「俺、今、駅前にいるんだけどさ、出てきてくんない?」

あと数時間で時刻が変わるという時刻に。

いきなりクラスメイトの悟浄からの電話。




「え?何?いま、何時だと思ってんのさ?」

「悪いな〜〜とは思ったんだけどさ、ごじょさん、一生のお願い!」

電話越しでも両手を合わせているだろう悟浄が脳裏にありありと浮かんできて。

はぁ・・・とため息をつきながらも悪い気はしない。





「もう、しょうがないから行ってあげる。待たせちゃうけど平気?」

「え?そんなに時間かかんの?」

「だって、もうお風呂入ってパジャマだもん。着替えないと」

「俺としてはそっちのほうが都合が・・・」

「・・・やっぱ、行かない」

「スミマセンデシタ。駅前のスタバで待ってるからさ。」

「わかった。近くになったら携帯に電話するよ」

「ああ、悪いね。ちゃん」





プツ・・・

携帯を切って深呼吸。

くまさんのパジャマが胸元だけ激しく上下していて。

緊張していたのがわかる。





ああ、服どうしよう!?

メイクどうしよう!?

悟浄どんなの好きだっけ?

あ、あれも持ってかなきゃ!!

せっかくだし、渡したいよね?

ダッシュで身支度整えて。

自転車で風を切って駅前で向かう。

スピードは最高速度。

スカートの裾抑えるのも忘れて。

気づいたら必死でペダルをこいでる。











Ring! Ring! Ring!









「お・お待たせ!早く来てあげたよ?」




道路では車を停めてでも早く走って。

立ち乗りだって気にしてられなくて。

スタバから見えないところにチャリ置いて。

何食わぬ顔で、今、悟浄の前に立っている。

暇だし、しょうがないからって態度で。





ずっと悟浄のことが気になっていた。

いつも周りには女の人多いけど。

本気で付き合っている人はいない・・・ってからも聞いていて、

安心していた。

みんなで遊ぶ時も楽しくて。

でも多分それは「女友達」としてで。

いまさら「好き」なんて言えなくて。


だから、今夜の急な呼び出しが嬉しい。





「アリガトさんv。ほら、飲めよ」

「サンキュ」




そう言って、オレンジジュース出してくれた。

買っておいてくれたんだ・・・

汗をかいた体には心地よい。




いつもより、瞳が優しいのは気のせい?




「急に呼び出して悪かったな。親御さん、大丈夫か?」

「うん、大丈夫。今日、パパもママも居ないんだ。町内会の旅行で」

「おっしゃ!好都合!」

「ナニスルツモリデスカ?キサマ?」

「いえ、何も?」

指をポキポキならすと。

参ったのポーズをつけ、笑顔で返される。




「で?どうしたの?急に?」

「いや、ちゃんに急に逢いたくなったから。これから遊びに行かねぇ?」

「それはかまわないけど。あんまり遅くなるのはちょっと怖いし。」

「大丈夫、家まできちんと送ってやるよ。で、お前、チャリ?」

「うん。」

「じゃあさ、駅前の駐輪場においてこいよ。ここら辺、結構ブッソウだから」

「あんたみたいに?」

「そうそう。」

そう言って私の分のトレイまでもって立ち上がる。

「ほら行こうぜ?」

「う・・うん」

さし伸ばされた手をつかんで、私も立ち上がると。

さりげなく渡されたハンカチ。

・・・・バレテルのね?急いできたこと・・・・
















「うわ!無理!これ、絶対無理!!」

「大丈夫だって、こうやって、照準合わせて・・・」

「悟浄がやってよ〜〜。チョッパー絶対に欲しいもん!」

「自分でやらないと感動薄いじゃん?教えてやっからヤッテみろって」




駅前のゲーセンに場所を移して。

2人してゲームをしている。

今狙ってるのはUFOキャッチャーのチョッパー!

店も考えてるわね。

しっかり取りづらそうなところにおいてるし。

 

「あれは無理だよ!絶対!」

 


こういうのは悟浄がうまいのに。

なぜかヤッてくれなくて。

必死で無理だと答えると。




「しょうがねぇなぁ・・・」

といって、背後から腕を回されて、コントロールキーを私の手の上から押さえてる。

自分がすっぽりと悟浄の腕の中に納まって。

悟浄の厚い胸板を、背後に感じて。




どきん。

跳ね上がる心臓の音。




「ご・・ごじょっ!?」

「ホラ、きちんと前向けよ。取り損ねるぞ?」

「耳元で話すなぁ!!」

「はいはい、ちゃんはお子様でちゅね〜〜〜」




ドンッ!

「ってぇ!!!」




ピョンピョンと右足を抱えながら飛び跳ねている。

もう、変なコトいうから!!

