―――真冬の帰り道



〇いつも通りに、は親友であると下校しようと靴に履き替え、校庭に出た。

そして、仲良く話をしながら門を潜り、道路に出ようとした時。

  キキイッ!!

目の前で、自転車のブレーキの音がしたと同時に、1人の少年が現れた。

 

「よっ!!!」

「ごっ、悟空!?」

 

は、悟空の姿に目を見開いて驚く。

 

「どっ、どうしたの!?今日、部活は!?」

「―――どうしたの!?じゃないぜっ!迎えに来たんだ。部活は早退して来た」

「はっ・・・はぁ、そう」

 

まだ日が沈む前だったため、校庭や門の回りは同じ学生達が結構いる。

しかも、が通っている学校は女子校だ。

その学校へ、男子が迎えに来たとなれば注目の的になるのは、間違いないのだ。

いくら、悟空が私服で子供っぽいとはいえ。これでも、大学1年というのに;

まだ、驚きが隠せない表情のは気を遣い、小声で悟空には聞こえないように静かに

 

「あたし、お邪魔みたいだから・・・先に帰るねvごゆっくり〜vvv」

 

と言うと、その場から走り去って行った。

 

「えっ!?ちょっ、ちょっとちゃん〜!!」

 

残されたは呆然としてしまう。

 

「ほらっ!!!早く帰らないと八戒に怒られるぞっ!!早く乗れよ、なっ!!」

 

は悟空に促されて自転車に乗ることにした・・・が。

 

「うっ、うん・・・―――ねぇ、悟空」

「ん?」

 

ふと考えてしまう。自転車で2人乗りの場合、何処に乗ればいいのかを。

「あたし、何処に乗ればいいのかな?」

「―――あぁ。もちろん、ここに・・・だろっv」

の疑問に、ワザと意地悪くニヤッ。と笑ってみせ、指をさす悟空。

そこは、ママチャリでいうお馴染みの荷台の上だった。

 

  沈黙・・・

(やっぱり、此処しかないのね;)

と思い、ガックリと肩を落として溜め息を吐く。

仕方がなく、覚悟を決め荷台に跨るように乗る。

は、スカート丈をあまり短く履いてないため跨っても平気なのだ。

 

「じゃあっ、行くぜっ!!」

 

と、口を開くよりも先に、足がペダルを踏み、前進していた。

それを見ては荷台の先に掴まり苦笑した。しかし、はふと思いあることに気づく。

(そーいえば、この先100mぐらい行った処に急な坂が、あったっけ・・・)

 

「ごっ、悟空っ!!あのねっ!!」

 

は焦って、悟空に声を掛けた。

 

「何?」

 

悟空は、そんな事もお構いなしで前進しながら何気なく返事をする。

 

「この先に急な坂があるのっ!!言い忘れたっ!!」

「へっ?!」


キキィィーッ!!


悟空も、この事に慌ててブレーキを思い切り踏んで、その場で一旦、停止をした。

 

「そーゆーことは、もっと早く言えよなっ!?」

「ごっ、ごめんっ!!」

 

あやおく、悟空の猛スピードで、坂に突っ込むところだった。結構、急な傾斜だ。

 

「―――じゃあ、ブレーキをいっぱい掴んで・・・

「・・・?何?」

 

悟空にしては、いつになく真剣な表情で、あと5mほどで坂になっている道路を睨んでいた。

ふと自分の名を呼ばれたは返事をする。

「俺に掴まってろよっ」

「えっ!?―――って、悟空。何処に掴まれば・・・;」

はその場で戸惑ってしまう。

(掴まれと言われても・・・;)

 

「―――仕方ねぇなっ!」

と悟空が上半身だけ捻って、後ろを振り向くと同時に、グイッっとの右腕を掴み、自分の前へ持っていく。

そして、左腕も同じく持ってきてに自分の後ろから抱きつかせる形をとった。

は、悟空の半強制的な行動に驚いて顔を真っ赤にする。

 

「ごっ、悟空!!??///」

「仕方ねぇだろ!―――じゃねぇと危ないじゃないか!?」

 

前を向いたままで、そう言い放った悟空、本人もほんのりだが頬が赤く染まっていた。

自分でも何をやってるのか判らなくなってきている。と、また漕ぎ始める。

さっきとは違い、ゆっくりと慎重に坂に近付く。

そして、坂に沿って自転車が傾いたと同時に悟空はブレーキを思いっきり強く掴んで下っていく。

 

「うあっ!?」

 

と後ろでが驚いて思わず声を出す。

 

「しっかり、掴まってろよっ!!」

「う、うんっ!」

 

ブレーキを掴んでも、下っていくにつれて速度が増していく。

は目を堅く閉じて、悟空に身を任せるように前より、抱きついている両腕を強めた。

の両腕に、力が入ったのに気が付いた悟空は、自分の鼓動が少し速くなったのを感じていた。

 

「ねぇ、悟空」

 

は、その背中に顔を押し付けながら、ブレーキと下り坂に夢中になっている悟空に、声をかけた。

 

「ん?」

 

(―――悟空の背中、暖かい・・・///それに、随分広く感じるなぁ〜)

 

「もし・・・悟空が良かったらでいいんだけど、またこうして迎えに来てくれないかな・・・?」

このの、言葉を聞いた悟空は、自分でも分かるぐらいに、身体が熱くなってくるのを感じたのだった。

悟空は少し間をおいて。

 

「―――あぁ。いいよ。俺さ、、お前のためだったら、例え地獄の果てからでも迎えに来てやるぜ」

「えっ!?///」

 

「さてっと!坂も無事に下ったことだしっ!こっから、スピード出して行くからなっ!!しっかり、掴まってろよ!―――離すなっ!!」

 

「うんっ!!」

気が付けば坂を下り終え、平坦な道路に出ていた。

悟空にの両方は、真冬にも関わらず顔が赤くなって火照っており、身体も熱くなっていることは、お互い知らずにいつもの通学路を走って行った。

 

 


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あとがき+++++++
 お迎えシリーズ第一弾にて悟空編です・・・;アホ丸出しでゴメンナサイ!このシリーズのみ、ヒロインが高校生です;しかも、女子校だったり、悟空は大学生だったりして;悟空、多分、工業系の大学かな・・・(オイ)
こんなんでも楽しんで戴ければ幸いです。
                                2003.03.17.ゆうき