七夕の夜・・・

 

〇7月7日・・・それは、別れ別れになった織姫と彦星が年に一回逢える日。

天気予報では、晴れると言っていたが、夜になれば予報も当てにはならず、曇ってしまったりいきなり雨が降ってきたりする。

去年も一昨年も、その前も・・・昼間は晴れていたのだが、夜になると天候がガラリと変わってしまっていた。

七夕の夜が晴れている年は、今までに一度もなかったと言える。

は、買い物を済ませ七夕祭りで賑わってる商店街を抜けて帰宅した。

今日は、三蔵・悟浄に八戒までもが、仕事が忙しいため帰りが夜中になるから夕食はいらないとの連絡が入った。

商店街を抜ける際にいくつかの店先に笹の枝が飾ってあり、折り紙で出来た飾りや短冊などが沢山付けてあっ

た。キッチンで、夕食の支度をしながらは、ふと小さい頃を思い出してみた。

昔は、色々あった願いごとや夢。

何も考えずに、ただ短冊に願いごとを書いて夜空に願ってたこと。

しかし、成長していくにつれて、迷信と分かり、興味がなくなってきてしまい・・・。

今は夢はあるのだが、願うほどの願いごとなど持っていなかった。

それは、本当に小さく些細なことだったため。

は一息ついて、料理の方に集中した。

そして、だいたいのおかずが出来上がり、は掛けていたエプロンを取り、ベランダへ出て薄暗くなってきた空を見上げてみる。

と、その時丁度良い具合に悟空が大学から帰って来た。

 

「たっだいま〜!」

 

よく通る元気なその声が部屋中に響き渡り、は急いで玄関へ行き、悟空を迎え入れた。

 

「おかえり、悟空。八戒さんから連絡いった?」

「んっ、きたぜ。―――・・・皆、大変だよなぁ〜」

 

いつもの笑顔でいるに、つられ悟空も自然に顔が緩み、笑顔になる。

いつでも自然体でいる悟空だが、の傍にいると、笑顔を見るとホッとして、体が休まる感じがするのだった。

部活で、結構扱かれたのか悟空は額から汗が滲み出てくるのを、肩に掛けているタオルで拭って、玄関から部屋へあがる。

よく見ると着ているTシャツも汗で濡れている。

それに気付いたは、悟空にお風呂に入ることを進めた。

 

「ねぇ、悟空。お風呂・・・沸いてるから入ってきたら?そのままじゃ気持ち悪いでしょ?」

「えっ、あぁ。そっだな。じゃあ、入って来るよ。実は今、うちの大学のシャワー室が故障しちゃっててさ」

 

と苦笑しながら、風呂場へ入っていった。

は、タオルと着替えを脱衣所の籠に入れた後、時刻が気になり確かめるために、リビングへと戻りテレビの上に置いてある時計を覗き込むようにして見る。

時刻は、7時半をまわっていた。

は、リビングとベランダに通じているガラス戸のカーテンを少し、開いてその隙間から辺りが暗くなったのを確認し、もう一度ベランダへ出てみることにした。

暗い夜空に、ポツポツと星の輝きが増えてくる。

どうやら、今年は満天の星空が拝めそうだ。

日が沈んで、温度が下がり夜風も涼しくなってきた。

いきなり風が強く吹き付け、思わずは寒気を感じ、くしゃみをしてしまった。

クシュンッ!!

やばいと思いながらも、何故か其処から目を離せずに、空をただ見上げているを、丁度よく風呂から出てきた悟空が見つける。

 

「そんなトコにいると、風邪引くぞっ」

と悟空は、部屋から持ってきた自分の長袖の上着を、ふわっと優しくを包み込むようにかけてやった。

一方のは、いきなりのことに驚いて、慌てて振り向いてくる。

其処には、少し照れながらも笑顔でいる悟空の姿があった。

 

「あっ、ありがとう・・・///」

の方も、照れながらお礼を言った。

悟空は、もう1つのサンダルを履いて、ベランダへ出ると同様に1つずつ見え始める星を見上げた。

 

「星・・・見てたのか?」

 

空を見上げながら呟くように悟空は隣りにいるに言った。

 

「うん・・・」

 

と静かに言って、コクッと頷く

悟空は少しではあるが、の体が震えてるのが分かった。

が、あえてこの場では言わないことにした。言ったとしても、きっと聞かないからだ。

しかし、風邪なんてもんにさせたら三蔵達になんて言われるか・・・と思いながら見上げ続けているを静かに見つめた。

 

