迷宮のラウ゛ァーズ




〇小春日和りのある晴れた土曜、三蔵達とは、遊園地へ来ていた。

だいたいの乗り物とアトラクションを終わらせて、一行は、この中でも一番人気のある迷路の前に差し掛かった。

最初から気になっていたと悟空は、指をさし、声を揃えて、少し離れたとこでベンチに座っている三蔵の方を向いてこう言った。

「「三蔵(さん)!これ入ってみたい(です)!!」」

その悟空との行動に、少し顔を顰める三蔵。

悟空のみならば、すぐに却下をし、ハリセンをお見舞いする処なのだが。

「あはは。あそこまで綺麗に揃っていると、まるで姉弟みたいですねvねっ、三蔵v」

と、隣りで八戒がいつもの笑顔で三蔵にふれば

「・・・何で、俺にふるんだ?」

不機嫌上昇中でもいうようなオーラを纏いながら三蔵が応える。

どうやら、三蔵はと悟空の仲が気にくわないらしい。あそこまで、綺麗に気が合い、揃っていると尚の事、頭にくる。

「あーぁ、ちゃんもとうとう、あのバカ猿と同レベルになっちまったのかぁ〜。悟浄、悲しいっ」

と、悟浄が『よよよっ』と冗談半分で泣き真似をする。

「どうしますか?三蔵」

と、八戒。迷路の入り口前で、何やら仲良くはしゃいでいる悟空との姿を一瞥すると、三蔵は腰を下ろしていたベンチから静かに立ち上がる。

「どうもこうもあるか。・・・猿と何か入らせてみろ、一生出て来れねぇに決まってる」

と、言い、一歩踏み出すと、三蔵は真っ直ぐに迷路の入り口前にいる悟空との処へ歩いていく。

その後を、少し距離を空けて八戒も歩き出す。

「・・・同感ですね。悟空と一緒だと、悟浄ほどではありませんが、心配には心配ですねv」
「お前、一段と性格悪くなったな」

振り返らずに言葉を投げる三蔵。

「そうですか?」

と笑顔で返す八戒。その後ろ姿を黙って見送る悟浄。実は悟浄、迷路が苦手だったりするのだ。

「なぁ。と考えたんだけどさ、二人一組になって、どちらかが先にスタンプ三つ集めて出て来れるか、競走しないか?」

と、悟空は三蔵と八戒に向かってこう聞いてきた。

「あぁ、なるほどっ!それは面白そうですね。ねぇ、三蔵」

八戒は、悟空の意見に快く賛成した。

「―――あぁ」

と八戒に同意を促される三蔵。

「じゃあさっ、グーチョキで決めようぜ!」

 