やっと取れたチョッパーを両手で抱え、ふんっ!と怒りを込めてそっぽ向く。

「人、からかうからだよ!バカ!」


ふと時計に目を向けると。

すでに時刻は日付が変わる10分前。

できれば日付が変わるときに。

誰よりも一番に渡したいよね?




「ね?悟浄?」

「ナニ?あ〜〜痛てぇ・・・」

足をさすりながら目線を向けられるけど。

抗議はソッコー無視して悟浄に告げる。




「喉渇いたからさ、公園でお茶でもしない?」

「いいけど?でも大胆だね、ちゃん」

「ハッ?ナニッ?」

ワケわかんない。

たまに悟浄ってこういう悪戯ッコみたいな顔するよね?




「夜、2人きりで、誰もいない公園・・・て、ソウイウコト?」

「・・・・ブっ飛ばすぞ?テメェ?」


人がまじめに誘ってるのに!?

ちょっと頭にきて、握りこぶしに息をは〜〜と吹きかける。





「イエ、遠慮させてください。お詫びにジュースおごりますから」

「わかれば、イイ」


そう言って、ジュース二本買って、近所の芝生公園へと向かった。

もちろん、チャリ2ケツで。

悟浄、歩きで来たって言うんだもん。


・・・でも、悟浄の背中、あったかい・・・



















そしてガス灯の下のベンチに腰掛けながら。

2人ジュースを飲んでいる。


あと・・・1分


あと・・・30秒

あと・・・5秒





・・・今!





「悟浄」

「ん?」

飲んでいたジュースを横に置いて。

小さな箱を悟浄に突き出して。


瞳を見つめて。

 

最高の笑顔で。

「悟浄。お誕生日おめでとう!」




これが言いたかったの。

本当は明日、朝一番に悟浄の家に行こうとしてたの。

でも、貴方から電話があって。

ソレがとっても嬉しくて。

迷惑だってわかってたけど、日にち変わるまで一緒に居る時間、引っ張って。

「お邪魔虫」なんか入らないように、わざと公園まで呼び出して。




・・・なのに、なんで、無言なのかな?

「・・・・ごじょ?私、なんか、変なこと、言った?」




不安になって、声をかけると。

急に抱きしめられました!




「え?え?悟浄?」

「サンキュ、

いきなり抱きしめられたことに驚くと。

今度はおでこにキスされちゃいました!!





「ごじょ!!」

・・・お前に一番に「おめでとう」って言われたかったから、呼び出した・・・つったら驚く?」




え?




「ほ、本当?」

「ああ。悪いとは思ったんだけど・・・さ」

「・・・本気にして、いいの?」

悟浄はモテるから。

それにいつも冗談ばかりだから。

とっさのことだし信じられなくて。




「・・・マジ。遊びだったら、ソッコー、ヤってる。」

「・・・信じたい言葉だけど、ビミョ〜に信じられないんですけど。行動が」

「ワリ・・・でも、なんて言っていいか、本当にわからねぇんだって。」




抱きしめられた腕が少し緩み。

顔を上げてみると、そこには真剣な瞳をした、悟浄が居た。




「・・・ね、先にプレゼント見てみて?気に入るといいんだけど」

「・・・ああ」




ガサガサと音を経ててパッケージが開かれていく。

・・・案外マメ?きれいにラッピングが外されていく。




「カフス、か・・これって?」

「うん、この前遊びに行ったとき、それ、見てたじゃない?」

「ああ、サンキュ。欲しかったんだ。、付けてくんない?」

「そうね。鏡なくちゃ付けられないか」

そして、軽く悟浄の髪をかきあげて。

形のいい耳にそっとシルバーのカフスをはめる。

「んvでき・・・」




できたよ。という言葉は。

悟浄の唇にふさがれた。

いきなりのことで驚いて。

だけどかろうじて瞳だけは閉じました。




「サンキュ。。」

「・・ん」

照れて、顔を下に向けていると。

私の頭を抱え込むように抱きしめられて。




「俺と、付き合って?」

と、言われました。




「・・・いいけど。浮気したら許さないよ?」

「許さない・・・・って?」

そしてたった一言。




















「呪う」



「・・・・こわっ」

















以降、紳士に代わった悟浄君は。

送り狼にならず、しっかりお家までちゃんを送りましたとさ。










悟浄君が一生、尻にひかれたのは言うまでもありません。

















悟浄くん、HAPPY BIRTHDAY!!
甘甘だけど、少しだけ純情?


幸せな一日を貴方に。


タイトルはDreams Come True の歌から頂きました。




素敵な悟浄さん誕生日ドリーム、ありがとうございました。

『蒼月の宮』るな様から頂いて参りましたv

掲載、本人承諾済みです。