鋼錬<現代版・パラレル>正月・エド夢。

 

 

 

    頑張っている君へ


 エドワードが通っている、進学校で有名な榠架高では冬休み、始まって早々"冬期集中勉強合宿"というものがあり、希望者のみの自由参加となっている。

しかし、希望者のみと云うと、少ないと思われがちだが、毎年1・2年、それと、受験を間近に控えている3年にも、この勉強合宿は好評らしく、結構、多くの生徒が参加していた。

無論、エドワードも、その合宿に参加することにしたのだ。

一方、が通っている蓮妃女子にも、そう云った勉強合宿がある。

だが、参加希望書の募集・締め切り・合宿の日程は、勿論のこと、榠架高と比べると期間が4日間と短いのだ。

ちなみに、榠架高の合宿日程は12日間と、2週間弱あり、クリスマス前から、年明けまでと長い。

は、今年、あえて参加しなかった。

何故かと云えば、昨年参加したため、どういうものなのか分かっていたからである。

3年間、出ていた先輩に言わせれば、"毎年やることは変わらない"ということだ。

それならば、家で自習をしていた方が、効率が良いとは、そう判断したのだ。

エドワードとは、十年越しの再会となり、今年は一緒に、クリスマスや年末共に過ごせると思っていたのだが、勉強合宿というものへ行ってしまっては、意味がなく。

は、自室のベットの上で天井を見上げ、溜め息をつく。

時刻は、午後10時をまわっていた。

あと、数時間で年が変わり、来年となってしまう。何か、今年は早かったような・・・変な感じになる。

 

そういえば、午前0時から通信規制が入るんだっけ。

 

はふと、あることを思い出し、上半身を起こすと携帯に目をやる。

それは、夕方のニュースで、明日の午前0時から3時間、携帯での通信が規制され、メールのやりとりが困難になるというもの。

 

今のうちに、グリーティング、もしくは、時間帯指定で送っておいた方がいいかも。

 

そう思い、傍らに無造作に置かれている携帯を取り、開いて・・・さて、誰に送ろうかと、は考えてみる。

一通り、登録してあるアドレスを眺めていて、ある名前のところで手が止まる。

 

エド・・・今、何してんのかな?やっぱり、勉強してんのかな・・・?

 

下手な言葉を送って、困らせたくはない。

勿論、勉強の邪魔もしたくはないのだ。

もしかしたら、明日に備えて、もう寝ているかもしれない。

暫らく、その場で悩んでしまうのだった。

エドワードに、送るべきか、そうではないか・・・かを。

今回の、この榠架高の勉強合宿は、最初にも説明したように、強制参加ではなく、希望者のみの自由参加。

エドワードの、個人の意思で参加している訳だから、尚更だ。

それに、にとってエドワードは、大切な人でもあり、大好きな人。

それは、エドワードにしても変わらない。

ここで、悩んでいても仕方がないため、送ってみることにした。

メッセージをうち、時刻設定をし、送信する。

暫らくして、"送信完了"の文字が画面に表示されるのを確認すると、他の友人にも同じようにメッセージを送っていく。

そして、だいたい送り終わり、静かに携帯を閉じる。

それから、数時間が経ち、午前0時、年と日付が変わる。

その少し経った後も、エドワードからの連絡はなく。

 

まぁ、制限されているから無理なのかも。

 

起きていても何もすることがないため、は寝ることにし、ベットへ入ろうとした・・・ ・・・次の瞬間。

 

聞き覚えのあるメロディが携帯から流れてくる。

いきなりだったため、は、心臓が飛び跳ねるぐらい驚いてしまった。

すぐさま、は携帯をとり、ディスプレイを見る―――・・・。

 

画面には着信・・・ ・・・そして、"エドワード"の名が表示されている。

は慌てふためいて、携帯を通話可能にする。

 

「もっ、もしもし!?エド!?」

『あっ、か?オレだけどさ。―――・・・元気か?』

 

いつもの聞き慣れた声が、の耳に入ってくる。

何か、ぎこちない様子で聞いてくる声の持ち主、エドワード。

 

「えっ、あっ、うん。元気・・・だよ」

 

の方も、ぎこちなくなってしまう。

再会して何時もお互い、身近に感じていたが、この時は少し遠くに感じていた。

それは、距離ではなく・・・。

幼少の頃、別れて、今までの十年間、もう2度と会うことはないだろうと、思っていたから、その分、今になって余計に会いたく、愛しい気持ちが強まってしまう。

 

『そっか。なら良かった。・・・いやさ、アルの奴がに電話しろって煩くってさ。今さっきもメールで―――・・・』

 

とエドワードは落ち着いた声で続けようとしたのだが。

 

「えっ、エド〜〜〜・・・」

 

は、その愛しい声に、堪えきれずに、つい泣き出してしまう。

 

『なっ!???なっ、泣いてんのか!!??』

 

電話の向こうのエドワードは、突然のの様子に驚いてしまった。

 

「だって・・・だってさ、折角会えたのに。今年は、一緒にクリスマスや年末も過ごせると思っていたのに」

 

自分自身、何を言っているのか分からなくなってしまう。泣いて、困らせるはずではなかったのだが。

 

『わっ、悪かったよ。ごめんっ』

「連絡もないし・・・大変なのは分かって・・・るんだけど、寂しかったんだから―――・・・」

 

途切れ途切れに言葉を繋いでいく

まさか、泣かれるとは・・・思っていなかった。

幼い頃と、今こちらに来て、半年経つが、の泣き顔を1度も見たことがなかったエドワード。

それは、ただ、がエドワードとアルフォンスの兄弟の前で、泣くことをしなかっただけなのかもしれないが。

の母曰く、もまたエドワードと同じくらい負けず嫌いな性格だと云う。

 

『悪かったって。・・・だから、泣き止んでくれよ。なっ』

「うっ、うん・・・」

 

何とか、泣いているを、宥めて、ホッと息をつくエドワード。

しかし・・・

 

はっ・・・くしゅんっ!

