GAME  (八戒編)

 

 

〇夏休みを直前にひかえた、ある土曜日の午後。

その日は、珍しいことに、何を思ったのかは分からないが、八戒が休みをとったのだった。

は、友人と出掛けて来ると言う悟空を、玄関まで送り出すと、何もすることもなくリビングにあるソファに一息ついて、腰を落ち着かせる。

今日、三蔵は、もちろんのこと悟浄も仕事で出ていて此処にはいなく、いるのは、と休みをとった八戒だけとなった。

は、あえて八戒が休みをとった理由を聞かずにいた。

(―――ってことは、八戒と2人きりかぁ・・・)

と思い、向かい側に座って読書をしている青年・八戒に視線を送る。

八戒は、の視線に気付くと読書を途中にし、自分を見ていると目を合わせた。

 

「―――どうかしましたか?」

「えっ!?あっ。・・・なっ、何でもないです!」

 

は、八戒のその澄んだ深緑の瞳に見つめ返され、慌てふためいて視線を反らす。少し、頬を赤くしながら。

 

「あっ、アイス・コーヒーでも入れてきますねっ」

「―――・・・ありがとうございます」

 

と、いつもの優しい笑顔を向ける八戒。

それに慌てて立ち上がり、はキッチンへパタパタと駆けていく。

そして、少しした後に、アイス・コーヒーを2人分トレーに置いて運んで来るに八戒は声をかけた。

 

。今、時間の方ありますか?」

「えっ!?・・・はい、ありますけど」

 

八戒は、の返事を待ってから、こう切り出した。

 

「じゃあ、僕とゲームでもしませんか?」

「・・・八戒さんとですか?」

 

『でっ、でも・・・』と少し躊躇いがちの

 

「もちろん、ゲームと言っても、これのことですけどねv」

 

と言って、目を向けたのはソファの方隅に置いてあったオセロ・ゲームだった。

このオセロ・ゲームも、2、3年前に悟空が三蔵にねだって、買って貰ったものだが、今は誰にも使って貰えずに、少し埃をかぶっていた。

それを八戒は、丁寧に拭き取ると長方形のテーブルの上に置く。

 

「あっ。じゃあ、やります」

 

は了解する。もちろん、相手がではなく、いつもの例の3人の誰かであれば、カードや、麻雀でも構わないわけなのだが。

八戒は、を相手に手加減するか考えてみる。

 

「じゃあ・・・早速、始めましょうか?」

「はっ、はい!」

 

と返事をし、は八戒とジャンケンで、先攻・後攻を決めマスに2つずつ並べて、いよいよゲーム開始となった瞬間。

 

「3回勝負で、1回でも、貴女が勝ったら1日休みをとって行きたい所へ連れて行ってあげますよv」

「えっ!?」

 

といきなりのことに、少し驚くだが。

次の八戒の言葉にもっと驚くことになってしまうとは。

 

「でも、僕が3回とも勝ったら、・・・その唇、僕に下さいねv」

 

「!!??」

(えっ?――――・・・えぇ!!??)

 

こうして問題発言有り(八戒Ver.)の恐怖(おいっ)のゲームが始まったのだった・・・

 

 

 


ゲーム開始から約1時間半強―――――

そこには、やはり1回も勝てずに、ガックリと肩を落とすの姿があった。

(オセロでも、無理なのかなぁ〜)

 

「あっ、あのっ」

 

と言い掛けるが、はゲーム前の八戒の条件を思い出し、その場に固まってしまうのだった。

いくら好きな男性だからと言って、は自分から進んですることに慣れてはいなかったのだ。

 

「僕の勝ちで決まりですね。・・・さて、約束ですよ、v」

「・・・はい。―――って、八戒さん。えぇっと、何処にすればいいんでしょうか?」

 

頬を赤く染め、戸惑いながらは八戒に聞いてみた。

 

「そうですね〜。僕、個人的には口元が1番じゃないかと思うんですけど―――・・・」

 

八戒の言葉に、鼓動が早くなるのを感じる

 

「それだと、他の3人に、もしバレた時に何て言われるかわかりませんしねv」

 

と八戒は苦笑混じりに、こう答えた。

 

「何処でも良いですよvの好きなところで」

「あっ、あのっ。じゃあ、目瞑って下さい」

 

実はすでに、は心臓が爆発寸前のところまで高鳴っていた。

 

「こうですか?」

「・・・はい」

 

は立ち上がり、向かい側のソファに座っている八戒の左頬に軽く口付けをした。

 

「―――じゃあ、またオセロやりましょうねv」

 

「へっ!?」

 

八戒の誘いには、また驚いてしまうのだった。

 

「じゃあ、約束ですよv」

 

と言い八戒は自室へ戻っていった。

 

呆然とその場に立ち尽くしてしまっているを残して――――。

 

 

                                             E N D

 

 


――あとがき――
さて、GAMEシリーズ八戒編でした。・・・どうだったでしょうか?実はこれ一回ボツにしたものを、改めて書き直したものなんですよ。ゲームの種類(笑)条件を考えてくれた友人に感謝!!
次回のGAMEシリーズの予定は・・・多分、悟空です;
こんなものでも気に入って下されば嬉しいですvご意見・ご感想はBBSかメール・フォームまで。
                                        2003.8.7.ゆうき