レッド・エンジェル

 

〇ある日、悟浄は何を思ったのか雨に濡れすぎて風邪をひいてしまった。そして高熱を出し、ある宿屋の個室のベットで寝込んでしまう。そして悟浄を自分から引き受けて看病することになった
寝込んでいる悟浄に、

「何か、食べたい物ありますか?適当に何か作ってきますねっ!」

と言い、部屋を出て調理場を借りてお粥を作り始めた。その調理場で働いていた中年の男性に

「お嬢ちゃん、もしかして連れの赤髪の兄ちゃんのコレ(恋人)?」

と、冗談半分でからかわれ

「ちっ、違いますよ!!そっ、そんなんじゃないんですって!」

は一生懸命に否定する。だか、顔は赤面していた。

「だってよ〜、この間から、ずっとお粥とか病人食作ってはあの兄ちゃんのトコ持ってくんだもんな〜」
「だから―――・・・」

(そりゃあ・・・悟浄さんは格好良いし素敵だけど、どうせあたしのこと何か---・・・)

 

―――――とその時だった。

調理場全体の窓ガラスが割れ、妖怪がわらわらと侵入してくる。

きっと三蔵達を狙ってのことだろう。案の定、調理場は大混乱となった。

は三蔵達をあえて呼ばずに仕方がなく、1人で戦うことにするが---・・・。

 

「きゃあっっ!!」

 

いくら、雑魚妖怪といえどもさすがに沢山いたら、苦戦する。1匹の妖怪に後ろから不意打ちを喰らってしまい、肩を痛めてしまう。

そして、個室で寝込んでいた悟浄に、別室で休憩していた三蔵達も、調理場の様子がおかしいことに気付く。

三蔵に、悟空、八戒の3人は調理場へ急ぐ。途中、八戒は悟浄が寝ている部屋へ立ち寄り

 

「気にしないで、悟浄は大人しく寝てて下さいねv」

 

と言い残す。悟浄は先刻、出ていったを思い出す。

(おいっ!まさか、あいつ・・・!?クソッ!俺がこんな状態じゃなければっ!!)

 

 

場所は変わって調理場――――。

三蔵達、3人は変わり果てた調理場に呆然としていた。

 

「ケホッ」

 

三蔵は、聞き覚えがある声を耳にして、左の隅の調理台に視線をうつす・・・。

と、そこには傷だらけになり、肩から出血しているの姿が!

 

「八戒!」

 

と三蔵は八戒を呼び、の方に視線を促す。

 

「おいっ!は大丈夫なのかよ!?」

 

悟空も気付いてを心配する。

 

「悟空、さっさと片付けるぞ!」

「おう!!」

 

と言い、2人は妖怪の集団へ突っ込んで行った。

 

っ!!大丈夫ですか?」

 

八戒の呼び掛けには目を開く。

 

「今、傷口を塞ぎますからね・・・!」

自慢の治癒能力で、八戒は傷口を塞ごうとした。しかし、の出血は半端じゃなかった。

このままでは、いくら傷口を塞ぎきれたとしても、出血多量で死んでしまう。その場で躊躇ってしまう八戒。

これをチャンスとばかりに、背後から妖怪に攻撃されそうになった瞬間・・・!

 

ザンッッ!!

 

音と共に八戒を攻撃しようとした妖怪が倒れる。八戒はハッとして振り返り、息をのむ・・・。

そこには。

 

「―はぁ、はぁ・・・。お前らだけにカッコいいとこ見せられてたまっかよ!」

 

壊れかけた調理場の入り口に、自分の武器でもある錫丈を横に突き刺して、部屋で寝込んでいてもおかしくないはずの沙 悟浄、本人が立っていた。

 

「―・・・悟浄っ!?何やってるんですか!!寝てなきゃ駄目じゃ・・・」

 

と八戒が言い切る前に悟浄は、つかつかと八戒のそばに倒れ込んでいるに近づく。

そして、抱き起こし悟浄は、思い切りを呼んだ。

「おいっ!!!」

その呼びかけに答えるかのようには目を開け少し微笑んで一言

 

「悟浄さん・・・―ごめんなさい」

 

と言って、また目を静かに閉じた。

 

「・・・―――っ!!なんっ、何で、こんなになるまで無茶しやがったんだ・・・!」

「―・・・悟浄」

と傍らで八戒がその様子を見つめている。悟浄は、血まみれになって意識を半分失っているを、思い切り強く抱き締めた。

 

・・・!!」

悟空と三蔵が戦っている一方で、八戒はここが街であることに気が付く。そして、先刻から戦っている三蔵に声をかけた。

 

「三蔵!あのっ、ここって街でしたよね?」

「--あぁ」

 

と三蔵は、戦いながら返事をする。

「で、たしかはA型でしたよね?!」

「あぁ。たしか、そうだったな・・・。--って、まさか。おいっ!八戒!」

 

