NO,74  合法ドラック    

−その日まで−

 


 花屋「仔猫の住む家」・・・それは、彼ら"Weiβ"6名が黒き獣達を狩る『闇の処刑人』に表向きとして、与えられた顔・・・。
 いつものように、ミッション・プランナーとして役割を担っている、三尋木から、これからの任務説明を受けている彼ら達と、持ち合わせている能力を高く買われ、行く行くは、「KB」のチームSide Cに配属になる予定であるも、その場に居た。

「・・・えっ!?合法ドラック!?」

三尋木からの説明の途中、聞き慣れない言葉には思わず、声を上げてしまった。

いつもは、何を聞いても動じないが、突然、声を出したため、彼らは少し驚いたようだ。

「・・・?どうかしたの?」

そう柔らかに訊いてきたのは、このチーム最年少と思われる、ミシェルと云う小柄で可愛い少年。

「えっ?あっ、ごっ、ごめん」

"きっ、気にしないで"とは、慌てながらも続ける。

しかし、ミシェルは心配そうな顔つきでを見つめる。

勿論、それは他の5名も、同じことである。

「あのっ、三尋木さん・・・。今まで、麻薬系のドラックでの混合のケースはあまりなかったはずですよね?」
「そうね。今回は、"オーファン"と、少し違ったものが合わせられて作られているようだわ」

の意見に、三尋木は冷静な態度で応じた。

「後は・・・資料の通りよ。このドラックが広まらない内に、ターゲットの処刑。そして、そのドラックの抹消。各自、装備の携帯。ミッションに移行。―――いいわね!?」

そして、三尋木によって、彼らの名が1人ずつ呼ばれていく。

「ケン」
「あぁ、わかってる」

ケンと呼ばれた青年は、軽く頷いてみせる。ちなみに、彼は元"Weiβ"の一員である。本名、飛鷹 健。

「ミシェル」
「はいっ」

元気よく答える、ミシェル。本名は、ミシェル・E・コンラッド。

「ユキ」
「・・・はい」

あまり笑った顔を見せない、どちらかと云うと無愛想に近い少年、ユキ。

N.Y.の事件後、心を閉ざしたようになってしまったが、此処に来て、少しは馴染んできたようだ。

孤児のため、本名は不詳。

「フリー」
「O,K!」

元、Side Aで活動していた成年、フリー。こちらも、本名は不詳である。

「クロエ」
「――Ja(ヤ)」

綺麗な容姿で女性に優しくをモットーにしているクロエ。本名、エドワード・R・クローツニク。

「アヤ」
「了解」

このSide Bの筆頭になっている、アヤと云う青年。

彼もまた、ケンと同じく元"Weiβ"の一員で、日本人だ。本名、藤宮 蘭。

「そして―――
「はっ、はい!」

最後に自分の名が呼ばれて、慌てながらもしっかり返事をする

彼女も日本人なため、本名は、 と云う。

の役割は、彼ら達、6名の後援。

常に、危険を伴う任務をこなす彼らを、影から助ける・・・という働きをしている。

「結構。白き者達を護るため・・・セット!クリプトン・ブランド(KB) SideB。K.Rの名の下に」

三尋木の言葉が終わると同時に、各自、部屋を出て行く。しかし、1人だけ出て行こうとしない者がいた。

「・・・?」

その場から一歩も動かない、微動だしないに、ユキは気付き、静かに声をかけてみる。

「えっ!?・・・なっ、何?」

ややあって、は顔を上げて、ユキと視線を合わせた。

何か考え事でもしていたのだろうか?任務前に考え事ととは、珍しい。

それとも―――・・・。

「何って・・・体の調子でも悪い?」

の様子に、心配になったらしく、ユキはもう1度、念のため訊いてみた。

「えっ?あっ。なっ、何でもないよ!」

渇いた笑みを浮かべる

「それなら、いいけど・・・無理はいけないから」

対するユキは、真剣な表情でを見つめる。

「うっ、うん・・・。大丈夫。心配しないでっ」

無理矢理、笑顔を作ってユキを安心させようとする。

そのの笑顔が、ユキには哀しそうに映ったのだった。

「・・・おーいっ。ユキに、ー?何やってんだ?置いていくぞ!」

と、その時、廊下からケンの声が、とユキの耳に届く。

「ごっ、ごめん!今、行く!」
「・・・わかってるよ」

は焦りながら、廊下に向かって、そう叫んだ。ユキは、聞こえるか聞こえないかの声で返事をする。

「あっ、そうだっ!ユキ、これからも宜しくねっ!」

廊下に繋がっている出入り口へ向かって歩き出す。

そして扉のニ、三歩手前でユキを振り返ると、そう言った。

・・・?」

どうやら、いつものに戻ったようだ。

しかし、の発言に不思議な顔をするユキ。

改めて云うことだろうか・・・?と思ってしまう。

「いつまで、一緒に居られるか、分からないけど・・・それまで、宜しくね」

そのの言葉が何を意味しているのかが、ユキにはすぐに理解出来た。

多分、もしかしたらの話だが、は、いつかSide Cに配属される予定・・・

そのため、行動が別々となるのは当たり前で・・・この6人とは会えなくなる可能性があるからだ。

大袈裟かもしれないが、"一生の別れ"となるかもしれない。

「・・・わかったよ。でも、僕だけじゃないだろ?」

そう、ワザと言い返せば、は軽く笑って、こう答えた。

「皆には後でね。ユキには、1番、最初に言いたかったから!」
「・・・

"何故?"と理由を聞かなくても、が皆まで言わなくても・・・何か、の云いたい事が分かるような、そんな気がユキにはしたのだった。

「それじゃあ、行こう!」
「うん」

は踵を返し、部屋を出て行く。

そのすぐ後を、ユキは追うカタチになった。

そう、いつか、彼女の後からではなくて、先になって歩けるように・・・

そして、"一生の別れ"にならないようにするために・・・

その日まで、僕は・・・――――。

 

強くなっていなければならないんだ。きっと。

 

                                       E N D

あとがき・・・
 はい、久しぶりの百のお題からでした。今回は・・・本当は6人の予定だったのですが、どういう訳かユキくん夢になってしまいました。最初の予定では、結構短く、コンパクト(笑)に纏めるはずだったのですが、いつもと同じぐらい(?)になってしまいました。任務前のワン・シーンのようなものですね。
ユキくん夢は、書いていても、考えても楽しいですし。後は、ミシェルですね。
それでは、此処まで読んで下さって有り難うございました。
御感想などありましたら、BBSかメール・フォームに下されば、とても嬉しいです。
次の夢を書く力となりますv それでは、失礼いたします。
                                       2004.8.2.ゆうき