悟空は、グーチョキを提案し、これに皆は賛成すると早速グーチョキで相手を決めることにした。

「よしっ!じゃあ決まりなっ!」

手をグゥにして八戒を見る悟空。八戒は笑顔で応える。

「そのようですね・・・悟空、頑張りましょうねv」
「おうっ!―――じゃあ、また後でな!!」

と言って、さっさっと迷路に入ってしまった。三蔵とを残して。

「あっ、あの。三蔵さん・・・」

恐る恐るが、話し掛けてくるものだから、それに苛立ち三蔵はついキツイ突き放した口調になってしまう。

「・・・なんだ」

「あっ、あたし達も入った方がいいんじゃないかと思うんですけど・・・」

は、迷路の入り口を指さして言う。

三蔵自身、が自分に想いを寄せていることに気付いてはいるのだ。

そして、また三蔵ものことを想っているのだが。なかなか思うように優しく接してやれなくて、ついつい、きつく振舞ってしまうのだ。

「―――あぁ。そうだな」

と一言、言って二人は迷路の中へ消えて行った。


―――――それから、約二時間経過した後・・・。

に三蔵・・・おっそいなぁ〜」
「―――そうですね・・・」

早々と最短新記録、四十分を叩き出し、迷路を抜けて来た悟空と八戒は、まだ中に入っていると思われる三蔵達を心配していた。

 その頃、三蔵とはと云うと、何とかやっと一つ目のスタンプをゲットしたが、まだ迷路内を彷徨っていた。

もうすぐで、日が暮れてしまうとは焦っていた。

しかし、その気持ちとはヨソに一方的にずっと手首をきつく掴んで離さない三蔵の行動に、手・・・。

今さっきから、ずっと行き止まりにばかりぶつかっている。

「チッ・・・」

また行き止まりにぶつかり、三蔵は舌打ちをする。迷路に対して、切れるのも時間の問題だろう。

「三蔵さん、三蔵さん」

の呼ぶ声がする・・・。

と同時に、三蔵はハッとして振り返る。

そうなのだ、自分独りで行動してる訳ではない。がいるではないか。

そんなことも忘れて、独りで苛立ってしまっていた。

の意見も、まともに聞こうとせず勝手に、連れ回していたのである。

三蔵は、そんな自分に嫌気がさし、下らなく思えて自嘲の笑みを浮かべるのだった。

「―――何だ?」

今度は落ち着きがある声でに応える三蔵。

「あのっ、今さっきの曲がり角の手前で、右に曲がった方が・・・良かったんじゃないかと思うんですけど・・・」

と、の意見を一通り聞き入れると、今まで来たルートを三蔵は頭の中で順を追って思い出していく。

「・・・三蔵さん」

は、聞こえるか聞こえないかと思えるほどの小声で呼びかける。

「ん?」

そして、言いにくそうに口を開く

「・・・すみませんが、手、痛いんで放してくれませんか?」
「――あぁ・・・悪い」

と言って、そっと放した後。

三蔵は次の瞬間、ぎょっとし目を見開いてしまう。

無意識とはいえ、強く力いっぱい掴んでいたせいかの手首には、くっきりと自分の手跡が赤くついていたのだから。

・・・」
『すまない』と謝罪の言葉を続けようとしたが

「じゃあ、戻りましょうよ!多分、今さっきのトコで右に曲がって、次の曲がり角で左に―――・・・」

のいつもの明るい笑顔で遮られてしまった。

そのの笑顔をまともに捉えてしまった三蔵は、悟空に下らない嫉妬心を抱いてしまっていた自分に後悔をする。

は、優しく包み込むように三蔵の右手を取ると、もと来たルートに戻るため歩き出そうとする。

「・・・おい」
「?―――何でしょう?・・・あっ、もしかして手繋ぐの嫌ですか?」

と、は何事もなかったかのように明るい表情で振り返ってくる。

「いや・・・別に」

そのの、愛しく眩しい表情に思わず、見惚れてしまいそうになった三蔵は慌てて目を逸らし応えた。

「じゃあ、あと残ってるスタンプ二つ、頑張って取りに行きましょうね!」
「あぁ。そうだな」

その後、と三蔵は、何とか三つスタンプをゲットするとこの迷宮のような迷路を無事、抜けることに成功した。
それは閉園、一時間前のこと―――。


残りの時間で一行は、観覧車に乗ることにする。

 

 

もちろん、は三蔵と二人っきりで少ない時間を過ごすことになるのは言うまでもない――――。

 

 

                                              +++END++++++

 


後書き―――――。
祝!初☆現代版・パラレル、三蔵さん夢、完成!!しかも、1日で書き上がりまして自分でもビックリです;
書けるとは思ってませんでしたから・・・;(汗)1番早く仕上がった夢です☆ 今度からテーマを決めて書いていこうかなと思います。しかし、最初はギャグで書いていこうかなと思っていたら、いつも間にやらシリアスちっく・ラブ(なんじゃそりゃ;)になっていましたよ・・・恐るべし、三蔵様;では、ここまで読んで下さってどうもありがとうございました!!(感涙)
                                         2003.4.15.ゆうき