約束・・・        −八戒さん誕生日夢−

 

〇9月21日・・・当日。

下校途中、は親友のに付き合って貰い、自分達の通っている高校に、ほど近い繁華街のある時計店へ足を運んだ。

今日は、八戒の誕生日だ。

この日のために、は短期間ではあるが、やクラスメート達に、紹介して貰って、色々なアルバイトをしていた。

八戒はもちろん、他の3人にも内緒でやっていたのだった。

あやおく、このことがバレそうになったことも、しばしば。

夏休みが終わる頃には結構の金額が、貯まっていた。

そして、プレゼントは悩みに悩んだすえ、お揃いの腕時計にすることに。

だが、しかし。ペア・ウォッチだと多くの物が有名ブランドで占めている。

やはり、違う物の方が良かったのだろうか?

あまり、安い物もどうかと思ったため、高すぎず、安すぎずを基本に探しているのだが、なかなか良い物が見つからず。

今まで、に頼んで、色々なデパートや専門店を転々としたのだが。

これというものがなく、今に至る。

此処が、この付近で最後の店となってしまった。

もう少し、足を延ばせば、見つかる可能性もあるかもしれないが、は高校生だ。

しかも、今日は不運なことに平日。

休日なら遠くへでも行けるだろうし、ゆっくり探せる。

それに、今、は三蔵達と同居しているのだ。

もし、帰りが遅くなるようなら、連絡を4人の内の誰かに、しなくてはいけない。

それでも、心配することだろう。あの4人は。

としても、あまり心配かけたくないのだ。

・・・いや、ただ安易に心配されたくないと言った方が正しい。

自分の両親が心配症だったために、三蔵達、4人と同居するまでが結構大変だったのだ。

 

はーっ。と溜め息が自然に出てしまう。

1回、店内をぐるりと回ったが、ここでも見つからない。

仕方がなく、ペア・ウォッチは諦めて他の物でも・・・と考えた、その瞬間。

 

ちゃん!来て、来てっ!!」

 

奥の方で、横並びになっているガラスケースから目を離さず、は入り口付近に棒立ちになっているを呼んだ。

「―――・・・何かあったの?」

 

もう探す気力がない、は渋々、のいる方へ歩いて行った。

 

「これっ、これ見てよっ!」

 

ガラスケース越しにが、あるものに指をさした。

 

「えっ?」

 

は、の横に来てガラスケースを覗き込む。の指した先には――――。

 

「!!??」

 

そこには、メタリックな深緑の縁で、全体的に割りとシンプルなペア・ウォッチが仲良く並んでいた。

勿論、デジタルではなく、アナログだ。

その腕時計から、目を離さずにに、こう聞く。

 

「―――どう?ちゃん?」

「・・・うん。これならいいかも」

 

しかし、値段の方が気になるは、少し戸惑いながら『でも・・・』と続けた。

 

「いくらなのな・・・?高いかな?」

 

そんなを見て、は柔らかい表情でこう答えた。

 

「値段が気になるのね。―――ほらっ、ここを見て」

 

そのペア・ウォッチの横にある値札を、は指で示す。値段は・・・1万5,000円以内。

ペア・ウォッチにしたら、まぁまぁではないだろうか。

少しの間、はこの値札と睨めっこをして考える。

 

「・・・」

「ねぇ、ちゃん・・・」

 

と、が先刻から睨めっこをして何かを考えているに声をかける。

 

「ん?」

 

視線をガラスケースからに戻す、はニッコリと笑ってこう言った。

 

「もし、あれだったら私が値切ってきましょうか?」

「へっ!?・・・いっ、いいって、ちゃん!」

 

突然のの発言に、は慌てふためいてしまう。

そう、は値切るのが得意だった。

しかし、は一応お金に困って考えていた訳ではないのだ。

あの人が、気に入ってくれるかどうか・・・と、考えていたのだった。

 

「遠慮なんかしなくてもいいからっ」

「いっ、いいてば!本当に!!」

 

何か楽しそうなに、慌てている

 

「あの―――・・・」

 

そんな2人の後ろから若い女性の声がした。

 

「「はいっ」」

 

と、の2人は同時に振り向く。

と、そこにはこの店の店員が立っていた。

 

「お探しになっていた物は、ございましたでしょうか?」

「あっ、はいっ。―――こっ、これを下さい!」

 

と言い、は後ろのガラス・ケースに収まっている、先ほどのペア・ウォッチを指さした。

 

「―――かしこまりました」

 

 何とか、手持ちの金額内でペア・ウォッチが買え、はほっと胸を撫で下ろす。

一応、両方共、プレゼント用に包んで貰った。

途中、と駅で別れて、は1人で帰宅することになった。

無事にマンションへ到着し、階段を上って行く。

そして、部屋の前まで来て、はあることに気付いた。

それは、珍しく鍵が空いていたことだった。

4人それぞれ鍵を持っているから誰が入っていても、おかしくはない。

は、携帯で時刻を確認する。

7時前だ。

だから、帰っているとしたら、悟空だろうと思った。

が―――。

 

「ただいま」

 

「――あぁ。、おかえりなさい」

 

とリビングの扉を開いて出て来たのは・・・が予想していた人物、悟空ではなく、まだこの時間なら仕事中である八戒だったため、は驚いてしまった。

 

「はっ、八戒さん!?」

「どうしたんですか?そんなに驚いて」

「あっ、あのっ。仕事の方は・・・?」

 

予想もしていなかった人物の登場に、は、玄関で慌てふためいてしまう。

 

「えっ?あっ、はい。今日は早く終わったんで」

 

の質問に、優しい表情で答える八戒。

 

「そっ、そうですか・・・」

 

八戒は、まだ動揺しているに、そっと近付いてこう言った。

 

「―――というか、の顔が急に見たくなったんで、帰ってきちゃいました」

 

「えっ!?」

 

その八戒の言葉に、は前より目を丸くして驚いてしまう。

少しではあるが、鼓動が体全体に響くような、そんな気がしてしまった。

 

「あっ、そうだ。あの、八戒さん・・・これ」

 

と言って、すっと八戒の前に包んで貰ったペア・ウォッチの片方を差し出す。

 

「何ですか?」

「たっ、誕生日、おめでとうございます!あのっ、これ、ペア・ウォッチなんですけど・・・良かったら受け取って下さい!」

 

「―――ありがとうございます。大事にしますね」

と八戒は、の手から、優しくそれを受け取ると、の左頬に軽くキスをして、囁くように耳の傍でこう言った。

 

「もちろん、も大事にしますから・・・ね」

 

 

貴女に約束――――・・・。


 

 

 

                                          E  N  D


あとがき
 

お待たせしました!八戒さん誕生日夢です・・・;八戒さん、お誕生日おめでとうございますvvv

自分、この時点で結構、焦ってます。やっぱり、難しいですね、八戒さん夢って。

今回は、現代版・パラレルにて書かせていただきました。桃源郷版の『壊れた時計』とかぶらないように。

でも、『時計』と『お揃い』がキーワードですね(苦笑)

では、こんなものでも気に入って下されば嬉しいです。感想なども、BBSまで。

                                     2003.9.21.ゆうき

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