「今日、七夕だよな。たしか、織姫と彦星が年に一度逢える日・・・」

「うん、そう」

 

は、空を見つめながら呟く。何故か、その時、悟空にはの顔が哀しそうに見えてしまったのだった。

 

「んじゃあ、今年はちゃんと会えそうだなっ」

と悟空は、を元気づけようと明るく言った。しかし、の表情は変わらず。漆黒の空を見上げながら口を開く。

 

「―――・・・そうだね。ねぇ、悟空はさ、七夕伝説って知ってる?」

「ん?まぁ、一応、知ってるよ」

「あれって、織姫が仕事もしないで遊んでばかりいるから離されちゃったんだよね」

 

と淡々と話していく。その姿が痛々しくて。

 

「―――あぁ」

「でも、やっぱりかわいそうだよ・・・いくら何でも、年に一度しか逢えないなんて・・・」

段々小さく今にも消え入りそうなの声。悟空は、その震える小さな手に自分の手を重ね合わせる。

柔らかく、そっと壊さないように、手摺りを強く握りしめているその手を。

 

「なぁ、・・・」

「ん?」

 

一息ついて悟空はこう切り出した。

「もし、俺が彦星でお前が織姫だったら、一度しか逢えないとわかっていてもさ・・・」

「?」

「俺だったら何があっても絶対に、お前に会いに行くっ!」

 

と、視線を空からに戻し、真剣な表情で悟空は言い切った。

 

「!?―――・・・なっ、何言ってるの!?///」

 

と突然の、悟空の発言に困惑してしまう、

横を向いた、の目に悟空の真剣な顔が映る。その表情にの鼓動が少し高鳴った。

 

「―――だから、そんな悲しそうな顔すんなよ。俺、の悲しそうな顔見るの嫌なんだ」

 

いつの間にか悟空まで悲しそうな顔になっている。

 

「あっ、ありがとう・・・。でも、天の川があるんだよ?2人の間には・・・だから、どうやっても逢えっこないよ・・・」

「泳いで行くに決まってるだろっ!」

 

と笑顔での問いに答える悟空。

 

「!!??」

 

沈黙・・・。

 

「でっ、でも、激流だったら泳いでなんか来れないじゃない!そっ、そんなの・・・!!」

と俯き、必死に涙を堪える。そのの肩に、手をかけ自分の方を向かせると、悟空は誓うようにこう言った。

「それでも、俺は行く。この命に代えても必ず!!―――・・・だからさ、心配すんなよ。例え、織姫と彦星みたいに離れたとしても、逢いに行くから・・・!なっ!!」

 

悟空の目に迷いはなかった。

 

「・・・うん///」

 

それを見たは、1回だけ頷いたのだった。

 

「――――って、もう8時半じゃん!なぁ、。中入って飯にしようぜ!!」

 

と部屋の中の時刻を見て、悟空は思わず大声を出してしまう。

 

「あっ、そうだね。・・・ごめんね、悟空」

 

部屋の中へ入ろうとしている悟空の後ろから静かには言った。

 

「いいって。―――・・・今夜は、きっと逢えるぜ。あの2人」

 

と言って、満天の星空を見上げる悟空。

 

「―――うん。そうだね」

 

も空を見上げて呟く。


そんな2人を星達は静かに見守っていた。


今夜は必ず逢えるだろう・・・――――。

                                     

 

 

必ず。

 

                                                E N D




後書き・コメント+++

はい、ゆうきです。・・・どうだったでしょうか?悟空は;すいません、こんなのしか書けなくって・・・。

しかも、前置き長いし。(汗)今回、七夕企画ドリ・フリー配布にさせていただきました。悟空のみですが。

こんなのでも、貰ってやって下されば嬉しいです。お持ち帰りの際に、BBSの方に一言下さると、もっと嬉しいです。

サイトの方にUP(多分いないでしょうが;)して下さる方もBBSの方に連絡下さい。

一応、著作権の方はこちらにあるので。もちろん、パクリなどはよして下さいね。

御感想・ご意見、お待ちしております!!

では、この辺にて失礼致します。
                                   2003.7.7  ゆうき

****8月8日、本日付けで七夕企画ドリ配布期間終了しましたので、持ち帰らないで下さいね。

皆様、どうもありがとうございました。                    

 2003.8.8  ゆうき