a Transfer
朝から、雲一つなく、すっきりと気持ち良く、晴れている本日。
そう、今日は、エドワードとアルフォンスにとって、こちらでの学校生活が始まる、大事な日なのだ。
その大事な日に、雨など悪天候にみまわれたりしたら、折角の転入初日、朝から、気持ちがいいものではなくなってしまう。
やっぱり、こうでなくっちゃねっ!
は制服に着替え、自室の東側に面してつけられている、小さな窓から青一色で出来ている空を見上げ、そう思った。
机の上に用意してある鞄を持ち、出入り口となっている扉に向かう。
一方、エドワードとアルフォンスの2人も、それぞれの制服を着て、部屋を出る。
その時、丁度良く、の方も着替えを済ませ、部屋から出てくるところだった。
の通っている蓮妃女子は、セーラー服。
エドワードが通うことになっている榠架高はブレザー、アルフォンスは中学制服の定番、学欄・・・となっている。
エドワードもアルフォンスも、きっちり個々の制服を着こなしている。
まるで、今日から、新しい学校生活を送る転校生のようではなく。
は、この兄弟が転校慣れしているようにも、見えるのだった。
「ぴったりみたいだね、2人共」
は自分がいる位置から、2人に向き直って軽く笑顔でそう声をかける。
こちらに来て、すぐに送られてきたエドワードとアルフォンスの制服。
はそのことを、疑問に感じ"これも、あっちで済ませてきたのか?"と、聞いてみたところ"はい、そうです"アルフォンスは、そう返事をした。
それに少し照れてながら、自分の着ている学欄を見下ろす。
「あっ、はい。ちょっと心配だったんですけど、丁度良くて良かったです」
そして、顔を上げの笑顔に応えるように、アルフォンスもまた笑顔で言葉を返した。
「さん」
「ん?何?」
とアルフォンスに自分の名を呼ばれて、答える。
「その制服・・・素敵ですね。さんに、とっても似合ってます。ねっ、兄さん!」
満面の笑みで、そう言って、アルフォンスは自分の後方にいる、エドワードに目を向ける。
「あっ、あぁ。・・・まぁな」
突然、アルフォンスが自分に、振ってきたため、エドワードは少し戸惑いながらも返事をする。
実は、この台詞、エドワードが言うはずで、言い出すタイミングを伺っていたのだが。
見事に、弟に持っていかれてしまい、心の底で悔しがっていたりもする。
しかし、エドワードのことだ。
アルフォンスみたいに、素直で真っ直ぐな表現はしないだろう。
それでも、自分なりに言葉を考えていたエドワードなのだが。
「ありがとう。エド、アル。じゃあ、そろそろ行こうか」
2人、両方にお礼を言って、出掛けるように促し、階段を降りていく。
は、果たして、どちらかに言って貰えた方が、嬉しいのだろうか?
エドワードか・・・やはり、アルフォンスか。
「はい、そうですね」
「―――・・・そうだな」
アルフォンスに続けて、エドワードも階段を降りる。
玄関で、3人はそれぞれ、その学校専用の靴を履く。
それに気付いて、の母がリビングから姿を見せた。
「じゃあ、行って来るね!」
その母に、は少し手を上げ、元気よく挨拶をする。
「「行ってきます」」
エドワードとアルフォンスの、2人は軽く御辞儀をした。
「はい、いってらっしゃい。3人共、気を付けて行くのよ」
の母は笑顔で、玄関先へ出て3人を送り出す。
「わかってるって!」
にしてみれば、毎日、出掛ける際にこう言われているため、半分ウンザリしていた。
心配してくれるのは、ありがたいんだけどね・・・。
そして、3人は家を出て、通学路となっている住宅街を歩いていく。
少し、経ったところで、の左隣りを歩いていたアルフォンスは、キョロキョロと辺りを見渡し、に声をかけた。
「さん、もしかして、この辺・・・結構、変わりました?」
「ん?・・・そうだね。昔は、空き地や駄菓子屋さんがあったんだけど・・・潰されちゃってマンションにされたみたいだよ」
アルフォンスの疑問に、しっかり答える。
「そうなんですか」
「うん、そう」
と呟くように言った、は、何処か寂しそうに、映っていた。
それから、暫らくして十字路に差し掛かった時、アルフォンスは、とエドワードと、向かい合せになるような形で、左の繁華街に続いているくだり坂を指差す。
「じゃあ・・・さん、兄さん。ボクはこっちだから」
「あぁ、そうだな」
と一言で済ませてしまうエドワード。
「あっ、そうだっけ。気を付けてね」
「はい、ありがとうございます。―――それじゃあ」
と言って、アルフォンスは一路、中学校方面の道を掛け出して行った。
少しの間、2人は立ち止まってアルフォンスの後ろ姿を静かに見送った。
こうして、エドワードとの2人は、互いに背向かいに建っている学校の前に到着した。
「ねぇ、エド・・・」
朝から、少し不機嫌な様子のエドワードを心配し、声をかける。
もしかしたら、気のせいかもしれない。そう見えるだけかもしれない・・・。
でも、念のため、はエドワードに、聞いてみることにした。
「ん?なんだよ?」
声をかけられたエドワードは、いつものように返事をする。
勿論、と視線は合わせる。
その表情は、普通に見えたのだが・・・。
「あっ、ごめん。やっぱ、何でも・・・ないや」
あれ?でも、怒っているような気がするのはどうしてだろう?
