにやにやしながら家路についた。


コンビニは年中無休。
そして、たぶん恋も。

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一見そうは見えませんが、Triの番外編です^^;
タイトルは槇原敬之さんの曲から(ほんとにタイトルだけですが..."24hr"=24時間営業、ということで)
誰の一人称かはあえて秘密で(ばればれ?)
またつづきが書けたらいいなぁと思っております(^^)
[綾部海 2004.4.20]

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