三蔵は何かに気付いたらしく八戒を振り返る。八戒は微笑して

 

「はい、そのまさかですv丁度良いことに、三蔵はと一緒の血液型ですよね・・・だから、この街の医者に診て貰い、輸血をと一緒である三蔵に頼みたいのですが」

最後まで微笑みを崩さない八戒。

 

「―わかった」

 

と珍しく一つ返事をする三蔵。

 

「じゃあ、僕がを抱えていくので三蔵は付いてきて下さい」

と言い、八戒はを引き取りに、悟浄に近づいた。

「・・・八戒」

「はい」

「俺がっ・・・!こんなことで風邪なんてもんにかからなくて、元気だったら・・・こいつに迷惑かけなくても良かったんだ!!俺のせいでっ、こいつはっ!なぁ、八戒・・・を死なせたら許さねぇからな」

と言って八戒を見上げる悟浄。悟浄の目は真剣そのものだった。

 

「・・・―――わかってますよ。大丈夫です。・・・それより悟浄は、残りの団体さんのお相手をしてやって下さいねv」

 

八戒は、その悟浄の真剣な眼差しに答えるように強く言った。

「---あぁ。まかせろ!!」

 

八戒と三蔵がを連れて外へ出る際に、三蔵は振り返り、残された悟浄と悟空の二人に声をかける。

「あとは、まかせるっ!」

「「おうっ!!」」

 

悟空は、すっ。と隣りに来た悟浄がいつもよりも殺気立っていることに驚く。

「----おいっ、サルッ!こいつら、さっさっと片付けてんトコ行くぞっ!・・・―――てめぇら、ぜってぇにこのまま生かせて還さねぇっっ!!」

「合点!!」

○こんなそんなで、この妖怪騒動から約5日後。

三蔵の協力で、何とか輸血も無事終わり、意識が戻ってきたが、目を覚ましたのはそれから、数時間経ってのことだった。

ふっ。と目を開ける

―・・・そこには。
が目覚める3日前に、何とか風邪を治らせていた悟浄が、覗きこむようにしてこちらを見つめていた。

どうやら看病してくれてたらしい。はハッとして、起き上がろうとするが、体が思うように動かない。

それ以前に、愛しい人に間近で見つめられては、少し頬を赤くしてワザと視線を横へ反らした。

 

「―なぁ、・・・」

 

と悟浄が口を開く。次の言葉には耳を疑った。

 

「俺って・・・そんなに頼りねぇか?」

 

----それは、悟浄には似合わない言葉だったから・・・。

 

は何とか動く口で

 

「---そっ、そんなことないですっ!あたしがっ、あたしがいけないんですっ!!」

 

と、必死になって答えた。

 

「俺どころか、三蔵達まで呼ばずに無茶しやがって・・・」

「・・・ごめんなさい」

 

と言い切り、は横を向きポロポロと大粒の涙を流した。

自分にワザと見せないように、が泣いていることを悟った悟浄は、軽く舌打ちをし

「別にお前を怒ってるんじゃなくて、お前が危なくなってることに全然気付かなく、それで何にも出来なかった自分を責めてるだけなの」

 

そう言って悟浄はの顔を自分の方に向ける。まだ涙が溢れている顔と向き合い

 

「―もう何も言うなよ、わかったな?」

 

もう優しく言うと、悟浄は静かに目を閉じの唇へ自分の唇を重ね合わせた。

 

 

―お前を愛してる、もう必ず俺が守りぬいてみせるから―・・・。

 

*********************************END

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――おまけ

何とか、も回復し街を出発する三蔵一行。はふと思い、隣りにいる悟浄に話し掛けた。

「あのっ、悟浄さん?」
「―――ん?」
「あたし・・・何日間寝てたんですか?悟浄さん、風邪はいつ治ったんですか?」
「――あぁ、お前が寝てたのは5日間。それで俺が治ったのは、お前が寝ていた3日前v」
「悟浄さん・・・あたしの看病をしていてくれたそうで・・・」
「そっ♪お前が寝てた間、あの部屋にずーっと居たんだけど?」

そこまで聞いては赤面する。いきなり何を思ったのか悟浄はを引き寄せ、耳うちをした。
もちろん、三蔵達に聞こえないように、そっと・・・

「---お前の寝顔、結構可愛かったぜv今度は、もっと傍で見せろよなv」

それを聞いた後、しばらくは固まってたという・・・。


 

あとがき――――――――――。
 アホでごっ、ごめんなさいっ!!
でも、初の桃源郷バージョンにて悟浄さんドリームです;悟浄さんってクサイ台詞、似合いますよね〜vvv
楽しんでいただけたら、嬉しいです;
                           2003.01.21.ゆうき