『・・・ ・・・』

あっ、やべぇ・・・。

 

「えっ!?エド?」

 

可愛いくしゃみが聞こえて、は一応、エドワードを呼んでみる。

 

『あっ、悪い・・・』

 

エドワードは鼻をすすって、答えた。

 

「風邪・・・でも引いたの?」

 

勉強詰めで疲れて風邪でも引いたのかと思った、は、心配そうな声でエドワードにそう聞いてみた。

 

『いや、風邪じゃないと思う』

「・・・ ・・・それじゃあ・・・」

 

"何なのか?"と言いかけて、あることがの脳裏によぎった。

 

「―――・・・今、何処にいるの?部屋なの!?それとも―――?」

『うっ・・・』

 

エドワードは電話の向こう側で、の問いに思わず、言葉を詰まらせてしまう。

それもそのはず、エドワードは、宿の外からかけているのだ。

 

「外でなんか、電話してないよね!?」

『―――・・・してる』

「・・・やっぱり」

 

そう答えるエドワードに、がくっと肩を落とす

 

『だってよ、中で電話なんかしたら、からかわれるだろうからさ。下手したら、見回りの先生に見つかるだろう?』

「だからって、何も外で・・・ ・・・」

 

しかも、真夜中に。平地ならそんなでもないのだけれど、エドワードの合宿所は山地。

夜になると、ぐっと冷え込んでしまうのだ。

 

『そっ、外の方がいいんだよっ。風呂上りだからっ』

 

と言い切って誤魔化す、エドワード。

かける時はそんな意識していた訳ではなく、段々との声を聞いていくうちに、自分の身体全体が熱くなっていくのが分かる。

 

「もう、あまり心配させないでよ。風呂上りなら、尚のこと部屋にいた方が・・・」

『いや、いいんだ。それより、

 

「?何?」

 

真剣な声になるエドワードに、静かに耳を傾ける

 

『本当に、ごめんな。寂しい思いをさせて・・・二度目だもんな』

 

一度目は、何も言わずに引越してしまい、余計に寂しく、悲しませてしまったこと。

二度目は・・・今。

 

「えっ、あっ。こっちこそごめん」

 

折角、電話をかけてくれたのに、いきなり泣いて困らせてしまって・・・。

 

『もうこの次は、絶対、こんな思いはさせない・・・約束するよ。だから泣くなよ?オレはお前の―――・・・』

 

と言いかけて・・・

 

くしゅんっ!

 

本日、二度目のくしゃみをしてしまうエドワード。

いい雰囲気になっていたが、このくしゃみのせいで台無しとなってしまった。

二人きりでなければ話せない、伝えられない言葉があった。そう、あったのだが。

 

「・・・ ・・・」

『・・・ ・・・』

 

暫し、沈黙。

 

「もっ、戻った方がいいんじゃない?まだ後、二日あるんでしょ?」

 

と、その可愛いくしゃみに吹き出しそうになりながらも、はエドワードに声をかける。

 

『・・・おっ、おう』

「じゃあ、あと二日、頑張って。気を付けて帰って来てね。待ってるから」

『あっ、あぁ。サンキュ』

 

いつの間にか、いつものに戻っているようで、エドワードはホッとした。

そのまま普通に電話が切られるかと思われた時。

 

「・・・―――っと、エドっ!!」

 

急に、はエドワードを呼び止めた。

 

『ん?』

「あけまして、おめでとう!今年もよろしくねっ」

 

と改めて、新年の挨拶をする。一番、最初にしたかった相手なのだから。

 

『あぁ。じゃあ、また明後日な。・・・メール、サンキュ』

 

「うん。じゃあ、おやすみなさい」

 

『おやすみ』

 

そんな普段と変わらない挨拶を交わして、は眠りにつき、エドワードは部屋へと戻って行った。

 

 

 

エドワードが伝えようとした言葉・・・それは――――・・・。


 

 

 

 

                                      E N D


あとがき・・・

 はい、遅くなってしまってすいませんでした。

何と云いますか、正月夢は書かない予定だったんですけど;

鋼錬、現代版・パラレルにてエド夢にしたら面白そうかなと思い、書くことにしました。

もう少し、早く更新出来たら良かったんですが、色々忙しくて・・・(言い訳;)

あと、微妙に中途半端ですね;すいません。

エドが言おうとした台詞は皆様の御想像におまかせします(オイ;)

せっかくなので、希望者のみフリー配布とさせて頂きます。

欲しい方(まず、いないと思いますが;)は持ち帰る事前に必ず、BBSかメールにて連絡下さい。

期限は本日、5日から1週間とさせて頂きます。期限、切れましたので持ち帰らないで下さいね。

勿論、パクリや二次配布は禁止ですよ。

それでは、今年も皆様にとって良い年でありますように・・・。

                                     2004.1.5.ゆうき