Confront! −兄と弟−

 

 エドワードとアルフォンスの、エルリック兄弟が、無事にとの再会を果たして、下宿することとなった、次の日の夜のこと。

エドワードとアルフォンスは、それぞれ用意された机で、自主勉強をしている。

も、勿論だが両親も、エドワードとアルフォンスの二人を暖かく迎え入れた。

の家は、そんなに広くも、狭くもない。

丁度良いことに、六畳の部屋が二つ空いていて、一人ずつ使うようにと奨めたのだが、二人は、"一緒の部屋でいい"と声を揃えて答えた。

そんな二人を見ていて、は羨ましく思えたのだった。

何故、この時間まで、自主勉強などやっているかと云えば、明日から、二人は個々の学校へ行くことになったからであった。

"あちらの方で、手続きを済ませてきた"とアルフォンスから、はそう聞いた。

そのため、少しでも勉強しておきたいのだろう、この兄弟は。

そこへ、が二人分の夜食を運んで来る。

コンッ、コンッ、コンッ。

しっかり、三回ノックをする。

そして、中の二人を、刺激しないように静かに、声をかけてみる。

 

「エド、アル。夜食、持ってきたよー」

 

暫らく、間があいて、内側から扉が開き、アルフォンスが顔を出す。

 

「あっ、さん。ありがとうございます」

 

と、丁寧に礼を述べる。

 

「いいえ。大したものじゃないけれど・・・―――って、お邪魔だったかな?」

 

は、部屋の様子を見通し、きまづそうに口を開く。

何故なら、アルフォンスの机の上には、まだやりかけであろう、ノートが開いたままになっていたらからだ。

一方のエドワードは、集中しているためか、背を向けたままの体勢。

 

「そんなことないです」

 

と柔らかな表情で、を招き入れるアルフォンス。

は、まだ机に向っているエドワードに気を遣い、音をたてないように、そっと部屋の中へ入る。

何事も一生懸命にやるのが、この兄弟の良い所だと思う。

 

「兄さん、1回休憩しない?さんが、夜食を持って来てくれたよ」

 

まだ背を向けているエドワードに、アルフォンスが声をかける。

 

「・・・んー、そっだな」

 

と、言ってその場で伸びをし、座っている椅子を180度回転させ、アルフォンスとがいる方に向き直った。

 

「――――・・・、お前、いつ来たんだ?」

 

どうやら、エドワードは、が居ることを不思議に思ったらしい。

少し、顔を顰める。

 

「今さっきだけど・・・やっぱり、邪魔だったかな?」

 

しゅん。と元気なく項垂れる

エドワードの、少しぶっきらぼうな所は昔から変わらず、自身もそれを分かっていたはずだが。

 

「ボクが入ってくれって言ったんだ。兄さん、集中してたみたいだし」

 

と、に続けてアルフォンスが言う。

"それに、女の子には、優しくっ。って、いつも言ってるだろ?"

"さん、気にしないでね"

とアルフォンスは、を宥める。

 

「ありがとう、アル。―――っと、そうだ。二人に聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

 

何かを思い出したように、は二人に向って言った。

 

「何ですか?」

 

「あぁ。別に、構わないけど」

 

アルフォンスとエドワードは、返事をする。

その二人の返事を待って、はこう質問することにした。

 

「えっと、二人は学校決まってるんだよね?」

 

「はい。ボクは、此処から少し離れた中学へ行くことになりました」

 

その質問に、しっかりと落ち着いた声音で応えるアルフォンス。

 

「オレは、男子高」

 

とても不服そうに、エドワードはそう応えた。

だいたい、何で、此処まで来て、野郎と肩並べて勉強しなきゃならねぇんだよ。

―――ったく、全部、あいつのせいだっ!!と、心の中でぼやく。

 

「男子高って、ここら辺で言ったら・・・ ・・・もしかして!!」

 

突然、声を張り上げるに、エドワードは少し驚いてしまう。

 

「なっ、なんだよ!?一体??」

 

「あの、進学校で有名、ハイレベルな学校、榠架高!?」

 

と、は目を見開いて、エドワードに聞いてくる。

 

