マルボロ
〇学校帰り、はいつものようにもう一つの帰り道である人通りが少ない静かな路地を一人歩いていた。
本当のところ、この道は三蔵達、四人に危ないからと言われ禁止されているはずなのだが。
あえてこの道を通っているのには理由があった。
は人込みが苦手なのだ。だから、大通りや人が混み合っている場所などへ行くと人酔いをしてしまい、倒れそうになってしまう。
(こっちの静かな方が、やっぱり落ち着くなぁ〜)
人の話声もしない変な雑音も聞こえない、ただ風の音や鳥の声だけの静かな道・・・。
丁度、西の方へオレンジ色になった太陽が沈みかけているそんな空をふと見上げてある男性のことを思い出す。
(三蔵さん、今日はいつ帰って来るかな?)
三蔵の仕事は有名なプロダクションの専属モデルだ。
そのため毎日、びっしりスケジュールが組まれていて忙しく、と時間のずれがありここ最近まともに顔を合わせていなかったりする。
と50m前方に人影がうっすらと見え始めた。は少し、不安になった。
しかし、何処かで見た背格好に金糸の髪、片手にマルボロを握り、何もするでもなく塀に身を預けただボーッと煙草を加えている人物。
それが、男性と分かったのは5mぐらいと近くになってのことだった。
近付いていくにつれたはっきりと見えてくる・・・は目を合わせないようにワザと俯いてその場を通り過ぎようとした。
「おい。」
とふいに横から声がかかった。
その聞き慣れた声に、目をあげて呼んだ本人の姿を見て驚く。金糸の髪に紫暗の瞳、そして整った顔立ちの・・・そう、まぎれもなくの目の前にいるのは三蔵、本人だった。
「さっ、三蔵さん・・・」
とは息を呑み口を開いて三蔵の名を呼んだ。
「前・・・言ったこと忘れたのか?」
と三蔵はの前に来てこう言った。いつもの・・・でも、今のには少し低い声音に聞こえたのだった。
「いっ、いえ。忘れてません」
ビクビクとがそう答えれば。
「じゃあ、何で禁止されてる此処を通ってきた?」
「そっそれは・・・」
と言葉に詰まる。
「・・・―――ごめんなさい」
今のには謝るのがせーいっぱいで。
きっと、叩かれて怒られるだろうと覚悟を決めてかたく瞳を瞑る。
そして、次の三蔵の行動と言葉を待った。しかし、返ってきたのは、の頭を優しく包み込むような手のひら。
「えっ!?」
「―――お前、俺に怒ってほしいのか?」
「いっ、いいえ・・・そんなことは・・・」
とは首を横に振って必死に答える。怒って貰いたいような貰いたくないような複雑な心境の中で。
「どうでもいいがな。・・・もし、俺が変質者だったらどうするつもりだったんだ?」
辺りは暗い闇に呑み込まれようとしていた。
この三蔵の言葉には改めて、このもの静かな何もない路地が怖く感じ、俯き黙ってしまう。
もし、が男だったら三蔵達も心配しないだろう。しかし、は女で四人、特に三蔵にとっては大切な、失いたくない存在であるために何かあってからでは遅いのであり、後悔したくはないし、傷ついたの姿も見たくないのだ。
この命に代えても・・・と思わずにはいられない。
「―――今度、この道を通る時は必ず俺達、四人のうちの誰かに知らせろ・・・わかったな?」
と俯き黙ってしまっているに静かに言った。こんな顔をさせるつもりではなかった。
ただただ、のことが心配で、またあの道を通ってるんじゃないかと思って、これからまだ4件もある仕事をキャンセルしここで待っていのだ。
「でも、三蔵さん・・・お仕事忙しいんじゃないですか?」
とは恐る恐る口を開いて視線を三蔵と合わせた。三蔵は、今にも泣きそうなそんなの顔を見て一息つくとこう言った。
「―――お前の・・・お前のためなら、何時何処にいようがすぐ飛んで来てその体を抱きしめて必ず守ってやる。・・・だから安心しろ。いいな?」
「えっ///」
と三蔵の言葉には顔を真っ赤にし、その場に立ち尽くしてしまう。
「さっ、帰るぞ」
「・・・あっ。はい!」
我に返ったは、数歩先を歩いている三蔵に急いで付いて行き、少し先の大通りに繋がっている角の道に三蔵の愛車が止まっていた。そして、二人はその愛車に乗り、家路に着くのだった。
愛する女のためなら、必ず――――・・・。
E N D
――――後書き―――――
相変わらず、ヘボですいませんでした。
しかも、最初の予定していた、あらすじと違ったりして;何気にずれていってます。
サブタイトルは『待ち伏せ』です(苦笑)
最後にこれを読んで下さった、皆様本当にありがとうございました!
これからも頑張っていきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いします!!
2003.6.19.ゆうき