オレンジ+@
〇優気は、旅の途中で風邪をこじらせてしまう。それに最近、野宿が多かったからだろう。そこで、仕方がなく三蔵一行は、ある大きい街で宿をとることに。その大きい街は、結構栄えてるのか温泉がある宿屋がいくつかあった。八戒は歩きながら
「---どうしましょうか?何処がいいですかね、皆さん?」
と、三蔵達と優気に聞く。しかし、いくら風邪が軽くてもふらついて危ないために、優気は悟空におんぶして貰っていた。優気は重い瞼を少し開け、口を開く。
「・・・---悟空」
悟空は耳元で話かける優気に気付いて
「何?どうかした?」
と聞き返した。優気は、少し間を置いて
「ごめんね、迷惑かけて・・・」
悟空は、優気のいきなりの謝罪の言葉に驚いて、声を大きくしてしまう。
「----なっ?!何言ってんだよ!別に俺は・・・!」
いきなり声を大きくした悟空に、前を歩いていた三蔵、八戒、悟浄は驚く。
「----どうしました?悟空」
「・・・なっ、なぁ!あそこの宿屋にしようっ!なっ!!」
と言って、悟空が指をさしたトコロは、結構大きい宿屋だった。
「おいっ、サル。お前、それ適当に言ったんじゃねぇだろうな?」
と悟浄に言われて、一瞬、悟空は『うっ』となる。
――そうなのだ・・・悟空は、優気を心配するあまり、早く休ませようと適当な宿屋に指を、さしてしまったのだった。
「――――仕方ねぇな。八戒、あそこの宿屋にするぞ」
と珍しく三蔵が、悟空の意見を聞き入れた。
ということで、宿屋に入った5人だったが、個室が1つ設けてある大広間をススメられて、そこにすることにした。
――まぁ、この際、何にしたって個室設けてあるのはありがたい。優気をそこに休ませて、三蔵達4人は一緒でも構わないからだ。
そして、部屋に着き、個室に優気を寝かせた。しかし、悟空はさっきから落ち着かない様子だった。悟浄は、からかうように聞く。
「おいっ、サル。どうした?温泉にそんなに入りたいか?」
八戒も、心配になったのか
「どうしたんですか?」
と聞いてきた。悟空は少し黙った後、いきなりこう言い切った。
「おっ、俺っ!優気の看病するから温泉には行かないっ!!」
悟空の、いきなりの発言に三蔵達は目を見張った。
「おいっ、悟空。お前、優気の看病出来んのか?」
と悟浄が、先ほどとはうって変わって真面目な顔つきで問う。
「うん、出来るっ!---ってか、優気には・・・俺が付いてなきゃダメなんだよっ!!」
これには、3人共唖然とした。ある意味での悟空の告白とも言えるものだったから。少し間をおいてから三蔵は、読んでいた新聞をたたんで口を開く。
「本当に大丈夫なんだろうな?---もし、優気に何かあったらお前の責任になるんだ」
「---あぁ、わかってる」
悟空は金の瞳で三蔵を見る。その時の悟空は、真剣そのものだったため、三蔵達は優気の看病を悟空に任せることにした。
〇そして、公認になった悟空は、静かに優気が休んでいる個室に入り、近くの椅子に座った。優気はドアに背を向けて横になっているため、悟空には気付いてないように見えた・・・が
「・・・悟空?」
と、ふいに優気が自分の方へ体を動かしてきたもんだから、悟空は驚いてしまう。
「---うん、俺だけど・・・優気?」
そう言って、悟空は優気に近付いて額に、手を当ててみる。優気は、額から悟空の強く優しい、そして暖かい体温を感じて頬を赤くさせた。
「うん、結構熱いな。熱出てきちゃったかな」
と呟く悟空。(八戒に熱冷ましの薬を貰おう)と思い椅子から立ち上がった時、優気は、ためらうように口を開いた。
「・・・ねぇ、悟空」
「ん?何?」
「お手洗いって何処にあるか知らない?」
男の子に聞くのは恥ずかしいが、この際仕方がなく優気は、聞くことにした。悟空は少し考えて
「んーっとな、・・・たしか隣りの大広間の出入り口の傍だったかな」
「あっ、ありがとう」
と悟空にお礼を言って、優気はベットを出ようとした。・・・が、足がふらついてしまって上手く立てずに前方によろけて倒れそうになってしまった。
「きゃあっ!?」
ガタンッ!!
