Violet moon
○その夜は、久しぶりに満月となり、暗闇の中でコウコウと輝いていた。
この日、も含め三蔵達、5人は丁度良いくらいに目的地である街へ日が沈む前に到着し、宿で1人部屋を確保出来たのだった。
そして、夕飯後、5人は各持ち場である個々の部屋へ散らばって行った。
○それから、4時間経過し、街と空は暗闇に染まっていった。
の持っている腕時計は、すでに午後11時を回っていた。
しかし、は、電気を消してベットへ横になってみたのが、なかなか寝付けずに、ベットを出て、窓の外で暗闇に浮かぶ満月を1人、静かに眺めることにした。
此処最近、宿屋で泊まる時は、多くて3人部屋や2人部屋だったものだから何か物寂しくなってしまう。
暫らくして、は大切な、そして今1番愛しい男性の名を呼んでみる。この切なく、寂しい気持ちを紛らわすために・・・。
「・・・三蔵さん」
しかし、呼んでみた処で当人が来るはずもないのだが。
もう、この時間なら寝てしまっている男性だ。それを言ったら、1人を抜かして他の皆はとっくに寝ている時刻のはず。
そして何故だか、は満月の夜になると落ち着かなくなってしまうのだ。
段々と先刻にも増して切なく、寂しく、心苦しくなってしまう。
「・・・三蔵さん」
と、もう1度呼んでみた。
心の中で、声に出して何度も何度も呼んでみる。自然と涙が溢れ出し、頬を伝いこぼれ落ちていく。
はこのままではダメだと思い、落ち着こうと他の言葉を考えようとしたが、真っ先に浮かんでくるのは1番愛しい男性の名だけ。
仕方がなく、は無理に横になり体を休めようかと考え、踵を返しベットに足を向けた、その時。
「----おい。」
扉の向こうから低音の聞き慣れた声がするではないか。
は、いきなりのことに驚き、少しの間固まってしまう。
「・・・入るぞ」
と一言、言って部屋に入ってきた人物は間違いなく三蔵本人だった。
「おい、」
三蔵は、呆然と立っている(--というか固まっている)の前まで足を進める。は、ハッとし我に返って慌てて口を開いた。
「あっ、はいっ。すみませんっ!何でしょう?」
と言い、電気を点けにいこうと思い動いたは、腕を三蔵に掴まれ、制される。
「でっ、電気つけた方がいいんじゃないかと・・・」
「----いい。・・・それより、」
暗闇の中、お互いに顔がしっかり見えてはいなかったのにも関わらずに三蔵は、の表情が読み取れたのか言葉を続けた。
「お前・・・泣いてたな」
「えっ!!??」
「そして、俺を呼んでただろう?しかも何度も、何度も」
は、また驚きのあまり固まってしまうのだった。呼んだには、違わないのだがそんな大声で呼んだわけではない。
・・・ただ―。
とその瞬間、あることを思い出す。
それは、三蔵と悟空の出会いを三蔵本人から話して貰ったこと・・・。
それと、時々だが聞きたくもない心の声が耳に入ってくること。
そのことを、聞いた時、自身は半信半疑だったが――。
今、確信に変わる・・・あの言葉。
呆然と立ち尽くしているをヨソに三蔵は口を開く。
「・・・ったく。あの猿みたく呼んでんじゃねぇよ。煩くて眠れやしねぇ。----・・・寝れないのか?」
三蔵の最後の言葉には、自然と反応してしまい、肩を小刻みに震わせる。
三蔵は、軽く一息つくと下を向いて今にも泣きそうなを軽々と抱き上げてベットへ歩いていく。
「さっ、さっ、三蔵さん!!??」
いきなりの思ってもない、三蔵の行動に、顔を真っ赤にし慌てふためく。
「煩せぇ。寝れないなら、今晩だけ一緒に寝てやる。----嫌か?」
「いっ、いいえっ!///」
「――なら、いい」
と言った三蔵の表情は、満月の光のせいかいつもとは違う優しく柔らかなものにその時のには、見えたような気がした。
一夜、限りの2人・・・。
そして、いつもの朝が訪れる――。
E N D
+++++++++後書き++++++
三蔵さん夢、第2弾!にて、シリアス、桃源郷バージョンです;すいません、中途半端で(汗)
そういえば、最近、悟空と悟浄さんの夢が増えて・・・ない。ですね(苦笑)あたしとしては、この2人を中心
に増やしていきたいと思ってるんですが・・・(汗)
これからも頑張って書きますので、皆さん宜しくお願いしますね。では、楽しんで頂けたら光栄ですvvv
2003.5.30.ゆうき