慌てて、苦笑混じりに"何でもない"と言うに対して、エドワードは一息ついて
「―――・・・あのな、」
と切り出そうとした、その時。
「おっはよー!!!」
いきなり、明るく元気が良い声が、その場に飛び込んで来た。
の親友のだ。
その後から、何人かやってくるのが見える。
「あっ、おはよ。今日は早かったんだ」
落ち着いた態度で、挨拶をする。
その友人達のテンションに、あっけにとられそうになってしまう、エドワード。
「・・・」
"オレ、行くから"と続いて言おうかと口を開く・・・が。
の隣りに、ちょこんと立っているエドワードに気付く達。
「「「「きゃーっ!!可愛いーっっ!!」」」」
「なっ!?」
突然の甲高い声に、エドワードはその場であやおく態勢を崩しそうにもなる。
そのことに、唖然としているエドワードに、容赦なく女子達の質問攻めが開始されてしまう。
「ねぇ、ねぇ。君いくつ?」
「名前はなんて言うのかな?」
「、ダメだよ。可愛いからって、学校に一緒に連れてきちゃぁv」
一体、何歳だと思っているのだろうか?彼女達は・・・。
が隣りを見ると、あきらかに、不機嫌ゲージ上昇中ともとれるような表情になっている。
下手をすると・・・・。子供扱いが嫌いなのを知っているのは、と弟のアルフォンスだけ。
それに、禁句となっている言葉を使ったら、どうなることやら。
は、誰かがその言葉を言わないかハラハラしながらも、タイミングを見計らって達に話かけた。
「あっ、あのね!エドは、小柄だけど15歳なのっ!そっ、それで、隣りの榠架高の生徒なんだよ」
「えーっ!?嘘はよくないよー」
「ほっ、本当なんだってば!信じてよ」
必死になって達に、訴えている。
「・・・まぁ、がそこまで言うなら信じるよ」
一息おいて、がそう言った。
「そうそう、ここで泣かれても困るもんね」
と、1人が冗談を言ってをからかう。
「泣きませんっ!!」
「――――っと、そうだ。あっ、あの。エド・・・?」
先ほどから、ずっと黙りっぱなしエドワードが心配になり、はおずおずと声をかけてみる。
俯いているため、表情がよく見えない。
仕方がなく、は少し屈むことにし、エドワードを覗き込んだ・・・と、その瞬間。
「!!??」
微かにだが、一瞬、エドワードの唇が、の唇に触れた。
「「「「きゃーっ!!」」」」
傍にいた達は、勿論のこと回りにいた学生達も驚いてしまう。
しかし、エドワードは平然としている。
「今回は、我慢してやるよ。・・・今のは、その代わりな」
と片目を瞑ると、小さな声でに、囁く感じで、そう言った。
「・・・ ・・・」
はエドワードの行動に、まだ呆然としてしまっている。
「それじゃあ、また帰り!」
そんな、を残して、エドワードは自分の学校へ走り去ってしまった。
この後、が、達は勿論、回りにいた同級生達に質問攻めにあってしまうのは言うまでもなく・・・。
E N D
あとがき。
はい、後書きでございます。いかがだったでしょうか?
久しぶりの現代版・パラレル夢です;結構、間があきましたよね;
今回、微妙に中途半端ですね;すいません。こんな感じで書いてみたかったもので(汗)
途中までエルリック兄弟夢っぽいですが・・・一応、エド夢ですよ;
次は皆さんお待ちかね!あの方の登場!でございますっ!!楽しみにしてて下さいねっv
御感想などありましたら、BBSまで下さいね。
では、失礼します。
2004.3.3.ゆうき