輝く 君
〇その日は、野宿となり、を含めた5人はジープの上で眠りについた。
そして、いつものように朝が訪れる。
珍しいことには、鳥の囀りで目を覚ました。
しかし、まだ時間が早かったためか、三蔵達4人は、まだ寝息をたてて寝ていた。
は、そっと4人を起こさないように静かにジープから降りて、林を抜けて丘に登り、樹木の近くにある大きな岩に腰を下ろした。
そして、伸びをして深呼吸をする。
まだ冷たい朝の空気が、すーっと喉を通って体に入っていく。
心地好い朝の風がの髪を撫でていく。
丁度、朝日が山の隙間から登ってくるのが見えた。
「うわぁ。やっぱり、朝は気持ちが良いなぁ〜。早起きして良かった」
朝日を見つめ、自然とから笑みが毀れる。暗かった辺りも、段々と明るくなり綺麗な青空が見えてくる。
「今日も、良い日になりますように」
とは、目を閉じて朝日に向かって願う。
あの人の足手まといにだけは、なりたくない。
本当は、戦って傷ついてほしくないのだ。体も心も。
体の傷は時間が経てば、大抵は治るものだが、心の傷はなかなか治らない・・・。
だから、余計に不安になってしまう。
は、自分の武器である『皇華尖』を見つめ、強く握りしめる。
「・・・ジープに居ないと思ったら、こんな処にいやがったか」
突然、背後から声がした。は、ハッとして振り返る・・・と、そこには。
朝の一服なのか、愛用のマルボロを口にくわえて、いつもの法衣をまとった三蔵が立っていた。
「あっ。すっ、すいません」
とは、慌てて岩から降りて三蔵と向き合う。
「謝ることはねぇ。・・・どうして、此処へ来た?」
「・・・何となく。足が進んで」
と苦笑し、そう答える。三蔵は黙ったまま、ゆっくり足を進めるとの隣りに静かに立つ。
が、さきほどまで見ていた朝日をその紫暗の瞳に映して。
「朝日・・・か」
と一言、言った三蔵の姿が朝日のせいか、それとも金糸の髪と法衣のせいか、には、輝き、眩しく写るのだった。
「どうした?」
と、隣りで自分をボーッと、見つめているに気付き、声を掛けた。
「あっ、いえ。・・・何か、三蔵さんって朝日みたいに綺麗だなぁと思いまして」
「!?」
えへへっ。と、半分照れくさそうに言うに対して、三蔵は虚を突かれたような顔をする。
前にも何処かで、誰かに、似たような台詞を言われたことがあった。
嫌なこと以外は、覚えているはずなのだが・・・。
どうも、よく思い出せない。
一体・・・?
「三蔵さん?」
「―――・・・何だ?」
との呼ぶ声に、反応し、我に返る三蔵。少し、心配そうなの顔が映った。
「戻りましょう!皆が待ってるはずですからっ!」
「そうだな」
先に小走りに丘の下り道まで行ったに、返事をする。
「おい、」
「はい?何でしょう?」
と道を下ろうしたを呼び止めて、真っ直ぐを見つめて。
「・・・朝日もいいが、俺達の行き先は―――」
と三蔵が言い掛けた台詞をが遮った。
「知っていますよ。『・・・夕日が見える西だ』でしょう?」
ビシッと、ある方向を指差して微笑む。自身は、決まった!と思っていたのだが・・・。
暫し沈黙・・・。
三蔵は、言いにくそうに口を開いた。
「・・・そっちは、北だが?」
「えぇ!!??」
とは、慌てふためき、指していた指を下げおろす。
そうなのだ、が指した方向、実は北だったのだ。間違えるのも無理ないだろう。
いくら西へ行くと言っても、こう何日も林に面した道では、方向感覚も鈍ってきてしまう。
「すっ、すいません!」
とは、顔を真っ赤にしながら謝る。三蔵は、そのの姿を見て、とても可愛らしく思えたのだった。
「いや、いい。・・・行くぞ」
「はい。・・・三蔵さん!」
今度は、が三蔵を呼び止めた。
「ん?」
「これからも、宜しくお願いしますねっ!!」
と満面の笑顔で言えば。
「―――・・・あぁ」
ふっ。と、柔らかく三蔵が微笑んだ気がには、したのだった。
足手まといにならないように、頑張るから・・・。
強くなるから・・・絶対。
E N D
◆◇あとがき◇◆
はい、どうだったでしょうか?久しぶりの三蔵さんドリで、今回は案外と、さっぱり系だったような気が致しますが;でも、これってほのぼのでしょうか?日記でも言っていたようにギャグ入ってます(笑)あまり、ギャグ入れたことないんですけどね。こんなのでも、楽しんで頂けたら幸いです。
2003.7.23 ゆうき