「そっ、そうだけど・・・?」

 

の驚きように、おずおずと返事を返すと、は、先ほどよりもっと驚いてしまった。

 

「さっ、さすがは、エド・・・。すごいね」

 

「―――そうか?でも、そんなに驚くことじゃないだろ?」

 

と、苦笑混じりのに、さらりと返すエドワード。

 

「まっ、まぁ。それは、そうなんだけどね。実は、榠架高。うちの蓮妃女子のライバル校なのっ!!」

 

「そっ、そうだったんですか!?」

 

の発言に、アルフォンスは、思わず声を大きくしてしまう。

 

「じゃ、じゃあ、さんの通っている学校も、すごいんですか?」

 

「・・・まっ、まぁ。いっ、一応ね」

 

しかし、自分の学校を、すごいとは言いづらく、は、適当な言葉を作って、渇いた笑みを浮かべる。

 

「それにね・・・」

 

「「それに??」」

 

の顔つきが、真剣そのものに変わり、それに反応してかエドワードとアルフォンスの声が二つ揃った。

 

「・・・その榠架高・・・」

 

「「?」」

 

の次の言葉を大人しく待つエドワードとアルフォンス。

こんなに真剣になるようなら、その学校に何か、あるのだろうかと二人は思ったのだが・・・

 

「うちの、すぐ裏にあるのよー!もう少し、離れていれば良かったんだけどね」

 

"うわぁ、すっごく微妙〜!!エド、目立つから、すぐに目をつけられるわー!"

と半分、嘆いて頭を抱えてしまっている。

そんなの様子に、二人は脱力してしまった。

 

「・・・、心配すんなって!オレ、ケンカ強いから!!」

 

「ボクより、弱いくせに」

 

ガッツポーズを決めてみせる、エドワードに横から口を挟むアルフォンス。

 

「うるせぇやっ」

 

と、エドワードは言い返す。

 

「あっ、その、目つけられるんじゃなくて・・・」

 

戸惑いながら、は両手を左右に振って、言いにくそうに口を開く。

 

「なんだよ?」

 

「エドは、絶対、必ずっ、モテるからっ・・・ ・・・そういうことよ!!」

 

"うあぁ〜"と、また俯き、頭を抱えてしまっている。

は、自分で何を言っているのか分からなくなってしまった。

 

「―――・・・何だ、そういうことか」

 

一息ついて、エドワードはそう言った。

エドワードのその言葉に少し、ムッとしては顔を上げる。

 

「何だってことはないでしょう?」

 

「だって、そうだろ?・・・オレ、お前以外に興味ないから」

 

と、また、さらりと言い切ってみせるエドワード。

その目は、を確かに捕らえていた。

 

「はっ!!??」

 

いまいち、エドワードの言葉が理解出来ないで、ボーッとしてしまっているを、よそにエドワードは、アルフォンスと向かい合って

 

「勝負だなっ!アル!!」

 

ニヤリと笑みを浮かべてみせる。

 

「そうだね!兄さんには絶対、負けないからっ!!」

 

エドワードの発言に、アルフォンスはこう応えた。

 

 

「「勝負っ!!!」」

 

 

これからの、勉強においても、体力、ケンカにおいても・・・ ・・・それとのことについても―――・・・。


 

さて、この勝負。 どちらが勝つのであろうか!?

 

 

 

                              それが分かるのは、数年後のこと。


 

 

 

 

                                            E N D

あとがき
 はい、現代・パラレル版の第二弾でした。いかがだったでしょうか?エドって、さらりと遠まわしに台詞を言いそうですよね。もしくは、照れながら顔を背けて言いそうな感じですねv
日記の方に、エドVSアルと書きましたが終わってみると、普通のエルリック兄弟(エド寄り)夢になってしまいましたね;
というか、エドVSアルの序章ともとれますね;これからですよ!みたいな感じです。
一応、1区切りずつなので、この話は終わりです。次は、エド夢の予定でいます。
でも、先に、クリスマスドリームを書いていかないといけませんね。
こんなのでも気に入って下されば幸いです。御感想など、ありましたらBBSまで。
それでは、失礼致します。
                                         2003.12.16.ゆうき