「---?!」
結構、大きな音がした後。
何かに支えられてるような感じがした優気は、おそるおそる目を開ける・・・とそこには、悟空が転びそうになった優気をしっかり抱き締めている。
「優気・・・大丈夫か?」
自分の耳元で囁く、悟空の声がいつもとは違い、大人びたように優気には聞こえて、慌てて
「あっ、ごめん、ありがとうっ」
と言って離れようとした瞬間、ふわっと身体が宙に浮いたかと思うと、悟空が優気を抱きかかえて(ようはお姫様だっこね;)歩き始めたのだ。優気はこれに驚いて
「ごっ、悟空?どっ、何処行くの?!」
と慌てふためく。悟空は静かに答える。
「トイレ・・・行くんだろ?優気、このままじゃ、立てもしないじゃないか。危なっかしいから俺が運んで行く」
「・・・うっ、うん」
優気の心臓は、爆発寸前まで高鳴っていた。いつもの悟空と違い、今の悟空は大人っぽく見えたから。
トイレの前で優気を下ろし、悟空は
「---じゃあ。俺、ここで待ってるから」
と言い、少し離れた洗面所の入り口で待つことにした。優気を抱えて個室から出てきた時、大広間には誰もいなかった。悟浄にまた、からかわれるのを覚悟して出てきたが。
(---そういえば、三蔵達がいなかったけど、何処か八戒と買い物しに出かけたのかなぁ~)
と思い、大広間をもう一度覗く。そして、テーブルの上に1枚の紙が置いてあることに気付いて、手にとった。
『悟空へ』
(八戒の字だな)
『僕達、買い出しに行って来ますね。すぐ帰って来ると思うので、あとの、優気のこと頼みましたよv』と書いてあり、一通り読んでから悟空はハッとした。
(ん!?---と言うことは、優気と二人きりってことか?!)
いきなり、何か恥ずかしくなってくる悟空。そこへ優気が手摺りに捕まりながら出てきた。
「悟空・・・どうしたの?」
悟空の様子に、不思議に思った優気は聞いてみる。
「ん?あっ、なっなんでもない!」
と言って、帰りも行きと同じように抱きかかえて戻った。悟空の中で、今まで何気なしに思ってた感情が、一気に溢れだそうとしていた。優気をベットに運び、自分は近くの椅子に座った。優気は、さっきから押し黙り俯いたままの悟空が気になり、静かに枯れた声を押し出して聞く。
「---ねぇ、悟空・・・何だかさっきから変だよ?どうしたの?」
それでも応答がないから、優気はそっと悟空に近付いて、自分はベットに座った。いきなり悟空が、顔を上げたかと思うと同時に、優気を思いっきり抱き締めた。
「悟空?!」
「おっ、俺さ。優気のこと・・・好きなんだっ!!」
咄嗟のことだっため、優気は何が起こったか、ただ呆然とした。優気は少し間をおいて
「あたしも・・・」
と答えようとしたが、風邪で喉がやられたのか思うように声が出なかった。悟空は続けて
「もしっ、優気が俺のこと好きじゃなくても、俺は優気のこと大好きだからっ!愛してるから・・・。---って言うか、迷惑だよな?」
とそこまで言って、苦笑い混じりで優気を離した。優気は声が出ないため何て言えばいいか迷った。
だが、しかし優気は決心をした・・・声が使えなければ行動で表せばいいのだ。
次の瞬間、悟空は驚く。自分の唇に優気の唇が触れたから・・・。これが今の優気にとってのせーいっぱいの返事。悟空は頬を赤くさせ
「そっか。ありがとうなっ!」
と笑顔で答えた。その後、二人とも顔を見合わせて赤面してしまったのだった。
『---あたしも、悟空のこと大好きだよ』
この言葉が通じたように・・・。
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――――――――あとがき
悟空は、だめだー!!ってか、最初は温泉ネタだったのに;書きにくいうえにクサイ台詞が全然似合わないから・・・;皆様、どうもすみませんでした・・・。楽しんでいただけたら嬉しいです!
2003.02.03 ゆうき