NO.36 強大



 それは、まだ攘夷戦争・後期のこと。
侍達が自国、そして地球を、その宇宙の強大な人種である天人から守ろうとして戦い続けていた頃の話。

今となっては、目的・考え方や行動までバラバラになってしまってはいるが・・・
その時代は、目的等は皆、一緒で日々、その1つのためだけに生きていたのだ。
無論・・・野は荒れ果て、緑は枯れ・・・。
段々と・・・戦争の影響が各地にも出始めてくる。
そのため、攻撃の浅い・・・又は、狙われにくい古寺を選び、そこを塒としている者達は数知れず。
ある地域では、急な石階段が何十段も並び、なかなか攻め入っては来れない・・・大きな寺があった。
しかも、不思議なことに、その周りだけ、木や緑が鬱蒼と生い茂り、その寺を守っているようにも見えるのだった。
そして、今日も陽が暮れ始めると、戦いに疲れた者達が、1人・・・また1人と戻って来る。
戦で傷付き、倒れそうにもなりながらも、仲間にやっとのことで支えられながら・・・この寺に足を踏み入れる者も数少なくはなかった。
大半は・・・怪我人となってしまっている・・・男共の中に。
1日中、動き回っている少女の姿があった。
顔や着物は埃や煤だらけになり、あまり睡眠を取ってはいないためか、目の下にクマが出来、綺麗に束ねられていた髪の毛も乱れ
・・・ながらも、文句1つ言わず、懸命に侍達の面倒を見ていたのだった。
正しく、その少女の存在は、荒野に咲いた・・・一輪の花と云ったところだろう。
強く、逞しく・・・そして可憐に咲き誇っているかのように、どんな時も輝いている・・・少女。
丁度、水を汲みに寺から表に出た少女は、何かの気配を感じ、途中、足を止める。
そして、くぐり門となっている場所、一点をジッと見つめる。
と、暫くしてから、いつもの聞き慣れた声が耳に入ってきた。
陽気な声と、落ち着いた声に、低く静かな声。
それが耳に届くと、少女は安心したかのように、胸を撫で下ろした。
そのうちに、その声の持ち主である者達が姿を現す。

「皆・・・おかえりなさいっ」

いつもの笑顔で、四人の若者達を迎える少女。

「あぁ。今日も・・・何とか・・・な」

はぁ〜と、深く息を付くと、やれやれと云った風に肩を大きく回す。
銀髪に、白い衣に身を包んだ少年。
それが、両陣営からも恐れられている、あの噂の・・・白夜叉なのだ。
ちなみに、本名は坂田銀時。

「・・・そうだな」

そう銀時に付け足すように、静かに答える。
長めの前髪の隙間からチラリと見える、その眼は・・・鋭く尖っているようにも感じられる。
その少年の名は高杉晋助。

「そんなことより、。あまり、無理はせぬ方が良い」

顔色を変えずに、落ち着いた声音で、少女・に言葉をかける。
漆黒の流れる長い髪を下の方で1つに縛り、まるで日本人形の如く、綺麗な顔立ちの少年・・・の名は、桂小太郎。

「そうじゃ、そうじゃ。ヅラの言う通り。に何かあったら・・・と思うと、わしゃ、戦もマトモに出来んでの〜」

うんうん・・・と桂の意見に頷きながら、そう答える。
長身に、陽気な話し方をし、土佐弁を使う少年。
彼の名は、坂本辰馬。

「・・・ヅラじゃない桂だ」

坂本が言い終わるのを待ち、こう一言、間違いを指摘をする桂。
しかも、これも、もう・・・お決まりのパターン化となっているため、誰も下手に口を挿まない。

「あはは。大丈夫だってば。もー。心配性なんだから」

その、いつものやり取りを見て、軽く笑う
だが、心配しているのは、桂や坂本だけではなく・・・此処に居る者達も皆、同じ。
勿論、銀時や高杉も例外ではない。

「もう少ししたら、ご飯にするから、そこの水汲み場で、顔と手をよーく洗ってね」

すっと、30メートル先の井戸を指差すと、は銀時達四人に、再び、笑顔を向けた。
その近くには、綺麗な手拭いが人数分用意されている。
無論・・・今日だけではなく。
自分達が帰って来る時間を知っているかのように、毎日・・・ちゃんと用意されているのだ。
もう・・・本当に何と言えばいいのか。
・・・凄いとしか思えない。

「・・・何か、俺・・・。がお母さんに見えて来た」

銀時は、ボソッと呟くように小さな声を出す。

「「同感だ」」

それに共感したように、隣りの桂と高杉も頷く。

「・・・?銀ちゃん・晋助・小太郎くん、何か言った?」

何か聞こえてきたように思えたのか、は3人にそう尋ねた。
そうなのだ。
聞こえるか聞こえないかと云う微妙な小ささの音量だったため、には銀時達が何と言ったのか聞き取れなかったのだ。

「「「い・・・いいや。何でもねぇ(ない)」」」

銀時・桂・高杉の三人は、そのの言葉に、少々、焦りながらも否定した。

「そう。・・・なら良いけどさ。」

首を少し傾げ、不思議な表情をする。
“じゃ・・・私、戻って夕飯作るから”そう言うと、は踵を返し、寺に向かって歩き出した・・・その時。

「・・・そんなことより。わしゃ、が嫁になってくれるのが一番エエんじゃがの」

突然、坂本の口から爆弾発言が飛び出してきた。
いきなりのことだっため、は思わず抱きかかえている桶から水を溢しそうになってしまう。

「えっと・・・と、とにかく・・・。早く、洗って来てね。日が沈んじゃうからさ」

は、コホンっと軽く咳払いをし、こう言い残すと小走りに駆けて行った。
まぁ、坂本のことだろうから、その場を盛り上げようとし、ワザと言ったようなのだが。
下手したら、プロポーズと変わらない・・・。
そんな言動に、容赦なく三人の怒りが降りかかる。

「辰馬ァ・・・てめっ」
「坂本・・・」
「おい・・・」

それぞれ、静かに口を開く。

「・・・殴られたいのか?」

拳を上げ、ニヤッと薄気味悪い笑みを作る銀時。

「「切られたいようだな」」

同時に、そう低く発すると、桂に高杉は、腰に差してある真剣を抜こうとする。
しかし・・・

「アッハッハッハッ。冗談じゃ、冗談。言葉のアヤ・・・ちゅーやつじゃ」

そんな三人を豪快に笑い飛ばす坂本。

「「「・・・ ・・・」」」

だが、直ぐに怒りは静まらないのが男と云うもの。
どうやら・・・への想いも本物のようで。
いくら、仲間とは云えども・・・二度目は(許さ)ない・・・と堅くそれぞれの己の心に誓うのだった。


・・・もしも、強大な敵が目の前に立ちはだかろうとも・・・。


愛する人を守るために、男達はその剣を抜くだろう。


そう、迷いのないその眼で。




                                             E N D





メッセージ:初の銀魂夢です;銀さん達、4人の逆ハー;珍しく、ギャグめです。
攘夷戦争中・・・ワン・シーンな感じで書いてみました。
感想等ありましたら、BBSかメール・フォームまで。
最後まで読んで下さって、ありがとうございました。

                                  2006.9.15.ゆうき